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2004年6月16日水曜日

トルネード竜巻 : 『アラートボックス』 (スピードスター/VICL-61399)


 難解な解釈かも知れないが、『One Size Fits All』(マザーズ・オブ・インヴェンショ ン)と『古今集』(薬師丸ひろ子)との混血美の様なのが、本作を聴いたファースト・インプレッションである。一筋縄でいかないサウンド・アイディアと巧みな演奏能力が高次元で結晶し、透明感溢れる独特な美を感じさせるヴォーカルがそれに漂うのだ。

 トルネード竜巻は、昨年8月にも紹介した傑作コンピレーション『The Many Moods of Smiley Smile』でも、一際その特異な個性を輝かせていた逸材的バンドで、 インディーズで2枚のミニ・アルバムのリリースを経て、今回のメジャー・デビューに 至った。
 とにかくユニークなアイディアが豊富に散りばめられていて、全く飽きさせないだ。 ロック的なチューニングでアール・ヤング(フィリー・ソウルのシンボル的ドラマー)し てしまったドラミング、サイバーパンクな80年代風ワウ・ギターとクラヴィネットが活躍するニューウェイヴ・ファンクの「ユウグレデスカ」。
 ブライアン・イーノ風のミニマルなエレピ・リフから発展していく不可思議なポップスの「Snowflake」。変拍子のブリッジを持つハード・ロックにテクノポップ的なシーケンスが絡む「Road To Montreux」。
 最もザッパ的で無重力ビートが迷宮へと誘う「さあゆこう~サンクト ペテルブルグの赤い風~」。ブルース進行の実験的なロック小曲の「Mega Bite」でも、ヤング-ホルト・アンリミテッドの「Wack Wack」のフレーズが出て、その恐るべきミクスチュアー感覚には舌を巻いてしまう。

 デビュー作で既にこの次元にあるという事を文章で説明するのは非常に難しいが、音楽マニアを自認して新たなサウンドを追い求めている人は聴くべき作品であろう。
(テキスト:ウチタカヒデ

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