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2004年5月11日火曜日

『山下達郎作品集 Vol.1/THE WORKS OF TATSURO YAMASHITA Vol.1』 (WILD HONEY/WCD-8004)


 日本の音楽界広しといえど、山下達郎ほど過去の音楽資産を元に驚異的拘りをもって創作活動を続けている現役アーティストは他にいないだろう。 誰の耳にもポップス・マエストロ(巨匠)たる存在であるのに、自らをアルチザン(職人)と称する姿勢にもただ敬服するばかりだ。
 本作はそんな彼が自らの活動とは別に、他のアーティストに提供した曲を集めた初の作品集なのである。 近年ではジャニーズ系アイドル(少年隊、Kinki Kids)へ提供した曲で知られるが、今回は未CDの貴重な楽曲(79年~84年)を中心に構成されている。 

 本作の中でも出色なのが、82年にフランク永井に提供したシングル曲「WOMAN」だろう。 シカゴが誇るヴォーカル・グループのデルズが、80年にユージン・レコード(シャイライツ)、トーマス・C・ワシントン(別名TOM TOM 84)らの手腕で完成させた『I Touched a Dream』を彷彿させるスウィートソウル風サウンドと、フランク永井のバリトン・ヴォーカルが見事に調和した傑作なのだ。 
 同じく収録されたカップリング曲「愛のセレナーデ」は、74年にキングトーンズに書かれた未発表曲(作詞:伊藤銀次)ながら、「WOMAN」同様のサウンド・アプローチで、ストリングスのフレーズを強調した色褪せないバラードに仕上がっている。 

 個人的にはこの2曲だけでも十分買いなのであるが、スタックス/HI風サウンドに渋く鯔背なヴォーカルが乗る円道一成の2曲や、池田典代へ書き下ろした「DREAM IN THE STREET」も悪くない。 前者では山下のギターは殆どスティーヴ・クロッパーしていて微笑ましい。青山純のドラム・プレイはこのスタイルのグルーヴではやや違和感を感じるも、的確な手さばきを聴かせている。 後者のサウンドは『MOONGLOW』のそれを彷彿させ、洗練されたシティ・ポップは今だからこそ再評価されるべき名曲であろう。
 なお本作は山下達郎オフィシャルHPのファンクラブ通信販売サイトだけでの販売であるが、一般でも購入出来るので興味を持った方は是非アクセスして欲しい。

山下達郎オフィシャルHPファンクラブ通販CD

(ウチタカヒデ)

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