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2003年11月21日金曜日

☆Beatles:『Let It Be…Naked』(EMI/0724359571324)

ビートルズのこのアルバム、もうあらゆるメディアで紹介し尽くされているので、別にここで紹介するまでもないと思ったが、何と言っても私の永遠のNo.1、ビートルズなので、やはり書かずにはいられない。
ところでみなさん、もちろんUK盤など CCCD でないものを買いましたね?日本盤やEU盤はダメ、1000円以上高くて CCCD なんて悪夢でしかない。
聴いた感想は、もう感動の一語、くっきりとヴォーカルが浮き出たミックスでこのアルバムを聴くともう数え切れないほど聴いたアルバムなのに、鳥肌が立ってしまった。
ビートルズは本当に歌が上手い。当たり前のことだが、このアルバムを聴くと、いかにビートルズが他のバンドより桁が上なのか、改めて分かるはず。
さらにそれぞれの楽器がここまでクリアーに聞こえるなんて、今回のミキシングの凄さを改めて感じた。
これでは別の曲だよ。
ビリー・プレストンが入っているとは言え、ノー・オーヴァーダビングの4ピースバンドのカッコ良さ、ビートルズが最高のロック・グループだということを改めて痛感したしだい。
ただ、私がレコード・コレクターズ誌で書いたように、今になってみんなでフィル・スペクターを非難するのはおかしい。
当時、ジョン、ジョージ、リンゴの3人はスペクターのミックスをベタほめしていたのだ。
どうしようもないクズをで蘇らせてくれたと言ったのはジョン。
そしてこのアルバムは大ヒットしたし、シングルも2枚1位になった。商業的成功を収め、メンバーの3/4が高く評価したのは、厳然たる事実。
確かにこのNakedのミックスを聴けば、こちらの方がずっと魅力的だし、私も大好きだが、30年以上前のミックスと比べることはフェアじゃない。
スペクターはビートルズの解散が織り込み済みだったため、「去り行くビートルズのアルバムは感傷的なものでなくてはならない」と、意図を持ってオーバーダビングをした。
スペクターはその当時の与えられた仕事を、偉大なビートルズのために、せいいっぱいやったのだ。
あまりにスペクターはヒール役なので、一石を投じたくなったのは私だけではあるまい。
やはり外様はつらい。
それなら、ジョージ・マーティンのプロデュースのものも最新のミックスを施してみれば、と思うが、そんなことは永遠にしないだろう。
なお、 セッション時の生々しいトークを切り取って来たボーナス・ディスクの『Fly On The Wall』はそのやりとりだけを聴くだけで夢中なってしまうはず。ただつなぎのセッションの模様があまりにも短く編集されているのは、収録時間の関係で仕方ないとは言え、ちょっと残念だった。(佐野)

レット・イット・ビー・ネイキッド

2003年11月14日金曜日

☆朱里エイコ:『パーティー』(ウルトラヴァイヴ/CDSOL1081)



筆者が今、最もその紹介に力を入れているのが冨田勲だが、冨田の作品の中でも最も入手しにくいアルバムのひとつがめでたくリイシューされた。内容についてはVANDA29号で詳しく記述したが、作曲:冨田勲、作詞:八坂裕子のコンビで、アルバム1枚がひとつのストーリーとして組み立てられた73年リリースの本作は、同じコンビで同じコンセプトで71年にリリースされた西郷輝彦の『坂道の教会』と表裏一体の、対の作品である。
後者ではストーリーは西郷のモノローグで語られていたが、本作では、このアルバムのプロデューサーの栗山章が連れてきたフォークシンガーの男性が、曲間でピアノをバックに短く歌って進行を告げていく。そう、このアルバムはパーティーの一夜の出来事が描かれているので、時間の進行はこの無名の男性ヴォーカルが告げていく。曲は憂いを帯びたレトロな雰囲気を持つものが多く、朱里エイコの卓抜したヴォーカルと、冨田の広がりのあるオーケストレーションが見事に一体となり、魅力的な作品になった。
このリイシューを担当した濱田高志氏は、冨田勲自身にもインタビューしており、ここにも注目だ。まずは黙って購入すべき。大好きな『坂道の教会』のリイシューも切望したい。(佐野)
「朱里エイコ パーティー」の画像検索結果




☆Who:『The Vegas Job』(Video Film Express/DVDL001D) DVD

イギリスでリリースされたこのDVD(PAL)は、ジョン・エントウィッスルが存命の1999年の、ラスヴェガスで行われたピート・タウンゼンド、ロジャー・ダルトリーの3人にザック・スターキーをドラムに迎えた時のライブの模様である。
ロジャーの声の張りはやや衰えたものの、ピートのギターとジョンのベースの迫力は凄まじく、特に“My Wife"でのジョンの神業のようなベース・ランニングを見ると、その損失の大きさを改めて痛感させられるだろう。
まさにギターなのだ。ギターのようにベースがメロディを奏でるから、ピートは自由に、得意のコード・カッティングで切り込んでいくことができる。
そのバランスがフーでしかなし得ないサウンドの魅力だった。
大音量でエレキギターを弾くピートだが、かつて難聴で悩まされ、ヘッドホーンを付けてアコースティック・ギターを弾いてきた過去から、劇的に回復しているようだ。
このDVDを見て、ピートもこれだけ健在なのに、ジョンがいなくなってしまって、フーの勇姿は結局日本で見ることは出来なかったのかと、残念な思いにも包まれた。
曲はおなじみのナンバーばかり14曲、自家薬籠中の出来だ。フーのライブはいつ見てもカッコいい。(佐野)

The Who : The Vegas Job - Live In Vegas (1999)

☆Who:『Tommy (Deluxe Edition) 』(Geffin/B0001386-36)



フーの『デラックス・エディション』シリーズもいよいよ4作目で『Tommy』が登場した。
『Who's Next』と並ぶフーの最高傑作であり、ロック史上でも屈指の名盤である本作について、聴いたことがないなどというリスナーはいないだろうから、『Tommy』の部分は紹介しない。
紹介するのは、ディスク2のボーナス・トラックだ。
1曲目の "I Was" は曲とは言えないSEのようなもの。
"Christmas" 、 "Tommy Can You Hear Me" 、 "Welcome" 、 "Tommy's Holiday Camp" はまだ歌が入っていないインスト。
"Cousin Kevin Model Child" は、完全な未発表曲で、典型的なブルース進行の曲。
リフに載せたヘヴィな " "Trying To Get Through" も未発表曲で、どちらもピート・タウンゼンドにしては単純な曲だったので、没になったのだろう。
笑い声から始まる "Sally Simpson" はピアノがまだ入っていないデモで、 "Miss Simpson" はピアノが入ったより進んだテイク。
"We're Not Gonna Take It" はデモだが、もう完成に近いテイクで楽しめる。ただし "See Me Feel Me" の部分はない。
問題はスタジオ・ヴァージョンの "Young Man Blues" だ。『Odds & Sods』のボーナス・トラックとは違うヴァージョンで、当時のコンピ LP のみ収録の『The House That Track Built』のオリジナル・ヴァージョンがやっと入ったと思われたが、やたら音質がクリアーなため、 LP のようなヘヴィさがなく、同じテイクには誰も思わないだろう。
後半はステレオのデモで、 "I's A Boy" 、 "Amazing Journey" 、 "Christmas" 、 "Do You Think It's Alright" 、 "Pinball Wizard" の5曲が登場する。基本のアレンジは既に出来上がっているが、まだバッキングはデモ。そのため、ロジャーのヴォーカルも軽い。ただしバッキングの完成度が高いので、まるで別テイクのように聴けた。
 なお、本作はなぜか、73年までのイギリス盤 LP に収録されていた、ロジャーのヴォーカルが1オクターヴ低い "Eyesight To The Blind" が、 ディスク2に収録されなかった。(佐野)

Tommy (Deluxe Edition)



2003年11月11日火曜日

Ron Isley/Burt Bacharach:『Here I Am:Ron Isley Sings Burt Bacharach』 (Dreamworks/2003-11-11)


 20世紀のポピュラー・ミュージックを語る上で決して避けられない偉大なメロディー・メーカーであるバート・バカラックと、60年代初頭(ビートルズ「Twist and Shout」のオリジナルも彼ら)から80年代のソウル・シーンにおいて、一際ユニークなスタンスで活躍したアイズリー・ブラザーズの顔であるロナルド・アイズリーがコラボレートした本作を紹介しよう。 

 近年バカラックがフィールドの異なる才人とコラボレートした作品として、98年のエルヴィス・コステロとの『Painted from Memory』が挙げられるが、共同の新作でお互いががっぷり四つに組んだ意欲作といえるものだった。(バカラック単独で作曲された曲もあったらしい)
 一方本作は表向きはコンポーザー兼アレンジャーとシンガーのコラボレートの体裁をしているものの、嘗てのディオンヌ・ワーウィックとの"水は方円の器に随う"といった関係を成している訳ではない。何といってもロナルドの真骨頂とされる歌唱法が本作の純然たる魅力であり、既に完成されている彼のシンガーとしての可能性をより引き出し、バカラック・クラシックに新たな息吹を当てようとしているのだ。つまりその構造関係は異なれ、『Painted from Memory』で結晶させた様な有機的コラボレートを目指しているのである。

 レコーディングは嘗てフランク・シナトラやナット・キング・コールの名曲を生んだ、ハリウッドのキャピトル・スタジオで行われ、殆どの曲はリズム・セクションとオーケストラを同時録音したらしい。

   

 そんな本作の中でも特出すべき曲として、B.J. トーマスで知られる「Raindrops Keep Fallin' on My Head」を挙げたい。 原曲の楽観的な三連リズムからは予想不可能な、ゴスペル・フィールに満ち溢れたロナルド節が崇高な余韻を残すばかりだ。
 アイズリー全盛期にはキャロル・キングからジェイムス・テイラー、シールズ&クロフツ等の曲をディープ・メロウな解釈でカバーしていたが、30年を経ても変わらぬ姿勢にはただただ脱帽する。

(テキスト:ウチタカヒデ







2003年11月8日土曜日

☆Brian Wilson:『Brian Wilson Presents Pet Sounds Live In London』(Sanctuary/06076-88366-9) DVD



2002年1月27-30 と6月9-10日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた『Pet Sounds Tour』の様子を収録した DVD である。ロック史上最高のアルバムである『ペット・サウンズ』の再現という、このツアーのコンセプトを体言するため、 DVD にはアルバム全曲以外には、アンコールの "Good Vibrations" 1曲しか収められていない。つまり66年にリリースした曲しか入っていない訳で、通して見ると、実に的確な編集と言える。 コンサートの模様は、日本で会場に足を運ばれた方も多いと思うので、もう脳裏に焼きついていることだろう。あの『ペット・サウンズ』が、本当に再現できているのだ。 まず、バッキング・メンバーの完璧な演奏とハーモニーに驚かされるだろう。 ビーチ・ボーイズのツアー・メンバーではこうはいかない。ワンダーミンツやジェフリー・フォスケットらの力の賜物だ。そして肝心なブライアン。最初のツアーでは不安定だったブライアンの音程が、この2回目のツアーでは見事に復活し、ブライアンは全部のリード・パートを歌い通す。  何しろ、マイクやカールのパートまですべてのリード・パートを歌うのだ。 特に難しい "Don't Talk"を歌い通した時は、会場はスタンディング・オベーションの嵐。 会場のファンは、何を評価すればいいのか分かっている本当のファンばかりだ。高度な "I Just Wasn't Made For These Times"が再現された時は、そのまま体をサウンドの中に投げ出してしまったような幸せな感覚に包まれた。その当時は売り上げが伸びず、その後も風変わりなアルバムとして長く置かれたままだった『ペット・サウンズ』。Mojo誌でロック史上最高のアルバムに選ばれたように、90年代に入ってから『ペット・サウンズ』は伝説になった。 30年以上経って、ようやく時代が『ペット・サウンズ』に追いついたのである。(佐野)