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2003年9月5日金曜日

saigenji: 『la puerta』(HRCD-020) bonjour対談レビュー



  Saigenji(サイゲンジ)のセカンド・アルバム『la puerta』が早くも届いた。
 ここ最近は様々なアーティストとのセッションやコラボレーションでも名を上げている、正に若きミュージシャンズ・ミュージシャンの鏡。
今回は筆者と親しい、若手ミュージシャン集団、bonjour(ボンジュール)のメンバーに集まってもらい、彼や本作の魅力について語ってもらった。

ウチタカヒデ(以下 U):先ず本作を聴いてのファースト・インプレッションなんですが、個人的には前作よりソングライティングを重視した曲がより選られていて、一般層にも聴き易くなったと思ってますが、皆さんはどう思われますか?


ナカモト(リーダー兼サックス、以下N):前作よりもさらに歌が前面に出ている。つまり、前作よりもさらにボーカリストとしてのサイゲンジの魅力がこれでもかと。前作が「動」のアルバムだとすれば、今作は「静」のアルバムかな。

すずちゃん(トロンボーン、以下S):一枚目のアルバムは素晴らしいけれど、ライブには負けてたと思う。一枚目聴いて、「違う、こんなんちゃう!」むしょーにライブに行きたくなったりしてた。そしてライブを知らない人がこのCDだけで判断したらイヤだなぁとさえ思ってた。
しかし、2枚目は違ったのです!勿論ライブに行きたくなるのはあいかわらずだけど、「はふ~」とサイゲンジ・ラブ吐息を出しながら聴けるのですよ。満足なのですよ。なんでしょうね。前作は横顔でギターを弾き歌うサイゲンジさんで、今作はCDプレイヤーに向かう人を正面から見て歌うサイゲンジさん、という感じ?サイゲンジさんはいつでも観客に向かって歌っているとは思うけど、このCDはより堂々とした感じが押しだされてる気がする。

ミサワ(キーボード兼ヴォーカル、以下M):先ず彼の「自然体」の魅力については、彼のライヴを知るものには今さら説明するまでもないでしょう。実にリラックスした笑顔は、確かな演奏力と等しく印象的であり聴き手の心に訴えかけてくる。そんなライヴの評判は一方でスタジオ・レコーディングへの不安を煽る。曰く、彼の魅力はライヴにあるのだ、と。だけど、このアルバムにはそういった不安は必要ないかな。
U:さすがに皆さん現役ミュージシャンなので、なかなか鋭い洞察力で聴き込んでいますよね。では気になった曲について感想等をよろしくお願いします。


「海のそばに」~

M:歌とギターだけでゆっくりと聞かせる、「海のそばに」が描く絵画的な歌詞は日本語のサウダージ感を見事に描いていますね。

N:ミサワ君に先に言われちゃったけど、この曲が一番好き。景色が目に浮かぶんだよ。特に、丘を越えると海が見える一瞬が鮮やか。

S:2~3曲目の2曲続けてラブソング聴いた後、なんと失恋の曲が!!別れて二人前に進んで、成長してあの丘をこえた海であえるといいね、なんてまるで当たり障りないよくある歌詞のように思えるけれど。やはりsaigenjiさんだな、と思ったのはここ。「君の腕に抱かれる様に木の葉が舞い降りるその時、あふれ出す歌口ずさむよ」ほんと、彼は音楽人であり詩人なんだなと。


 「樹海」~

S:これは、、、saigenji世界美の集大成では?コードよく分からないんだけど、進行がものすごく美しい。君という青い(この青っちゅうのがまた、神聖さをイメージさせて嫉妬の嵐)光に出会って、扉(la puerta)が開く。樹海でさまよっていた僕に新しい世界をもたらしてくれたのは、君。君に出会った後、喜びと躍動感あふれる4ビートになる。この持っていきかたがまたほんとすばらしいね。あたしゃ涙でちゃいましたよ。

M:この曲は、このアルバムに流れる穏やかな時間の流れが彼の今の心境そのものなのでしょう。このビターなバラッドは地味だけどアルバム中の一つのピークと云えるね。中間部の展開とスキャットも見事。


 「la puerta」~

N:ああ、これも好き。サビのアルトフルートとのからみが美しい。Aフルートの音は面白い。続いてのソプラノ・サックスも好き。確か、このスティーブ・サックスさんはファーストにも参加してますよね?この人の吹きすぎない感じ、好きだな。

S:お祭りの夜の翌朝。ナカモトさんの好きな鳥の声で始まる、この曲は「生きてることを世界中に感謝したくなる」ような清々しいピュアな美しさであふれてます!だって目を閉じて聴いてみて!鳥に花、朝露したたる緑、うっすらと顔を出してきた日の光、ちょっと涼しい風が吹く草原の丘の上にいる気分にならない?


 「(They long to be) Close To You」~

N:前作で収録されていた"It's too late"を聞いたときの衝撃!数あるカバーの中でもあれほどうまく調理されたものはそうはないのでは。しかも、ライブ・ヴァージョンでしょ、あれ!そして、今回もまた!これがなんと、王道中の王道カーペンターズの"Close to you"個人的にも三本の指にはいる大名曲をこれまたすごい独自の調理法でね。実は、このCDで聞く以前にライブで聞いたんだけどね6/8(3?)拍子でやってるでしょ?ウチさん、ほかにこういうアプローチのカバーはあるんですかね?

U:前にウエス・モンゴメリーの「フルハウス」をもの凄い変拍子でやってたり、「It's too late」もブラジリアン・アフロと4ビートのハイブリッドな演奏でやっていたステージもあったかな。とにかくライヴでは日替わりの様に、目まぐるしく変わるから非常に面白いですね。

S:これはナカモトさんの意見がいいと思うので特に触れません。しかし、ブレイクのときのピックアップが死ぬほどうまいなあ。。


 「気付いたら僕らは」~

N:締めくくりの曲は、これ、すごいポジティブな曲だね。そのままサードアルバムにつながっていきそうな、予告編のような印象。

S:ラストにふさわしいsaigenji流「生きていこうぜ☆人生応援」ソング!これ、全国数千万の鬱人間たちに聴かせたい。絶対、回復すること間違いなしだよ。「僕らは」って複数形であらゆる人に歌いかけることって、なかなかできないよな。よっぽどのバカか、カリスマのある人にしかできないことだよ。saigenjiさんはもちろん後者です。ついてくぜ、兄貴!と思いますよ、ほんと。

U:最後にこのアルバムについての総評を、代表してミサワ君にお願いします。

M:今回のアルバムではスロウテンポな曲が目立って素晴らしかったです。また音楽的には異種だけどピアソラのごとき現代的な和声感覚は、ボッサやジャズの範疇を超えて彼の音楽を見事に支えているし。でもこれもまた彼の魅力の一部に過ぎないでしょう。まだまだこれからの展開が楽しみです。唯一彼に不足している要素があるとすれば、それはある種のオルタナティブ感覚ではないかな。 それはピアソラであれ南米の現代音楽家であれ、どこかにそれを持ち合わせているからこそ、長く愛されているのだと私は思う。オルタナティブな感性でもっともっと自由に泳ぎまわって欲しいと思います。

(企画&編集 / ウチタカヒデ)


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