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2000年1月27日木曜日

☆Who:『BBC Sessions』(ポリドール/POCP7413)

 遂に待ち望んだフーのBBCでのスタジオ・ライブ集がリリースされた。今まで散々な色々なブートを買ったが、これでおさらば出来る。何しろ音質が信じられないほどクリアー。さてCDは「My Generation」の歌詞を変えた「Radio 1 Jingle」で始まるという心憎い演出でスタートする。「Anyway Anyhow Anywhere」以降「Good Lovin'」「Just You And Me,Daeling」「Dancing In The Street」といったブートではお馴染みながらオフィシャルでは初登場の曲を交えて、26曲が披露される。それにしてもフーはキース・ムーンの比類なきドラミングを中心に、ジョン・エントウィッスルの縦横無尽のベース、ストロークでは最高のロック・ギタリストであるピート・タウンゼンドのギターと、60年代の他のバンドと比較にならないテクニックを持つ最高のライブ・バンドだということを改めて痛感した。そしてコーラスが旨い。これだけの演奏をしながらきちんとハモるのはフーならでは、ライブでのワイルドさと、レコードでのポップさが同居しているのがフーなのだ。20曲目の70年に録音した「Substitute」から一気に重低音が出たフーの本領発揮のライブの音に変わる。その前の67年の音とはまったく違う。この間に録音技術と機材が飛躍的に進歩したのは、他のライブ・アルバムを聴いても歴然だろう。最後は「Boris The Spider」を使った「Radio 1 Jingle」で終わり、これも小癪で嬉しい。(佐野)
The BBC Sessions

2000年1月26日水曜日

☆Marmalade:『I See The Rain』(Sequel/463)☆Marmalade:『Rainbow the Decca Years』(Sequel/335)

今までマーマレードはトニー・マコウレイが担当した77年の『Falling Apart At The Seams』ばかり持ち上げていたが、今回のSequelの66~69年のCBS時代を集めた前者、69~72年のDecca時代を集めた後者の作品集で全貌を初めて聴くことが出来、その素晴らしさに、これまでの見方が間違っていたと気づかされてしまった。まったく勉強不足で申し訳ない。両者共、未発表曲まで含むコンプリート作品集で、さすがSequel。言い訳になるが、今まで出ていたマーマレードのこの時代のCDはベスト盤で、ヒットしなかったシングルやアルバム曲が入っていなかったのだが、実はそこにおいしい曲が詰まっていたのだ。個人的に好きなのは、やはり前者の『I See The Rain』。まず66年のデビュー・シングル「It's All Leading Up To Saturday Night Wait A Minutes Baby」、67年のセカンド「Can't Stop Now/There Ain't No Use In Hanging On」から既に魅力的だ。重量感のあるサウンドに、哀調を帯びたメロディ、そしてファルセットの見事なコーラスがからむ。この時代のマーマレードの中心はシンガー兼コンポーザーのJunior Campbellで、この2枚ではオリジナルはB面に回ったが、3枚目の「I See The Rain」からA面も担当する。この曲はエレクトリック・ギターが響くロック色の強いナンバーだが、そこにハーモニーがよくマッチした。B面の「Laughing Man」も同様で、ギター・ポップとしても秀逸だ。4枚目の「Man In A Shop/Cry」はどちらもストリングスをフィーチャーし、ポップ色をやや強くしている。ビートルズ風のギターと、ファルセットのコーラスが組合わさりこれも出来はとてもいい。しかしこれらの4枚のシングルが全てヒットしなかったため、以降外部ライターの曲を取り入れ大ヒットを連発していく。まずラブ・アフェアーを十分に意識したキャッチーなメロディと音圧のあるストリングスによる最高のポップ・チューン「Lovin' Things」で全英6位、続く同じ路線の「Wait For Me Mary-Anne」が30位にランキング、個人的には好きになれない「Ob-La-Di Ob-La-Da」の安っぽいカバーで1位、トニー・マコウレイの「Baby Make It Soon」を見事なコーラスで彩り9位と快進撃を続けた。2曲目のヒットの後急遽リリースしたアルバム『There's A Lot Of It About』は、カバーが多い散漫な出来だったが、その中でCampbellのオリジナルの「Mr. Lion」は光っていた。69年にビージーズの3人のペンによるジェントルな「Butterfly」をリリースするがヒットせず、Deccaへと移籍する。CBSでは「Otherwise It's Been A Perfect Day」「Clean Up Your Heart」という2曲の未発表曲が残されたが、文句の付けようのない素晴らしいコーラス・ワークでおクラ入りが惜しまれる出来だった。さてここからは後者の『Rainbow』へ移る。CD2枚組で1枚目はCampbellが在籍した時期のもの、2枚目はCampbellが脱退し、Huge Nicolsonが加入し、彼を中心に作られたものだ。サウンドはアコースティック・ギターを多く使ったクリアーなサウンドで、リード・ヴォーカルの歌い方も含めまさに70年代の音になっている。曲はもちろん大半がオリジナル。その中でキャッチーなフックを持つ「Reflection Of My Life」が3位、フォーク・タッチの「Rainbow」も3位、バラードの「My Little One」が15位とヒットは続いていった。71年の途中でNicholsonに代わり、今後が心配されたが、カントリーフレイバーを増した「Cousin Norman」を6位にランキングさせている。この時代もCampbell時代の延長とも言えるが、ヘヴィなギターをフィーチャーした曲もあり、変化を読み取ることができる。そして72年のシングルを最後にNicholsonが離れ、マーマレードの新譜は冒頭に書いたマコウレイに出会うまで4年間休止することになる。(佐野)
I See the RainRainbow: Decca Years by Marmalade (2000-05-16) 【並行輸入品】




2000年1月20日木曜日

☆Carol King:『Brill Building Legend』(Brill Tone/222)




 昨年、バリー・マンの3枚組ボックス『Inside The Brill Buildings』がリリースされ、多くのポップ・ファンを喜ばせてくれたBrill Toneより、今度はキャロル・キングの2枚組CD、副題ではComplete Recordings 1958-1964がリリースされた。全57曲、内31曲が未発表と、相変わらず充実した、ファンにはたまらない内容だ。まずキャロル・キングが1958年から66年までに発表した8枚のシングル16曲、63年のDimensionのLPに収録された3曲でオフィシャル音源はコンプリート。さらに17曲の未発表デモが収録された。その中には「He Takes Good Care Of Your Baby」の2ヴァージョンのデモや、ボビー・ヴィー、アネット、ジニー・アーネル、ドリフターズなどに歌われた曲が含まれていた。驚かされたたのは「Even If I Wanted To」、61年に録音されたこの曲の作者はバリー・マン=シンシア・ウェイル、夢の組み合わせだ。そしてソロ以外では、キャロル・キングが参加したHoney Beesの4曲、Palisadesの1曲、Tina Robinの2曲が既発表曲、未発表はゲリー・ゴフィンが歌う3曲とTina Robinの3曲、Bonnie Kneeの3曲、そしてリード・シンガーが不明の3曲だった。大半が60年代初頭の曲なので、曲想はオールディーズだが、キャロルの曲には心引かれるメロディ・ラインがある。「It Might As Well Rain Until Tomorrow」なんて今になってもまったく錆びついていない。キャロル・キングの独特のヴォーカルも、ユーミンみたいに味があり、自分の曲にはピタリと合うのだ。最後にボーナス・トラックなのか、前のボックスに含まれなかったバリー・マンの未発表デモ「You're The Only One」「Hey Little Play Girl」「Private Party」の3曲が含まれていた。この内自作の「You're The Only One」は巧みな転調を効かせる傑作、バリー・マン・ファンも買い漏らせないぞ。それにしてもキャロル・キングの中にバリー・マンのデモなんて、これはやはりブートだね。しかしこの内容と、詳細なブックレット、ほとんどのレコード会社ではここまでのものは作れないだろう。(佐野)

2000年1月18日火曜日

☆Bugaloos:『The Bugaloos』(Vivid Sound/VSCD581)

ビデオ・ソフトがアメリカで発売されて喜んでいたら、日本のみでついに唯一のオリジナル・アルバムがリイシューされたバガルーズ。もちろん世界初の快挙だ。このバガルーズは70年9月から71年1月にかけてNBCネットワークで17回に渡って放映された子供向けテレビ番組で、アルバムは70年にキャピトルからリリースされた。全11曲中7曲を作曲したのは、プロデューサーのHal Yoergler。ところがこの人物のプロフィールがよくわからない。しかし力強いコーラスパートが魅力的な「If You Become A Bugaloo」や、平坦な歌い出しが高揚感のあるサビに変わって一気に心を奪われてしまうジョイ(キャロライン・エリス)のヴォーカルによる「The Senses Of Our World」という傑作を聴くと、優れたセンスを持つ実力者ということがよくわかる。爽やかな「Believe」や「It's New To You」もいい。残りの4曲はコミカルなテーマ・ソング「The Bugaloos」を作ったチャールズ・フォックスと、シングル・カットされたキャッチーな「For A Friend」を書いたアル・カーシャで2曲づつ分け合った。それぞれ「バーバレラ」、「Will You Be Staying After Sunday」など、数々の名曲を残した素晴らしいコンポーザーである。さらにアレンジャーはゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズを担当していたアル・キャップスと、マーク・リンゼイなどを担当していたアーティー・バトラーである。このスタッフなのだから出来は保証。ソフト・ロック・ファンも、ポップス・ファンも、これは「買い」だ。(佐野)

2000年1月17日月曜日

☆ハイロウズ:『Go!ハイロウズGo!』(キティ/KTCR1663)

 4thアルバム『バームクーヘン』を引っさげてのツアーから6曲が収録されたミニ・アルバム。ハイロウズは、ライブも最高だ。ヒロトの「罪と罰」「バームクーヘン」、マーシーの「ガタガタゴー」「パンダのこころ」といつもながら傑作揃い。特に「パンダのこころ」は新曲で、「バカタレントやバカライターに生き方を教わる 君は何だオレはパンダ上野で待ってるぜ」とマーシーらしいシニカルさがカッコいい。ヒロトの「罪と罰」の「正しい道だけ選んで 選んでいるうちに日が暮れて 立ち止まったまま動かない結局何もやらないなら 有罪 有罪 有罪重罪」、「バームクーヘン」の「たとえでっちあげたような夢も 口からでまかせでもいい現実に変えていく僕らはそんな形」など、ハイロウズには好きな言葉が一杯だ。サウンドはソリッドでストレート、ヘヴィなロックンロール。ロックとはどんなものと言われれば、日本ではハイロウズと私はためらいなくあげる。ハイロウズを聴いていると、まだロックは死んじゃいないと嬉しくなってしまう。(佐野)
GO!ハイロウズ!GO!