2019年10月13日日曜日

名手達のベストプレイ第6回~ニック・デカロ


 ニック・デカロことNicholas De Caroは、1938年6月3日オハイオ州のクリーヴランドで生まれた。
 幼い頃からアコーディオンを演奏して弟フランクとアマチュア・バンドを組んでいたニックは、十代半ばになると当時テナー・サックス奏者だったトミー・リプーマ(1936年7月5日生まれ)と運命的出会いをしてバンド・メンバーに加える。トミーは直ぐにニックのアコーディオンのプレイに魅了され、お互い影響し合うようになった。

 その後ニックは陸軍に徴兵され、トミーはクリーヴランドのレコード・ディストリビューターからLiberty Recordsのプロモーターとなりそれぞれ別の道を進んだが連絡は常に取り合っていたという。
 64年めでたく陸軍を除隊したニックは、トミーの推薦でアレンジャーとしてLiberty Recordsと契約する。スタッフ・ソングライターのジャッキー・デシャノンやランディ・ニューマンなどのスコア仕事から信頼を得て、プロデューサーのスナフ・ギャレットを紹介され彼のプロジェクトと、自身でプロデュースしたメル・カーターのシングル「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me」のヒットで初めての成功を手にした。
65年トミーはハーブ・アルパートとジェリー・モスにより創設されたA&Mレコードに移籍したことで、ニックもLiberty Recordsを離れフリーのアレンジャーとなる。同時期トミーの同僚でLiberty Records会長のサイモン・ワロンカーの息子であるレニー・ワロンカーも66年にワーナーブラザーズに移籍している。
 この二人の名プロデューサーの元でニックは数々のシンガーやグループのアレンジを手掛けていくことは、VANDAの熱心な読者ならご存じの通りだろう。

 ハーブをリーダーとしたスタジオ・バンドであるティファナ・ブラスをはじめ、アンディ・ウィリアムズ、当時アンディの妻だったクロディーヌ・ロンジェ、クリス・モンテス、サンドパイパーズ、そしてロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、ハーパース・ビザール等と、弊誌が監修した『ソフトロックA to Z』で取り上げたアルバム収録曲の多くのアレンジを彼が手掛けているのだ。60年代中期から70年代をピークにポップス、ロック名盤の影にこの人ありといわれた名アレンジャーとしてまず挙げるのは彼をおいて他にいないだろう。
 また自らボーカルを取ったソロ・アルバム『Italian Graffiti』(74年)は、日本ではAORの原点としても評価が高く、今でも熱く聴き続けられている。
 92年3月4日、ニックは心臓疾患で惜しくも亡くなる。53歳だった。 彼の葬儀はカリフォルニア州ウェストレイクと、故郷のオハイオ州クリーヴランドで執り行われたという。

 筆者は常々ソフトロックをはじめポップスは「アレンジャーの音楽」と考えていたので、ニックの存在の重要さに早くから注目しており、こうして取り上げられることが非常に嬉しい。
 そんなニック・デカロ氏が手掛けた楽曲に大きく魅了されたミュージシャン達と、彼のベスト・アレンジ曲を挙げてその偉業を振り返ってみたい。
是非サブスクリプションの試聴プレイリストを聴きながら読んで欲しい。
参考出典元:http://www.spectropop.com/NickDeCaro/





 【ニック・デカロのベストアレンジ5】 
●曲目 / ミュージシャン名
 (収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント


GROOVE UNCHANT(グルーヴあんちゃん)
https://groove-unchant.jimdo.com/ 




●Time After Time / Chris Montez 
(『Time After Time』/ 66年)
◎ごぞんじ、Tommy LipumaプロデュースNick DeCaroアレンジという 「 A&M 」 鉄壁の布陣によるFrank Sinatraのカバー。
これぞソフトロックといえる曲の1つなのでは? 
”ソフトロックの定義がいまいちわからない”という方も、この曲をオリジナルと聴き比べるとその魅力が理解し易いはずです。

●Kinda Wasted Without You / The Parade
(『The Parade』/ 発表67年 収録アルバム:88年)
◎Web VANDAをご覧のみなさまには説明不要の超名曲。
Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsのバージョンと、テンポも含めアレンジはほぼ一緒なのですが、The Pradeのバージョンはアコースティックギターが主張していてフルートのアレンジもいなたくなっており、こちらもおすすめです!

●Music to Watch Girls By / Andy Williams 
(7”『Music to Watch Girls By』/ 67年)
◎Bob CrewedのオリジナルバージョンではTijuana Brassを意識したアレンジになっており、 このAndy WilliamsのバージョンではもちろんTijuana Brass感を残しつつも、際立ったリズムセクション、メロディアスなストリングス・アレンジ、さらには女性コーラスをブラスしユニゾンさせることによって、本家の面目躍如とも言えるNick DeCaroの仕事ぶりが堪能できます。

●Come Saturday Morning / The Sandpipers 
(7”『 Come Saturday Morning』/ 69年)
◎Liza Minnelli主演の映画「くちづけ(1969)」 原題「The Sterile Cuckoo」のサウンドトラックに収録。
The Sandpipersの華麗なコーラスハーモニーに織り重なるようなNick DeCaroのハープ、ストリングス、ブラスアレンジは至福。

●Midnight At The Oasis / Maria Muldaur
(『Maria Muldaur』/ 74年)
◎Maria Muldaurといえば間違いなくこの曲。
40年以上経ってもこの曲が色褪せないのは、カントリーミュージックという枠に囚われない複雑で華麗なコード進行はもちろんのこと、地味過ぎず派手すぎないストリングス・アレンジをほどこしているNick DeCaroによる功績も大きいと思います。

   
Kinda Wasted Without You / The Parade


小園兼一郎(small garden)
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/ 




●Tea For Two / Nick DeCaro 
(『Italian Graffiti』/ 74年)
◎ニック・デカロ本人のリーダーアルバムから。
 原曲の美しさを全く損なわず、そして自分の色をはっきりと提示した上で更により良いものへと楽曲を昇華させている。特徴的なのはやはりニック自身によるコーラスワークだろう。
いわゆる往年の映画音楽アレンジこそがニックだという人もいるだろうが同アルバムの楽曲「Wailing Wall」にもあるようなスローなバラードと美しいコーラスがニック・デカロの魅力ではないかと僕は思っている。

●Lady Of The Night / Helen Reddy 
(『We'll Sing In The Sunshine』 / 78年) 
◎AORらしいしっとりとした質感を保ちながらポップスらしさをしっかり残すこの曲は作曲陣が3人という豪華さ。
ニックの堅実なアレンジ、ボーカル・アレンジもしっかり効いており安心して聴くことが出来る。この後紹介する曲もそうなのだが僕の好きな冨田恵一さんもニックのアレンジはかなり参考にしているのではないかと思われる節が多く、聴き比べてみるのも一興だと思います。

●Better Off Alone / Shirley Bassey
(『The Magic Is You』 / 79年)
◎プロデュース、アレンジメントを行っているアルバムからの一曲。
非常に美しい構成で原曲を綺麗に昇華させるお手本のようなアレンジ。 楽曲の途中からエレキピアノが被ってくるところが80年代の始まりを予感させる。またクレジットには、ニックがボーカル・アレンジを行っているとされており、彼の音楽に対するこだわりを感じる。

●On Saturday Afternoons In 1963 / Rickie Lee Jones 
(『Rickie Lee Jones』/ 79年) 
◎同アルバムの中ではあまり目立たないこの曲ではあるが同氏のアレンジはここでも手腕を発揮している。
何でもないようなオーケストラアレンジのように聴こえてしまうかもしれないがその構成力は原曲を全く壊しておらず、むしろはじめからこの編成で曲が作られたのではないかと思う程である。カウンターメロディ、リフの構築力にニックの実力を汲み取れる。

●I Have Ev'rything but You / Randy Crawford 
(『Windsong』/ 82年)
◎この時代らしい爽やかでポップなナンバー。
Randy Crawfordの前作でもニックはストリングス・アレンジを担当していたが今作ではより音に激しさを持たせている。シンセサイザーのパッドのように歌の後ろの隙間をただ埋めるように鳴っていた前作に比べてフレーズに幅を持たせ、かつアクションが大きくなってきた印象がある。ニックも時代に合わせてそのスタイルを上手に使い分けてきた名手だといえると思う。


Tea For Two / Nick DeCaro


鈴木恵(スズキサトシ)
作詞/作曲/編曲家。 ボーカル、ギター、サックスを担当。 自身のクループ「鈴木恵TRIO」「EXTENSION58」の他、アイドルグループ「RYUTist」への楽曲提供、作家「大塚いちお」氏との共同楽曲の制作等を行う。
Official HP https://suzukisatoshi.com 




 ●Me, Japanese Boy / Harpers Bizarre
(『The Secret Life』/ 68年) 
Caroline No / The Beach Boysを彷彿とさせるようなサウンド。オリエンタル=日本への限りなき誤解。
何を隠そうこの曲のデカロアレンジ、自分の管弦アレンジにかなり影響受けています。ので、素直にベスト5にあげました。

●Feel Your Groove / Ben Sidran 
(『Feel Your Groove』/ 71年) 
◎個人的にこういう味のあるボーカルが大好き。
歌が終わると壮大なインストのインプロビゼーションに入るが、長い曲全体をデカロのストリングスで覆い包んでいる雰囲気がただのインプロだけで終わらせない物語を感じる。ウェザー・リポート的な雰囲気は時代性か。

●Butterfly / Goldie Hawn
(『GOLDIE』/ 72年) 
◎S&G的トラディショナルなサウンドと子供達のコーラス、そこに乗っかるフレンチポップ的な味わいのボーカル、と聞けばまず誰しもアンマッチでは。と思いきや、なぜが見事に融合して見せるのは、デカロの隠し味のストリングの仕業。最後にだけ出てくるペニーレイン風ラッパの対旋律がまた良いですね。

●Getting Mighty Crowded / Nick De Caro 
(『ITALIAN GRAFFITI』/ 74年)
◎BETTY EVERETTのカバー。格好良さでは圧倒的にコステロだけど、デカロの絶妙なタイム感と頼りなさげなボーカルが好き。
僕が子供の頃、よくテレビで観ていた日本の歌謡曲バックのオーケストラアレンジに何となくニュアンスがよく似ています。

●I Don't Know Why I'm So Happy I'm Sad / Michael Franks
(『The Art of Tea』/ 75年) 
◎声が魅力的なんですよね。ボーカルとかイケてない方がメロウ度増す気がするのは僕の気のせいか。
最高にメロウはエレピとボーカルにこれぞバックグラウンドって言うくらいの主張しないストリングスはデカロマジック。実は、歌とストリングスの関係って密接なんですよね。

Getting Mighty Crowded / Nick De Caro 


【TOMMY (VIVIAN BOYS)】
オフィシャルサイト: https://twitter.com/VIVIAN_BOYS 



●My Love Grows Deeper / Clydie King 
(7”『Missin' My Baby』B面/ 65年)
◎フィレスの影武者プロデューサーを務めたジェリー・リオペルと、デカロによる音壁イミテーション作品には、このノーザン/モータウン風楽曲のような、本家スペクター作品では聴けないアプローチも。
シャングリラス的なボニー&ザ・トレジャーズ「Home of the Brave」(65年)とか。リオペルは、ロジャニコのマレイ・マクリオードらとの、自身やデカロらが手掛けた、ザ・パレードのメンバーとしても名を残す。

●Stage Door / The Grads 
(7”『Everything in the Garden』B面/ 66年) 
◎ゴフィン/キング作。「スパニッシュ・ハーレム」「ビー・マイ・ベイビー」の系譜たるスパニッシュ・スペクター風味、二拍三連キメ、付点8分ピアノを配すポップス王道編曲。
リピューマ、ボトニックとの制作チームは、改名、再出発したザ・サンドパイパーズに移行。スパニッシュ風味ならば、同グループの1stアルバムには、デカロがブルース&テリーに書いた「Carmen」(65年)の、より内省的なデカロ編曲のカバーも。

●For A Little While / Del Shannon
(7”『For A Little While』/ 66年)
◎リバティ/インペリアル周辺からキャリアが始まったデカロの、同社のヒット・メイカー、スナッフ・ギャレットとの最良の仕事の一つ。
デカロのアレンジは、ポップ・チューンを極上のソフトロックに、ソウル/ジャズ・テイストを蕩けるようなライト・メロウに変換するが、ロックン・ロールと融合すれば、このような多幸感溢れるパワーポップ・チューンを生み出す。

●All My Love’s Laughter / Jennifer Warnes 
(『Jennifer』/ 72年)
◎ジャック・ニッチェ(82年のジェニファーの大ヒット「愛と青春の旅立ち」の作者でもある)の仲介で、ジョン・ケイルがプロデュースした『Jennifer』(72年)に収録のジミー・ウェッブ作品(同じく「P.F.スローン」に捧げられた同名曲の、デカロ編曲による好カバーも収録)。
本作収録の「Needle And Thread」(編曲はジェリー・ピータース)を、後にデカロは『Italian Graffiti』で採り上げる。

●Tapestry / Nick DeCaro 
(『Italian Graffiti』/ 74年) 
◎チェット・ベイカー的な自身の歌唱を初めて起用した、先行初シングル「Caroline,No」や「I’m Gonna Make You Love Me」のカバーを含む、名義1st作『Happy Heart』(69年)。
イージーリスニングの規範とジャズ/ソウルとの交配編曲は、後のこの『Italian Graffiti』の雛形に。A&Mサウンド構築を経て、両作品を手掛けた、デカロとトミー・リピューマ。ラテン・ルーツの両名タッグ、初リリースの「Angelita di Anzio」のカヴァー(64年)に回帰するかの、イタリア繋がりの本作タイトルや、最後のHot Love→ジェニファー・ウォーンズ経由のこのカバーの収録経緯は、文字通り音楽史の「つづれ織り」たる物語を体現する。

All My Love’s Laughter / Jennifer Warnes 






 ⚫Our Last Goodbye / Andy Williams
 (『Honey』/ 68年 )
◎プロコル・ハルムの名曲「青い影」を思わせるイントロ、ダブル・トラックで録音された内省的なボーカル。
全盛期の華やかなウィリアムスのイメージとはかなり掛け離れているが、1968年・アメリカの退廃感を感じさせる中毒性のある曲だ。

●Drifter / Harpers Bizarre
(『The Secret Life of Harpers Bizarre』/ 68年) 
◎黄金コンビによる名曲で、多数のカバーが存在するが、このハーパース・ビザール版をベストに挙げる音楽ファンは多い。
デカロの編曲はドリーミーでカラフル、まさにポップスの魔法が散りばめられたサウンドであり、僕の "生涯ベスト5" の一曲にも選びたい素晴らしいトラックだ…!

●All in Love is Fair / Barbra Streisand
(『The Way We Were』/ 74年 ) 
◎こちらはスティーヴィー・ワンダーの名曲カバー。
すべてを優しく包み込むような泣きのストリングスは、彼女の伸びやかな歌唱を一層引き立てていて、非常に感動的だ。間違いなく、デカロの名仕事の一つに挙げられるだろう。

●Somewhere in the Night / Helen Reddy
(『No Way to Treat a Lady』/ 75年) 
◎個人的にはバリー・マニロウ版(78年)の方が馴染み深いが、先のリリースはヘレン・レディで、その編曲がニック・デカロ。
愛らしいイントロから、淡々と美しいメロディを引き立てていくアレンジは、マニロウと比べれば薄味だが、聴くほどに味わい深い。

●Here You Come Again / Dolly Parton
(『Here You Come Again』/ 77年 )
◎アメリカでは、様々な意味で大御所/成功者として知られるドリー・パートンの代表曲。
彼女がカントリーからポップ路線に進出した頃の作品で、バリー・マンの卓越した作曲センスと、デカロのさり気ないストリングス・アレンジはかなり相性が良い。

Drifter / Harpers Bizarre 




●(I Want A) True, True Love / Irma Thomas
(7”『(I Want A) True, True Love』/ 64年)
◎リバティでの若きニック・デカロの初期ワークスの中の大好きな一曲。シングル”He's My Guy” のB面。
いわゆるノーザン的バラードだが、当時のモータウンとはちょっと風味が違う奥ゆかしさがあります。この曲はちょっと個性的なサビのコード感が抜群なんです。両面ともストリングスは出てこないのだけど、不思議と聴こえてくるのが不思議。コーラスがほとんどオーケストレーションの役目を果たしているようです。弦アレンジで有名なニック・デカロですが、どうやったら曲が良くなるかの才能、まさにこんなことからにじみ出ているようです。

●Meditation / Claudine Longet
(『Claudine』/ 67年) 
◎サイケ人間として、予備知識なくレコード屋で見つけ、こんなジャケの人がまさかサイケっぽいことをしているのか?と期待が高まり、購入。だけど良い意味で裏切られた思い出の曲です。
オリジナルがジョビン作の有名曲であることは後から知りました。ゆったりまったりしたテンション低めのボサノバポップの傑作。昔のテレビで流れていたようなモノクロームなイージーリスニング的フルートが、最後の最後に16ビートに乗って盛り上がりつつ、クロディーヌ・ロンジェのSE的笑い声も加わってフェイドアウトする部分には、サイケ感とともにオルタナ感まで感じてしまいます。きっとそう狙っていたと信じたい。 この曲にサイケな映像つければハマる!

●All Strung Out / Nino Tempo & April Stevens
(『All Strung Out』/ 67年) 
◎90年代に『ソフトロックA to Z』(VANDA監修)で知り、ソフトロック全盛期にも比較的このレコードは見つかりやすかったように思います。
まさにフィル・スペクターなサウンドですが、発売年を見てしまうとオーケストレーションがすごく天然サイケっぽく聴こえてしまうんですよね。このストリングスのちょっとメロトロンぽい質感が大好きです。たまに気がつくとサビを口ずさんでしまっている一曲。

●Beautiful / Gordon Lightfoot
(『Don Quixote』/ 72年) 
◎カナダのシンガーソングライターで、ガールポップ期イミディエイト時代のNICOがカバーした ” I’m Not Sayin ’” のオリジナルシンガーということから知った。
ちょっとアシッドっぽさも感じてしまう60年代から、70年代前半はニック・デカロと組んで結構ヒットを飛ばしています。この曲はまず初っ端のコードからやられます。白玉系のストリングスとアコギの絡みがまさにビューティフルな一曲。

●Tattler / Ry cooder
(『Paradaise and lunch』/ 74年) 
◎チキン・スキン・ミュージックと並ぶ、70年代中期のライ・クーダーの言わずと知れた名盤の中の一曲。
自分も高校性のころからの愛聴盤です。クーダーの土臭さとアクの強さも、さりげなくも大変効果的なニック・デカロのストリングスでまろやかに仕上がってしまうという、ストリングス・アレンジの魔法のお手本のような曲だと思います。

(I Want A) True, True Love / Irma Thomas





●I Love How You Love Me / Claudine Longet 
(『The Look of Love』/ 67年)
◎クロディーヌロンジュのボーカルを最大限に引き立てて音域を邪魔にしないアレンジ。
キーボードアルペジオから始まる8分の6拍子バラードパターンにバカンスの終わりを 感じます。邦題は「わすれたいのに」。

●Chances Are / Ben Sidran
(『 I Lead A Life』/ 72年)
◎程よく軽く洒脱なアレンジが気持ち良い。
途中から入ってくるストリングスと少し唐 突な女性コーラスの広がりがこの上なく気持ち良い。後半の各楽器が押したり引いたりし てフレーズを奏でる展開も爽快!ニック・デカロはストリングス・アレンジで参加。

●Can't Take My Eyes Off You / Andy Williams
(『Love, Andy』/ 67年)
◎言わずと知れたフランキー・ヴァリの歌唱での大ヒット曲だが、ニック・デカロのアレン ジでほぼ同時期にリリースされている。
フランキーのバージョンより4つもキーが下な 分、サビのブラスアレンジがどっしりと派手でゴージャスに聴こえてこちらのバージョ ンがむしろ好き。

●Honeysuckle Magic / Mac Davis
(『Burnin' Thing』/ 75年)
◎右チャンの乾いたギターの音がいい。シンプルな構成で最後までしっかり聴かせるア レンジはさすが。
こういった、いなたいカントリーロック調なアレンジもするんだなぁ 。キャリアに奥域が感じられます。

●Wait For Me / Alessi Brothers
(『Words and Music』/ 79年)
◎往年のAORの匂いがイントロからプンプンしてくる。
ハイトーンボイスのボーカルラ インとバックのサウンドが見事に溶け合っている。ニック・デカロはプロデューサーとし ても参加。


Chances Are / Ben Sidran 



 ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)

●Just Beyond Your Smile / Roger Nichols & The Small Circle Of Friends
(『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』/ 68年)
◎ソフトロックの聖典とされるこのアルバムでニックは半数に当たる6曲のアレンジを手掛けている。特にこの曲でのオーケストレーションは白眉の完成度だ。左チャンネルのスライド・ギターのリフと対位する右チャンネルで駆け上がるストリングスのトリル、またセンターでたたみ掛けるホーンのフレージングなど巧みなスコアが僅か2分19秒に詰まっている。プロデューサーの盟友トミー・リピューマとの信頼関係ゆえの傑作といえる。ホーン・セクションのみのシングルVerより断然好きだ。

●Knock On Wood / Harpers Bizarre 
(『Harpers Bizarre 4』/ 69年)
◎初期スタックスを代表するエディ・フロイドのサザン・ソウル名曲をバーバンク・サウンドでやるとこうなる。
総帥レニー・ワロンカーからニックにどんなオファーがあったのか興味は尽きないが、ポルタメントが利いたストリングスの展開とフランジャーのエフェクティブな効果により幻想的なサイケデリック・ソフトロックに変貌させた。永遠の名曲「Witchi Tai To」の導入曲としてもこれ以上の演出はないだろう。

●I Was A Fool To Care / James Taylor 
(『Gorilla』/ 75年)
◎ピーター・アッシャーが手掛けた初期アルバム群とNY録音の前作を経て、ワロンカーと組んだジェームス・テイラー(以降JT)の6作目から。
ニックはアコーディオンとアルバム全体のストリングス・アレンジで参加しており、この曲ではジェントリーなJTの歌声に叙情的なストリングスを添えて、よりエバーグリーンなものに仕上げている。飽き性の筆者も30年以上愛聴しているマジックは、このニックのアレンジにあるんだな。

●Nightmoves / Michael Franks 
(『The Art Of Tea』/ 75年)
◎AOR名盤としてよく取り上げられる本作は、トミー・リピューマがマイケル・フランクスを売り出すために当時のジャズ・フュージョン系のベスト・スタッフでバックアップしたのはよく知られているが、ニックもストリングス・アレンジで全面的に参加している。
特に冒頭を飾るこの曲はセカンド・ヴァースから入るニックによる弦がないとこの曲のムード(世界観)にならないほど重要なエレメントになっていることが理解出来ると思う。

●Take Me To The Bridge / Crackin' 
(『Makings Of A Dream』/ 77年)
◎後年プロデューサー・チームとして成功するバネッタ&チューダコフが在籍した白人黒人混成のファンク・バンドの3作目から。
プロデューサーはラス・タイトルマンなので旧知のニックがストリングス・アレンジを担当している。これまでの4曲を選曲した理由も同じなのだが、彼のアレンジが曲にもたらす必然性という点が重要なのだ。この曲でもテンションで鳴っているシングル・ノートから一転して全体を覆う弦のヴォイシングの見事さに耳を奪われる。

Take Me To The Bridge / Crackin' 



 (企画 / 編集:ウチタカヒデ

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