2016年11月16日水曜日

☆Rolling Stones :『Havana Moon』(Eagle Vision/EVB335549)Blu-ray+2CD


今年の325日、アメリカと劇的な国交回復した社会主義国キューバに、自由の象徴と言えるローリング・ストーンズが一夜限りのコンサートを行った。なんと集まった観客は120万人!どこまでも広がる人の波に、ストーンズにとっても特別の思いのあるコンサートになった。アメリカの54年に及ぶ経済制裁は、ある意味キューバの時間を止めた。それまでアメリカの植民地のようだったキューバは、社会主義革命でアメリカと国交断絶、その当時町に溢れていた数多くのアメ車は買い変える方法も金もないのでそのまま大事に維持するしかなく、今になればキューバの町中がレトロなアメリカのクラシック・カーで溢れ、タイムスリップしたかのような非常に魅力的な光景が味わえる。ただ冒頭で、俯瞰で映るハバナの街並みは老朽化が進み、まるでスラム。ただ南国の良さというか、キューバの社会主義は、ソ連式の抑圧、中国式の拝金、北朝鮮の王朝ではなく、おおらかで、やる気が乏しい反面人生を謳歌しているようで、暗さがない。リズムがあれば体が動くラテンの血。ストーンズのロックはもちろん初体験になるわけだが、みな心から楽しんでいるようだった。ストーンズも他に類を見ない大観衆を前に、歌も演奏も超人的なパワーを発揮し、特に73歳のミックとキースのエネルギーとスマートさには驚くばかりだ。(先日、ついに長編アニメーションをスタートさせる宮崎駿は75歳、神様はその道のトップで意欲のある人だけに力を授けてくれるようだ)曲はBlu-rayCDともに18曲収録され、これは2月からチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、ペルー、コロンビア、メキシコ、キューバと続く中南米ツアーと同じパターン。共通するのはアンコールの「You Cant Always Get What You Want」「Satisfaction」で、セットリストも「Jumpin’ Jack Flash」「Its Only Rock’n’ Roll」「Paint It Black」「Out Of Control」「Honky Tonk Women」「Tumblin Dice」「Midnight Rambler」「Miss You」「Gimme Shelter」「Sympayhy For The Devil」「Brown Sugar」「Start Me Up」はずっと共通でその他の曲が変わる。曲順とかはハバナ前の317日のメキシコシティのものが似ていて「You Got The Sliver」「Angie」は同じで、「Before They Make Me Run」「All Down The Line」がハバナ用に歌われた。みないい出来だが、個人的にはキースとロンのボトルネックのブルース「You Got The Silver」がカッコ良かった。ハバナ用と言えるのは、「You Cant Always Get What You Want」のコーラスがキューバのコーラスグループEntrevocesを使っていたこと。「Satisfaction」のあとのカーテンコールが非常に丁寧で長いのにストーンズのコンサートへの思いが感じられた。最後にひとつ。これだけの大観衆なのに会場の光が少なく寂しく見える。お隣の国の大統領退陣デモは26万でもクリスマス・イルミネーションのような光の波。これはスマホを持っていてそれを光らせているかの差で、キューバの貧しさをふと思った。楽しそうなのでいいけどね。(佐野邦彦)

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