2016年11月24日木曜日

☆Frankie Valli:『‘Tis The Seasons』(Rhino/081227943127)


フランキー・ヴァリのクリスマス・アルバムだ。なんと御年82歳!あの魅惑のハイトーン・ヴォイスはさすがにどうなのかと心配したが、まったくの杞憂、フォー・シーズンズで1962年にリリースした『The 4 Seasons Greetings』に、本作の「The Christmas Song」も入っていたので妻に両方聴かせてみたら、なんと本作の声の方が若く聴こえるというのだ。今から54年前、28歳の時より、82歳の方が若々しいという奇跡のヴォーカリスト、フランキー・ヴァリ、ソロとしては初のクリスマス・アルバムを聴いてみよう。まず紹介の前に書いておきたいのが、プロデュースがボブ・ゴーディオということだ。これだけでファンなら期待値maxである。冒頭は「Joy To The WorldDo You Hear What I Hear?」のメドレー。「Joy To The World」はダンサブルなビートに乗せて歌われるが気づかないほど自然に「Do You Hear What I Hear?」が織り込まれこちらはハーモニーが美しく素晴らしい出来栄え。特に後半でサビのようにビートをいったん消し、その後両方の曲がハーモニーで重なる美しさはボブ・ゴーディオならでは、アルバムのハイライトの1曲だ。前者は『The 4 Seasons Greetings』で「Joy To The World Medley」の最後で、ハーモニーとビートのフォー・シーズンズ・スタイルで歌われていた。この時のプロデュースはもちろんボブ・クリュー。「The Christmas Song」はピアノとストリングス(打ち込み)でしっとりと歌われ、うっとりしてしまう。『The 4 Seasons Greetings』ではアコースティック・ギターとストリングスでやはりしっとりアレンジされていた。「Winter Wonderland」はハッピーなアレンジでハーモニーが絶妙で見事。「Merry Christmas BabyFeaturing Jeff Beck)」は、唯一余り好きではない。というのはジェフ・ベックを起用したことに合わせてR&B調のアレンジにしたので、本作の中で浮いて聴こえるからだ。「Frosty The Snowman」のアレンジはまさにフィリップス、黄金時代のフォー・シーズンズの思わせるキャッチーなビートに乗せて浮き浮きしてしまう。さすがにハンドクラップではなく鈴だったが(笑)「Have Yourself A Merry Little Christmas」は打ち込みのビートで始まるが、途中からゴージャスなハーモニーに彩られ、ああフォー・シーズンズだと嬉しくなる。そしてメドレーのように「リボンの騎士」頃の冨田勲を彷彿とさせる美しいバイオリンに導かれ「Jingle Bell Rock」がスタート。数あるクリスマス・ソングの中でも最も浮き浮きさせてくれるこのナンバー、軽快なロック・ビートで仕上げている。「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」もハッピーな曲だがこちらはジャズ・タッチでアレンジだ。そして「Blue Christmas」はピアノのバッキングでしっとりと歌い上げる。中間で女性コーラスを挟んでモータウン時代のフォー・シーズンズのような重量感あるドラムの後にアレンジを変えていくのがまさにボブ・ゴーディオのセンスそのもの、アルバムのハイライトのひとつ。「What Are You Doing New Year’s Eve」は軽快なビートの佳曲。「White Christmas」はアコースティック・ギターのリフに乗せてしっとりと歌う。バッキングの一部のように溶け込んでいるハーモニーのセンスが素晴らしい。『The 4 Seasons Greetings』ではバック・コーラスが対位法で重なった高度なアレンジでこれも忘れられない。「O Come All Ye FaithfullAngels We Have Heard On High」は最も讃美歌風の曲なので、逆にビートを付けてメドレーにしている。「Angels We Have Heard On High」と書くと何の曲か分かりづらいがあの「Gloria」、知らない人などいない有名な讃美歌だ。『The 4 Seasons Greetings』では「The Excelsis Deo Medley」の一部で逆の「The Excelsis Deo= Angels We Have Heard On High)」~「O Come All Ye Faithfull」の順で讃美歌風に歌われた。ちなみに私の通っていた幼稚園はキリスト教の幼稚園だったので、コーラス部分はラテン語で「グローリア イン エクセルシス デオ」と歌っていたのを思い出した。もう一曲、冒頭の「Joy To The World」もよく覚えていて、「もろびとこぞりて」のタイトルだったが幼稚園児には「モロビトコゾリテ…シュワキマセリ」もラテン語みたいなものだった。ラストは「We Wish You A Merry Christmas」は子供達のコーラスから始まるのでしっとりと讃美歌風と思いきや、ビートに乗せて転調を繰り返すなどやはりボブ・ゴーディオ。全曲、フランキー・ヴァリの美しいハイ・トーン・ヴォイスと、ボブ・ゴーディオの巧みなアレンジで綴られた快作である。今年のクリスマスはこのアルバムで是非。『Phil Spector:A Christmas Gift For You』『The Beach Boys' Christmas Album』『The Ventures' Christmas Album』という名作と是非一緒に。(佐野邦彦)
 

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