2015年7月18日土曜日

☆『The Beach Boys US Single Collection(Box Set)』(ユニヴァーサル/UICY77353/5)

ユニヴァーサルから1993年に私と東芝EMIの担当者で苦労して作った『The Beach Boys US Single Collection』(※当時のタイトルは『The Beach Boys Single Collection』)が復刻され15日に発売された。ライナーまで当時のままというから怖くて読めないが...。その当時はオリジナルのSingle Versionを集めた世界初のボックスとして高く評価してもらったが、音源的にはエコーがかかった「Surfin' Safari」と、最後にブライアンの上昇するここでしか聴けないメロディのファルセットが聴ける「Don't Worry Baby」のSingle Versionはマスターがなく世界中のどのCDを探しても本盤でしか聴けない。その他でもイントロのシンバルの逆回転がなく、エンディングが長い「Never Learn Not To Love」のSingle Versionは今でもこのボックスと1990年の『The Capitol Years』のみ。そして「Little Saint Nick」のステレオのSingle Versionは3つあるが、このボックスと1990年代の日本盤クリスマス・アルバムにはよく収録されていた鈴やグロッケンが非常に大きくミックスされた22秒のヴァージョンは、今では聴くことができず貴重だ。「Don' t Worry Baby」はCapitolから届いたSingle Materには最後のファルセットがカットされていて使えない。よって当時のUSオリジナルシングルの盤おこししかなかったのだが、ウーウウウーを消えるまで拾うとノイズが多くなるのでエンジニアがカットしてしまう。ノイズは無視して最後の切れるところまで入れろとケンカ?して入れさせた。消える寸前なのでヴォリューム最大で聴いてみて欲しい。Brandinの宮治淳一さんに昔、アナログシングルのスタンパーはスタンプ数に限りがあり、順に複製のスタンパーになる訳だが、複製になると微妙に劣化しフェイドアウトが短くなったりすることがあると聞いた。CDはもちろんデジタルマスターの訳だが、最初のスタンパーではないものが使われていて、それしかないのでCDSingle Versionは少し短いままなのだろう。「Surfin' Safari」だが、キンクスの「You Really Got Me」と「All Day And All Of The Night」にも深いエコーがかかったシングルが存在するので、そのあたり何かあるはずだが深く追求したことが無い。(ちょっと違うがビートルズの「I Feel Fine」「She's A Woman」のステレオも深いエコーだった。)このボックスが出た時は、イントロのスキャットにコーラスが被る「Why Do Fools Fall In Love」のSingle Versionも世界初のリイシューで、その当時は大きな売りだった。タイトルは「US Single...」とあるが、USのみのEP1枚も入っているし、最後は日本のみのシングルの曲もプラスしたので、そこでは当時は非常に価値が高かったMono Versionを入れて、価値を高めたものだが、今はアルバムの大半がモノ&ステレオの仕様になってしまったので価値は落ちたものの、これらのUSシングルが当時のモノのSingle Versionでまとめて聴けるのは嬉しいし、だいたいCapitolがボックスで出した『US Singles Collection 1962-1965』(※ここの「Surfin' Safari」と「Don't Worry Baby」は本盤のオリジナルヴァージョンではない)で終わってしまったから1966年以降の音源が当時のSingle Versionでまとまっているものがない。その点、本盤は1966年から1969年もカバーしていて、さらに最近のコンピに入るとリミックスされてしまうがここの音源は当時のままのヴァージョンなので逆に価値がある。1993年当時のボックスは紙のちゃんとしたボックスに入り、ディスクは1枚ずつ梱包され、アメリカと日本のシングルジャケットとEPジャケットはミニ写真集として解説と歌詞集とは別に同梱されていたが、今回のリイシューはCD3+CDR1枚の4枚組プラスチックケースで、解説と歌詞(対訳付き)とジャケットはデジタル化されCDRに収められ紙素材はない。CDRは曲名をクリックするとジェケットと解説、対訳付歌詞へ飛ぶというきれいな作りだった。当時のオリジナルボックスはamazon中古で56622円という高額商品になっているので、この簡易なボックスでも十分だろう。なおブライアン・ウィルソン来日時のインタビュー(『The Beach Boys Complete Revised Edition』掲載のもの)で、私は自分の最も自信作であるこのボックスを持って行ってブライアンにサインをしてもらったが、すぐさまデビッド・リーフが手元にとり、これは何だ?の質問したので内容を説明したら非常に欲しがったが、あげてしまったらサインの意味がないので丁重にお断りした思い出がある。なお、このボックスの素材はツルツルの紙だったのでブライアンのサインはすぐに取れてしまい、今はBの頭文字しか見ることができない...。(佐野邦彦)


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