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2013年7月21日日曜日

たをやめオルケスタ:『緞帳プレリュード』(浅草レコード/DQC1128)



たをやめオルケスタは08年に結成された、18人の女性ミュージシャンから成るユニークな音楽性を持つビッグバンド系トロピカル楽団だ。7月24日にファースト・フルアバムをリリースするので紹介しよう。

たをやめオルケスタはリーダーの岡村トモ子を中心として、アルトとテナーのサックスを各2名、トローンボーン4名、トランペット3名のホーン・セクション(他に複数のサポート・メンバーが参加している)に、パーカッションを含むリズム・セクション、そしてヴォーカリストを配する大所帯バンドである。
各々ヤバニ!、odusseia、suzumiki、What's Love、The Scarteries、GYPSY VAGABONZなどといったバンドで活動している女性ミュージシャンが集結したという。
これまでにミニアルバム『ワタシ至上主義』(09年)、『月夜のショウ』(11年)をそれぞれリリースしている。



全11曲を岡村トモ子とキーボードの大西まみを中心にアレンジされたそのサウンドは、新感覚ビッグバンド・サウンドというべきか、ラテン・ミュージックのリズムとジャズやブルースを中心に、昭和歌謡曲のエッセンスも取り入れているのがユニークな点だろう。
アルバムはラテン風味のスイング・ジャズを中心に複数のパートが展開していく冒頭の「たをやめプレリュード」にはしまる。ラテン・ジャズ・ファンクとして完成度が高い「SCARLET」にはタワー・オブ・パワーの匂いもして筆者的にもベスト・トラックだ。



メンバーの実体験を元にした様な「失恋旅行」や「嫁入りマヱ」といったタイトルの曲や、ヴォーカリスト秀子のキャクターを活かしたモノローグなど芝居がかった演出もあり、ライヴ・パフォーマンスにも期待できるが、確かな演奏力を背景にしたアレンジは聴き飽きないのである。
興味を持った人は下記の特設サイトでライヴ・スケジュールを是非チェックして欲しい。
『緞帳プレリュード』特設サイト
(ウチタカヒデ)

2013年7月15日月曜日

めかる:『カラフル』(Happiness Records/HRCD-049)



沖縄出身の女性バイオリン奏者、めかるのセカンド・アルバム『カラフル』が7月17日にリリースされる。インストルメンタルを主体したアルバムは珍しくなくなった昨今であるが、非常に面白いサウンドなので紹介しよう。

めかるは02年に音大入学のため沖縄から上京し06年に卒業後、東京を拠点に様々なミュージシャンのストリングス・アレンジ、レコーディングやライヴのサポート活動の傍ら、インストルメンタル主体のソロ・アルバムをリリースしている。本作『カラフル』は12年のファースト・アルバム『つながり』に続くセカンド・アルバムである。
アルバム収録の10曲中8曲がインスト曲で、タイトル曲の「カラフル」にはharmonic hammockのタリエ、「こえ」には樽木栄一郎が各々ゲスト・ヴォーカリストで参加している。
日本のポップス界ではバイオリン奏者のソロ・アルバムは差ほど多くないが、そのジャンルレスなサウンドには興味を惹いた。



冒頭の「Summer lights」はホーン・セクションを配した、Wack Wack Rhythm Bandにも通じるハッピーなシェイク調のリズムで、バイオリンがリードを取るインスト・アルバムという固定観念を崩してくれる。続く「スニーカー」でもファズ・ギターのリフや8分刻みのベース等ロック系のサウンドをバックとのコトラストが面白い。
タリエがヴォーカリストで参加した「カラフル」でもバッキングに徹することなく、きちんと主張していて構成が考えられている。
叙情的な「Autumn waltz」~「風のかなた」の流れ等、バイオリンのプレイそのものの面目躍如というべき曲も収録されているが、全体を通して飽きさせない工夫があって長く聴けるアルバムである。
(ウチタカヒデ)

星野みちる:『星がみちる』(HIGH CONTRAST RECORDINGS/ HCCD9537)


 元AKB48のアイドルのアルバムをWebVANDAでレビューするのはさすがに躊躇するが、星野みちるが初のフル・アルバム『星がみちる』を7月17日にリリースする。DJのはせはじむと本サイトでも評価が高いマイクロスターの佐藤清喜の共同プロデュースということで取り上げることにした。

 星野みちるは元AKB48とはいえ、昨今の一大ブレイクの発端となった11年から遡る4年前の07年にシンガー・ソングライターを目指して同グループを卒業する。09年にファースト・ミニ・アルバムの『卒業』、11年にはMichiru名義でミニカバー・アルバム『Bitter & Sweet』をそれぞれリリースしている。
 そして昨年10月末には本アルバムに先駆け、はせはじむと佐藤清喜(全体的なサウンド・アレンジも担当しているだろう)のコンビが手掛けてリリースした7インチ・シングル『い・じ・わ・る・ダーリン』が発売と同時に完売となった。
 さて本作『星がみちる』であるが、ジャケット・デザインからイメージする通り、懐かしくも新しいスペーシーなエロクトロ・ポップスがアルバムを通して展開されているのである。
 音源を入手したのが一ヶ月程前であるが、筆者が真っ先に夢中になったのは、本作のリード・トラックでRAH BANDの「Clouds Across The Moon」を彷彿させる「私はシェディー」である。



 音楽通のVANDA読者はご存知の通り、ビートルズの悪名高い 『Let it Be』(70年)のオーバーダビング・セッションでフィル・スペクターのオファーによりストリングス・アレンジを担当したリチャード・アンソニー・ヒューソンが、77年に奥方をヴォーカルにして結成したのがRAH BANDである。因みにヒューソンといえばソフトロック・ファンにはジクソーの「Sky High」やパイロットの「Lovely Lady Smile」アレンジでも知られる名匠である。
 脱線したが、RAH BANDテイストの「私はシェディー」は名曲であることに変わりはない。
 星野が詞曲共に手掛けたラヴァーズ・ロック風の「オレンジ色」やアポジー&ペリジー(三宅裕司&戸川純)の「真空キッス」(84年)のカバーなどアルバム全体的に聴きどころは多く、ハッシュ系のビートで間奏やコーダのストリングス(シンセ)・アレンジがマーヴィン・ゲイの『What's Going On』(71年)を彷彿させるメロウな「トワイライト・ブルー」も筆者好みである。
(テキスト:ウチタカヒデ



Honey Ltd.:『Honey Ltd.』(LIGHT IN THE ATTIC/LITA 102)


 ソフトサイケ系ガール・グループのHoney Ltd.(以降ハニー・リミテッド)が68年にリリースした唯一のアルバム『Honey Ltd.』(LHI-12002)がこの度世界初のCDリイシューされた。
オリジナル・マスター・テープからのリマスターと5曲のボーナス・トラックを加えており、音質とアーカイブ共に信用がおけるので紹介したい。

 このアルバム『Honey Ltd.』は、ナンシー・シナトラを手掛けヒットさせたリー・ヘイゼルウッドによるプロデュース作品であったが、その先進的なサウンドゆえにヒットには至らず、後年幻のアルバムとしてオリジナ・アナログ盤が高値(一説では$2000以上とも言われている)で取引されていた。
 そもそもハニー・リミテッドはローラ・クリーマーを中心に、マーシャ・ティマー、ジョアンとアレックスのスリウィン姉妹の4人からなるデトロイト出身のグループである。地元のウェイン州立大学の構内カフェで歌を披露していた延長で67年にMama Catsなるグループを結成し、同じミシガン州出身のロック系シンガー・ソングライターのボブ・シーガーとステージで共演したという。その後68年にロスのサンセット大通りにあったリー・ヘイゼルウッド・インダストーリー(通称LHI)でオーディションを受け、ヘイゼルウッドのアイディアでハニー・リミテッドと改名してデビューし、68年に2枚のシングルと本アルバム、69年に2枚のシングルをリリースする。
 69年の3月末にはアレックスは恋仲だったJ.D.サウザーとの結婚(その後72年に離婚)により脱退し、残ったメンバーはEve(イヴ)とグループ名を変えアーシーなカントリーロック系グループとして活動を続けた。

 ではアルバムの内容に話を戻そう、ヘイゼルウッドが手掛けたナンシーの諸作と同様にレコーディングにはレッキング・クルーの面々が参加し巧みな演奏を随所で聴かせる。シングル・リリースもされた「Louie, Louie」(LHI-1216 68年)のみアレンジとキーボードを担当したジャック・ニッチェの招きでライ・クーダーが参加しているが、彼らしい骨太のスライド・ギターを披露している。
 因みに同時期ストーンズにライを紹介したのもニッチェと言われている。




 その「Louie, Louie」のカバー以外の7曲はメンバーであるローラのオリジナルで、内3曲がマーシャとの共作であるのもこのアルバムの魅力の一つだろう。
 『Pet Sounds』(66年)で要のティンパニをプレイしていた、ゲイリー・コールマンによるヴィブラフォンのアクセントに導かれて始まる冒頭の「The Warrior」から漂うサイケデリックなムードは堪らない。
 続く「No, You Are」の複雑な展開ではジム・ゴードンが本領を発揮したドラミングが聴ける。ファースト・シングル「Tomorrow Your Heart」(LHI-1208 68年)のカップリングの「Come Down」ではキャロル・ケイのベース・プレイに舌を巻く。



 そして多くのソフトロック・ファンが異口同音にベスト・トラックと語る「Silk N' Honey」が、このアルバムのハイライトであることに筆者も異論はない。ジャズ・ピープルが多用するクローズド・ヴォイシング系のハーモニー(後のMPSレーベルのThe Third Waveにも通じる)やレズリー・スピーカーを通してモジュレーションを効かせたコーラスなど彼女達の魅力を余すことなく聴ける。
 またこの曲、長年ベースはキャロル・ケイのプレイと思っていたが、今回掲載されたクレジットを見ると、多くのジャズ・セッションから『Pet Sounds』にも参加していたチャック・バーグホファーだった。いずれにしても絶妙なタイミングで繰り出すフレーズはこの曲の要になっている。




 ボーナス・トラックについても触れよう。アルバム未収録のサード・シングルで、69年にスリー・ドッグ・ナイトがヒットさせるローラ・ニーロの「Eli's Coming」(『Eli and the Thirteenth Confession』収録 68年)のカバー(LHI-3 69年)はマイク・ポストのプロデュース&アレンジだ。ポストは米テレビ放送音楽界の担い手で同時期にはメイソン・ウィリアムズの『THE MASON WILLIAMS PHONOGRAPH RECORDS』(68年)等も手掛けている。
 続くフォース・シングルの「Silver Threads And Golden Needles」(LHI-12 69年)もポストが手掛け、ここではジミー・ウェッブ・スタイルのアレンジが聴ける。
 ボーナス・トラックの内3曲は未発表曲で、「I'm So Glad」は69年のポストとの同一セッションでのアウトテイク曲だろう。コーダのパートでのストリングスが美しい。「Love, the Devil」と「Not for Me」は共に68年のセッションでのバッキング・トラックのみのアウトテイクだが、後者はニッチェが主導した「Louie, Louie」と同日のレコーディングで、ここでもライのスライド・ギターが光っている。

 繰り返しになるが今回のCDリイシューは、オリジナル・マスター・テープからのリマスターというポイントは元より、彼女達ハニー・リミテッドがLHIに残した音源をコンプリートしているという点でも買いである。32ページに渡るブックレットには当時を回想したメンバーのインタビューと貴重なショット(近影までも!)を掲載していて読み応えがある。
尚アナログ盤も同時リリースされているので、興味のある人はそちらもチェックしよう。

(テキスト:ウチタカヒデ

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