2012年1月2日月曜日

☆Who:『Who's Missing & Two's Missing』(ユニヴァーサル/UICY94786/7)

日本は世界有数のフーのリイシュー大国になった。この盤のように、日本独自発売のCDに、その盤でしか聴くことができない未発表トラックがしばしば入るからだ。
振り返ってみると私がフーのレコードを最初に買ったのは1970年、「Summertime Blues」のシングルだった。次に前年にリリースされた『Tommy』を聴いてフーの魅力に打ちのめされ、その次に買った最新盤『Who's Next』で私はフーの熱狂的なファンになった。しかしこんなにいい曲が満載で演奏も上手いのに当時唯一の洋楽音楽誌ミュージックライフでもアルバムレビュー以外取り上げられず、レコード店では冷遇され、学校でフーを聴いていたのは私を含め2人しかいなかった。そんなお寒い日本でのフー事情だったので当然、来日コンサートなどあり得ず、フーの初来日が2004年と、それから34年も待つことになったのである。ところがだ。ようやくフーの凄さに気付いた日本のレコード会社と音楽誌は10年くらい前からフーの様々なアルバムをあの手この手でリイシュー、特集本も何冊も組まれ、今や日本は世界屈指のフー大国に変貌した。例えば『A Quick One』のボックスセットには「Batman」の歌なしヴァージョンが入るなど日本盤でしか聴けない音源が登場するようになった。そして今回の日本独自仕様のレアリティーズ・コンピの2イン1には、ボーナストラックの中に3つの貴重な初登場音源が収められた。まずはなんといっても「Baby Don't You Do It」の9分にも及ぶオリジナル未編集ヴァージョンである。1971年のサンフランシスコのライブであり、最もフーの演奏にパワーがあった時代なので「Join Together」のB面曲ながら名演として高い人気があった。しかしシングルとして披露されていたのは5分の編集ヴァージョンだったわけで、今回は未編集の9分、ピート、ジョン、そしてキースの3人によるスリリングな演奏がたっぷりと楽しめ、この1曲だけでも買う価値がある。他では『Thirty Years Of Maximum R&B』のボックスで初披露の「Fortune Teller」と「Melancholia」が別ヴァージョンで収録された。「Fortune Teller」はボックス収録の音源が編集されていたものだったので、カットされていたコーラス入りのイントロを聴くことができる。そして「Melancholia」はロジャーのヴォーカルがダブルトラックであることがよく分かるリミックス前のヴァージョンだった。その他では「Call Me Lightning」がピートのリード・ギターが入っていないスカスカの『Direct Hits』で聴くことができるヴァージョンだった。さらに「Dr.Jekyll & Mr.Hyde」の英米のシングルヴァージョンを両方とも収めたことも注目したい。音源的には別のCDでも聴けるが、一緒に収められたのは初。1回聴くだけですぐに分かるまったく違うヴァージョンなので未確認の方は聴いて確かめてもらいたい。(佐野)