2009年8月2日日曜日

Babadu :『Babadu !』(Celeste/ CMYK6227)



 ハワイアン・コンテンポラリーと呼ばれるサウンドは、70年代アメリカのブルーアイドソウルやAORからの影響を受けつつ、現地のトラディショナルなエレメントを大事にした独特なスタイルで、耳の肥えたポピュラーミュージック・ファンに評価が高い。 今回紹介するBabadu(ババドゥ)の『Babadu !』(79年作)はファンの間では幻のアルバムとされ、オリジナル・アナログ盤がオークションで高額取引されていたという。この度世界初CDリイシュー化されたので、その貴重なサウンドを聴いてみた。 

一般的にハワイアン・コンテンポラリーのアーティストといえば、セシル&カポーノとカラパナの知名度が高く、そこから派生したアーティストまでも追い掛けている熱心なファンがおり、95年頃にテンダー・リーフの自主制作盤『Tender Leaf』(82年作)が日本で紹介された頃から一部で注目を浴びるようになった。その後同作品が2000年にリイシューされたのを契機に、元カラパナのマッキー・フェアリーのソロ作品や、同じくカラパナのメンバーだったカーク・トンプソンが率いたラテンファンク・グループ、Lemuria(レムリア)のリイシュー化が進んだと記憶する。 さて今回の『Babadu !』であるが、カーク・トンプソンのプロデュースとバッキングにはLemuriaのメンバーが多く参加しており、サウンド的にはそれを踏襲したものであり、Babaduのソウルフルなヴォーカルの魅力を引き出している。カークの音作りはカラパナ時代からニューソウルの影響下にあったようで、それを大きく開花させたのがLemuriaであろう。
カーティス・メイフィールドのソロ初期からのバンド・メンバーで、カートム・レーベルのアルバムに多く参加している名パーカッショニスト、マスター・ヘンリー・ギブソンを参加させるなど、その拘りは一筋縄ではいかない。

さて肝心なBabaduであるが、プロフィールは詳細不明であり、今回のライナーでも明らかにされておらず、オアフ島出身のシンガーソングライターということだけで、定かではないのだが、ソングライティングでクレジットされている「S.Davis III」が本名なのかも知れない。 
アルバムは良質なメロウ・アコースティック・ソウルというべき「We're Not to Blame」が冒頭を飾り、続くのはカラパナと同時期に活躍したバンド、カントリー・コンフォートの中心メンバー、ビリー・カウイのソロアルバム『BILLY KAUI』(77年作)から「Words to a Song」のカバー。この完成度の高い2曲で多幸感を得てしまう。また当時ジャンルを超えて多くのアーティストに影響を与えていたスティーヴィ・ワンダーの「Higher Ground」や後の「Master Blaster」を彷彿させる「I've Got My Roots」や、多くのカバー・ヴァージョンを生んだレオン・ウェア作の名曲「If I Ever Lose This Heaven」スタイルの「I Love Music」など、オリジナルとされる曲でニューソウルの影響が強いのは、Babadu自身のセンスなのだろうか。 全体的なサウンドで貢献度の高いのは、ラテン・フレイバーのポリリズム・ビートを叩く名手ヘンリー・ギブソンの他、的確なバッキング・プレイをするピアノのキート・エバースバック(後年『Tender Leaf』のプロデュースをする)、フュージョン色の濃いフレーズを弾く(「I Did The Right Thing」でのなんちゃってサンタナ風がいい)ギターのジョン・ラポザを挙げておく。 なお今回のようなレア盤のCDリイシューはプレス数に限りがありそうなので、アルゾ&ユーディーンにも通じるテンダー・リーフのセンスが分かる、ソフトロックやシティポップのファンは早期に入手することをお勧めする。
 (ウチタカヒデ)


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