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The Beatles VS The Beach Boys Vol.1





はじめに:
 今回の特集記事は、福岡の伊藤さん達が主催する「ビーチボーイズ・コンベンション」の会誌用に佐野さんが寄稿されたものです。私が一方的に佐野さんへお願いし、WEB VANDA へも公開する運びとなりました。文中にもある通り、WEB VANDA として、ここまで長文のビートルズにまつわる記事は、いままでありませんでした。ビートルズの話題は、佐野さんとも度々するのですが、「何故 VANDA で取り上げないのですか?」への回答は、いつも決まって「好き過ぎるから」でした。判るような判らないような理由でしたが(笑)、ここにようやくビートルズ関連の記事を掲載できることを大変喜ばしく思っております。
 今回より3回に分け、この特集記事を公開していきます。最終回には、佐野さんが選ぶベスト20曲なども登場しますので、みなさんが選ぶベスト20曲など、コメントやトラックバックなどで教えて頂ければ幸いです。(岩井)


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(The Beach Boys Convention 2009 Winterより)

 ビートルズが世界一のロック・バンドであることは間違いなく、音楽性、ヒットチャートの記録、人気度、文化面の影響度、どれをとっても未だにビートルズを凌ぐ存在はない。我が愛するビーチ・ボーイズも、やはり2番手になってしまう。ブライアン一人に支えられたビーチ・ボーイズに比べ、ジョンとポールという天才を二人抱えたビートルズは、倍のエンジンを積んでいる上にジョージ・マーティンというターボもついていて、途中からはぶっちぎりで加速して追い抜いていってしまった。しかしそのスーパーマシンにたった一人で挑んで、1966年には『Pet Sounds』でビートルズに唯一リードをつけることができたブライアンとビーチ・ボーイズには、どうしても深い思い入れがある。ただし1967年以降は完敗だが。

 「ビーチ・ボーイズは『Pet Sounds』ではない」というのは私も同じく思うが、「『Pet Sounds』があったから「ビーチ・ボーイズ」だった」というのも真実。『Today』からの流れを含めての話だが、そうでなければビーチ・ボーイズはオールディーズの一ページで終わっていただろう。クリエイティビティを競った唯一互いに認め合った好敵手同士だった。ビートルズが『Pet Sounds』に触発され、『SGT Peppers』を作ったというのはポール自身が語っている。そしてこの2枚でポップ・ミュージックの進化が終わったとも。

 ビートルズは格好もよかった。今は当たり前だが、ステージでみな自由な動きをしていた。それに比べビーチ・ボーイズは初期にはみんなで同じステップを踏んでいたり、マイクのモンキー・ダンスがあったりとどうにもカッコ悪い。特に楽器を持たないマイクの仕草は当時のミック・ジャガーに比べて目を覆いたくなってしまう。私の好きなグループ、今も生き残ったフーやキンクス、ローリング・ストーンズといったグループはみな動きが自由で自然だった。それに比べて消え去ったデイブ・クラーク・ファイブのようなグループは、みんなで同じステップを踏んでいた場合が多い。ダサいグループは消えるのも早いようだ。さらにビートルズは報道陣との受け答えがウィットに富んでいてそこもカッコよかった。(報道陣が彼らの長い髪を見ながら)「いつ床屋にはいくの?」「昨日行ったばかり」というように。それに比べビーチ・ボーイズの受け答えは面白くない。BBCの『Ready Steady Go』に初出演した時に「イギリスで何を見たい?」「子供とか若者とか」。これじゃあかなわない。ステージ・パフォーマンス、ジョーク、全てビートルズは満点で、ビーチ・ボーイズはギリギリ合格点程度。色々な面で差が付いているのだが、それでもビーチ・ボーイズにこだわってしまう。




 と言っていながら、今回は嬉しいビートルズの特集だ。小学校6年生、1969年に「抱きしめたい/シー・ラブズ・ユー/ツイスト・アンド・シャウト/プリーズ・プリーズ・ミー」のコンパクト盤を買って以来、ずっとビートルズ・ファンであり続けたので、ビートルズとビーチ・ボーイズには思い入れが特別に深い。レコードとCDの棚はこの両グループから並べるというのは40年近い私のルールだ。

 その中でビーチ・ボーイズについてはシンコー・ミュージックで『The Beach Boys Complete』という本を改訂版の『2001』も含め2回やらせてもらったので、思っていたことは晴らせたという思いはある。しかしビートルズについては、怖くて手を出していない。あまりにコアなファンが多いので中途半端なことができず、一度、私の作っていたVANDAという音楽誌の4号という古い号で1回小さい特集を組んだだけだ。音楽誌では数え切れないほどのビートルズ特集が組まれ、様々な音楽評論家が自分たちの思いのたけを述べているが、個人的にはどこか見当はずれ。最近のレコードコレクターズ誌(立ち読みしただけなのでうる覚え。買うような特集がなくなってしまったのでね)でビートルズの自分の好きな曲を20曲程度あげている特集があったが、圧倒的にジョンの曲が多く、ポールの曲を上位に上げている人は僅かだった。その僅かな人の名前を見ると萩原健太さん、森勉さんといったビーチ・ボーイズのファンでもあるポップスに理解の深い人だけだった。音楽評論家と呼ばれる人たちは、相変わらずロック偏重で、ポップなポールの書く曲なんて好きじゃない、選ぶのはカッコ悪いなんて思っているのだろう。でも明らかにビートルズがこれほどの存在になったのはポールの曲のおかげだ。ビートルズは1964年から1970年までの7年間にアメリカで20曲の全米1位のシングルを出しているが、そのうちジョン主体の曲が6曲、ポール主体の曲が12曲、明らかな共作2曲となっていた。特に1966年以降の大ヒットはほとんどがポールの曲で、後期ビートルズはポール主導のバンドになっていた。ポール様々だ。でも...ね。ジョンの方が人間的に好き。無防備なまでに明け透けで。『ジョンの魂』を聴いてしまえば、「人間ジョン・レノン」に打ちのめされてしまう。そしてジョンの歌うロック・ナンバーは最高だ。比べてポールはソロ時代に「Frozen Jap」なんて曲があるように日本人はあまり好きじゃないようだ。コメントは優等生で面白みがない。で、ついついジョンをひいきしたくなる。ジョン、がんばれ!ってね。でも冷静になって曲を選べば、ビートルズ時代のポールの曲が多くなってしまう。非の打ち所がない。でも解散してからのポールの曲には輝きが乏しい。やはりポールにとってジョンの存在が大きく、負けてはいけないと、曲作りで厳選されたものだけが「ビートルズ・ナンバー」になったのだろう。おや?ポール礼賛のためにこのコーナーを書いているのではない。ポール派という訳でもない。あまりに音楽誌でポール軽視が目立つので、まずはカウンターパンチを一発、と思っただけだ。

 ポール一人だけなら、ビートルズは確実にビーチ・ボーイズに負けていた。ジョンの書く曲の底知れぬパワーがビートルズの存在を際立たせた。計算されたものではない、ジョンの体から湧き出てくるマグマのような力だ。例えば初期の「All I've Got To Do」なんて計算して書ける曲ではない。ギターを弾きながら思いついた歌詞にメロディを付けていたら、こんなコブシの回った、字余りのような不思議なメロディの曲になってしまったという感じだ。「All You Need Is Love」や「Don't Let Me Down」もそうだ。5/4,4/4,4/3,4/2なんていう小節が乱れ飛び、作曲の理論など無視している。それでいて聴きやすくキャッチーなのだから、これはジョンしか出来ない、まさに天才の所業だ。まあ、こんな二人にブライアンは一人で対峙したのだからお気の毒なのだが、だからこそ触発され『Pet Sounds』までたどり着けた。ジョンとポールのライバル関係は、ビートルズとビーチ・ボーイズのクリエイティビティなライバル関係にもきれいに映しこまれていた。

The Beatles VS The Beach Boys Vol.2 へ続く






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このページは、Kunihiko Sanoが2009年4月 8日 23:22に書いたブログ記事です。

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