2009年1月4日日曜日

☆Kinks:『Picture Book』(Sanctuary/5313051-5)

イギリスのロックバンド、キンクス(The Kinks)のデビュー前の前身であるレイブンズ名義の録音から、キンクス名義の最後のアルバムである『To The Bone』の曲まで網羅したCD6枚組のヒストリー&レア音源集『Picture Book』がようやく発売された。初めて見る写真が詰め込まれたブックレットもよく、レア音源集としては若干、三角マークが付いてしまうが、お金を払う価値は十分ある。既発表音源など紹介しても仕方がないので、未発表音源のみ、紹介していこう。なお、レイ・デービスが書いていることが当たり前なので、作者が別の曲のみ、作曲者を記すものとする。 では、ディスク1から紹介していこう。まずはレイブンス(Ravens)時代の1曲だ。19631019日に録音されたレイバー=ストーラー作のシンプルなロックンロールナンバー「I'm A Hog Foy You Baby」がそれだが、ちなみに同時に録音されたオリジナルの「I Believed You」は遥かにキンクスらしいナンバーだったものの既にひっそりとデイブ・デービスの作品集『Unfinished Business』に収録されていたので気づいていなかった人にはリーズナブル。「You Really Got Me」のリフに別のメロディの歌を乗せた6498日録音の「Don't Ever Let Me Go」は、歌が小さくミックスされリフの方が大きく聴こえていることから、レコード用ではないようが気がするがどうだろうか。デイブ・デービスが歌う「Come On Now」は失敗したテイク2とテイク3が頭に入ったまさにボーナス・トラック。完成版はテイク4だった。レイお得意のマイナー調のちょっと陰鬱なフォーク調のデモ「There Is A New World Opening For Me」は6410月、AIPレコードのコンピ盤『Freakbeat』(先のレイブンス時代の2曲とこの曲が収録されていた。ただ、「Believed You」以外、Unreleased扱いになっているのはどういうことなのか。このCDはブートではない)に収録されていた「This I Know」は655月、「All Night Stand」は12月に録音されていた曲。この中で「This I Know」は『Freakbeat』でレイブンス名義になっていたが明らかに63年当時のサウンドではなかったので、65年の作品と分かって納得できた。ほぼ同時に録音された「A Little Bit Of Sunlight」はポップなナンバーだが突き抜けた感はない。66年録音の「And I Will Love You」もポップなナンバーでキーボードもフィーチャーされていたが、明らかなデモなのでメリハリはなく、当然ながらボツ曲レベル。初CD化は1983年リリースのコンピ盤『Dead End Street』の初回版に付いた10インチ盤のみ収録されていた「Time Will Tell」という654月に録音されていたナンバーで、こちらはリフを使ったロックナンバーで期待を抱かせるが、サビでレイの声がかすれてしまってやはり明らかなボツ曲。どれもこれも歴史的価値はあるが、クオリティはやはりボツで納得できる。ディスク2ではまず『Face To Face』のCDのボーナストラックで初めて発表された6627日録音の「Mr.Reporter」だが、ここではデイブではなく作者のレイが歌ったヴァージョンが収録されこれにはビックリさせられた。カバー曲、J.Coemer作の「Good Luck Charm」はホンキートンクタッチのピアノも入ったビート・ナンバーでこれらの2曲は完成度が高い。前者は655月、後者は678月の録音だ。ディスク3と4には未発表&初CD化のトラックはなかった(ちなみに「Lola」はCoca ColaではなくCherry Colaで歌われたシングル・ヴァージョン、「Apeman」は『Lola』のCDのボーナストラックにも収録されていた別ヴァージョンの方で芸が細かい)が、ディスク5にはまず79529日~30日に録音された「Hidden Quality」が登場、その後79年から80年に録音された性急なビートが面白いロックナンバー「Nuclear Love」、ロックナンバーながらメロディはけっこうメロディアスな「Duke」、バックトラックにバックコーラスだけ付けられた「Maybe I Love You」、メロディはなかなかキャッチーで完成すればいい曲になったかもしれない「Stolen Away Your Heart」と4曲の未発表曲が続き、度肝を抜かれる。また「A Gallon Of Gas」はリードギターがすっかり落ちている代わりに演奏だけの間奏があり、トータルで40秒以上長い別テイク、「Art Lover」もバックコーラスなどバッキングを控えめにした別ミックス(「Kinks The Single Collection」とカップリングの「The Songs Of Ray Davies Waterloo Sunset」収録の別ヴァージョンではない)だった。ディスク6は8210月録音の「Come Dancing」のデモが注目だ。一部を1オクターブ下で歌ったり、いかにもデモ。最後は95年に録音された「To The Bone」のデモだ。まだ音は少ないものの、雰囲気は十分に出ており、完成度の高いデモと言える。しかしレア音源集としてみると、満足できるものではない。代表的な未CD化の音源としてRCA時代では未発表音源集『The Great Lost Kinks Album』収録の「Til Death Do Us Part」、女性のリード・ヴォーカルではなくレイ・デービス自身がリード・ヴォーカルを取ったシングル・ヴァージョンの「Scrapheap City」、イントロが短く女性コーラスをより多くミックスしたアメリカ編集のシングル・ミックス「Mirror Of Love」、さらに7曲もの未発表ライブ・再編集ライブ・別ミックスが入ったRCA時代の編集盤『The Kinks' Greatest Celluloid Heroes』は相変わらず残されたままだし、アリスタ時代では「Massive Reductions」のシングル用別ヴァージョン、ベスト盤で「Moving Pictures」の初期ヴァージョンなどが入った『Backtrackin' のトラック、間奏が8小節も長い12インチシングルの「Come Dancing」など、数多くある。ロンドン/MCA時代でもCDながらとっくに廃盤となり入手困難な編集盤『Lost And Found』に入っていた「Now And Then」の別ヴァージョンが残っているなど、枚挙に暇がない。どういう意図で編集したのか分からないが、Pye時代はいいとして、RCAのレアテイクがないところからRCAの協力は得られなかったようだ。アリスタからは未発表トラックがいくつも入っていたので協力は得られたのだろうが、この時代のトラックには知識が乏しかったのかもしれない。なお、日本盤は12,000円だが、イギリスのamazonで買うと送料込み39.21ポンド、約5,300円と最安なので、そちらで購入しよう。(佐野)

















 

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