2008年3月21日金曜日

☆Beach Boys:『All This Is That』(Sea Of Tunes/C0761)


とっくに終了したと思っていたSea Of Tunesの驚異のブートシリーズ、確かに『Unsurpassed Masters』シリーズは終わったのだが、先日紹介したデビュー時のレコーディング風景や初期音源などを集めた『In The Beginning/The Garage Tapes』と一緒に1970年代の未発表トラックを中心に集めたこの『All This Is That』も同時にリリースされていたのだ!

Sea Of Tunesだけあって音質は文句なし、ビーチ・ボーイズ・ファンは是非入手したいCDである。さて、順に紹介しよう。まずは「Time To Get Alone」の弦や管楽器が入ったほぼ完成されたバッキングトラックで、自然終止して終わる。「Country Air」はステレオミックスで、ヴォーカルが生々しく聴こえる。これも自然終止するまで入っていた。続く「Won't You Tell Me」は、唯一の問題トラックでSea Of Tunesらしからぬミスをしている。このテイクはサンレイズのデモで、曲を書いたのはマリー・ウィルソン、メロディ、ハーモニーも素晴らしくビーチ・ボーイズもかくやと思わせる出来栄えだが、ビーチ・ボーイズではない。ただサイレイズの名盤『Vintage Rays』に入っていたテイクより長く、自然終止して最後のしゃべり声まで入っているためそこは収穫だ。そしてブルース・ジョンストンの名作「Tears In The Morning」のカラオケが素晴らしい。ちゃんとコーラスまで入っていて、誰でも一緒に歌ってしまうような素晴らしいオケだった。大好きな曲なのでオケだけでも大満足。「Slip On Through」はカウントから入り、ホーンが小さくミックスされた別ミックス。「When Girls Get Together」は『Sunflower』時に録音されたカラオケ。「Cottonfields」はシングル・ヴァージョンのヴォーカル・オンリーで、見事なアカペラを堪能でき目玉のひとつ。そしてタイトルトラックの『All This Is That』だが、あの浮遊感漂う既発のヴァージョンよりヴォーカルがはるかにオンで力強く、間奏ではサックスのソロがフィーチャーされ、さらにフェイドアウトせずにきちんと歌い終わるなど、大幅に違いこれは目玉。「It's A New Day」は『So Tough』の時に録音されたデニスの曲だが、アップテンポのドライな曲想で、サビにデニスらしさが感じられる程度。1973年に録音されたブロンディ・チャンプリン&リッキー・ファターの「Hard Time」は、まったくビーチ・ボーイズらしさが感じられないアップテンポのロックナンバーだが、ビーチ・ボーイズと思わなければ曲は悪くない。以降は『15 Big Ones』より。ここからは少しはしょろう。別ヴァージョンは「Blueberry Hill」と「Palisades Park」で後者の方がよりプリミティブ。オケのみは「Had To Phone Ya」と「Just Once In My Life」、未発表曲はブライアンが書いた凡庸なインスト「Short Skirts」と、軽快なビート・ナンバーに仕上がった「Shake Rattle & Roll」、そしてマイクが歌う「Running Bear」。『Love You』からはバック・コーラスのみの「Let Us Go On This Way」と、その当時ボツになった「Sherry She Needs Me」、パッと終わって聴こえるが最後までの収録だ。「The Night Was So Young」はアカペラ。あとは『L.A.』から「Shortenin' Bread」の別テイクと『Keepin' The Summer Alive』からは「Oh Darlin'」の初期ヴージョン。そして嬉しい収録が未発表の『Adult Child』のハイライトトッラックである「Life Is For The Living」のカラオケで、このスウィングするバッキングに合わせて歌うと気分爽快になることうけあいである。そしてアメリカン・スプリングの「It's Like Heaven」のバックでブライアンが歌うデモ・ヴァージョン、『Pacific Ocean Blue』のアウトテイクで雄大なデニスの「Our Love」、1979年に録音された「Da Doo Ron Ron」の陽気なコピー、1980年にカールが書いた未発表曲で軽快な「Where We Are」で、全27曲をようやく紹介できた。さすがSea Of Tunes、聴きごたえがある。(佐野)



 



0 件のコメント:

コメントを投稿