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2002年12月30日月曜日

☆Beach Boys『An American Band』/Brian Wilson『I Just Wasn't Made For TheseTime』(Artisan/12584) DVD

かつて LD でリリースされたまま、長い間廃盤だったビーチ・ボーイズの映像の最高峰、『An American Band』が、ブライアンの『I Just Wasn't Made For These Time』(こちらもかつて LD 化、後にアメリカのみで DVD 化)と2イン1で DVD 化された。
当時 LD で購入された方は、同じものなので不要とも言えるが、 DVD の方が画質がいいし (特に当時の『An American Band』の LD は、ポニーキャニオン製なので劣化が早く、スノーノイズが多い。 LD の接着面が甘いのが原因でプレス工場がよくないと言われる)、なにしろ日本のamazonで消費税込みで1929円(送料はかからない)と非常に安いので、購入しておくべき1枚である。 LD を持っていない人は、必ず購入しないといけない究極の1枚。
これはファンの義務です。内容について『The Beach Boys Complete 2001』などで何度も書いているので詳しくは書かないが、ストーリー構成も、映像の貴重さも『Endless Harmony』を遥かに凌駕する内容である。
ここでしか見られない映像として主要なものは、インサイド・ポップでの伝説のブライアンの "Surf's Up" の弾き語り(66年!)を始め、アンディ・ウィリアムス・ショーでの "Their Hearts Were Full Of Spring" のアカペラと "Help Me Rhonda" 、ジャック・ベニー・ショウでの "California Girls" 、シンディグでの "Fun Fun Fun" と "Please Let Me Wonder" 、映画『Girls On The Beach』から "Little Honda" と "Girls On The Beach" 、『TAMI Show』から "Surfin' USA" と "Surfer Girl" 、3つのライブを巧みに組み合わせた "Dance Dance Dance" 、『Pet Sounds』からは "That's Not Me" の別ヴァージョンがかかったプロモや "Wouldn't It Be Nice" のプロモ、67年のハワイ公演での "God Only Knows" 、バッファロー・スプリングフィールドの "Rock'n'Roll Woman" をカバーした68年のイギリス公演、旧ソ連の「プラハの春」の弾圧直後に行われた68年のチェコ公演から "Break Away" 、ブライアンのホームスタジオから69年の "Time To Get Alone" 、そして驚くべき映像として『Smile』から "Do You Like Worms" と "Mrs.O'leary's Cow" のプロモと、初めて見る人には目もくらむ貴重映像のオンパレード。
改めて見て、この映画を始めた見たときの衝撃をまざまざと思い出してしまった。
もうひとつの『I Just Wasn't Made For These Time』は、モノクロの映像が素晴らしい効果を出したブライアンのスタジオライブ。セルフカバー集だが、アンプラグドに近いサウンドが素晴らしく、10曲が披露される。カールや、カーニー&ウェンディも参加し、感動的だ。
デビッド・クロスビー、グラハム・ナッシュなど多くのミュージシャンによるブライアンの才能を称えるコメントが挿入されるが、誇らしく思うのはファンなら誰でも共通だろう。(佐野)


2002年12月26日木曜日

☆Paul McCartney:『Back In The U.S. Concert Film』(東芝EMI/3063) DVD

先にレビューしたポールの最新ライブの DVD ヴァージョンがリリースされた。
この DVD 、 CD とは音源の素材が異なっていて、また選曲も一部異なり、別物と見た方がいい。
事実、1回目のアメリカツアー( CD は2回目のツアー)が素材らしい。
サウンドと歌に関してはレビュー
をお読みいただくとして、ビジュアル面で気づくのはポールの若さだ。
以前のような首の回りのたるみもなく、体もスリムになり、とても60歳とは思えない。声のはりもキーも昔を取り戻している。
そして "The End" のギターバトルなんて回りの若いギタリストを逆に圧倒していた。
本編では CD には入っていないサウンドチェックの "Matchbox" がもう、自家薬籠中の出来でとてもカッコいい。
そしてツアーの最終日、 "The Lond And Winding Road" を歌い始めた時に、観衆の女性が一斉にハートマークをかかげ、それに感激したポールが声が詰まって歌えなくなってしまうところは感動的だった。
ボーナスではさらにサウンドチェック用の "Bring It To Jerome" "Midnight Special" "San Francisco Bay" も収められているので、これは買いだ。(佐野)

バック・イン・ザ・U.S.-ライヴ 2002 [DVD]

2002年12月25日水曜日

Radio VANDA 第 33 回選曲リスト(2003/01/02)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 
特集My Favorite Soft Rock Part3

1. Sing Hallelujah ... New Seekers ('74) ※Tony Macaulay
2. Lead Us Not Into Temptation ... Pearls ('75) ※Tony Macaulay&Roger Greenaway
3. Alison Please ... Chris Kelly ('71) ※Tony Macaulay
4. San Diego ... Carl Wayne ('74) ※Tony Macaulay
5. The Humming Song ... Tony Burrows ('71) ※Tony Macaulay
6. Get Around Downtown Girls ... Johnny Garrett And The Rising Signs ('69) ※Greenaway=Cook
7. Runaround ... Steve Lawrence ('7?) ※Teddy Randazzo
8. Good Bless Joanna ... Neil Sedaka ('71)
9. Born To Be Bad ... Neil Sedaka ('78)
10. She Said Ride ... Tin Tin ('70)
11. Is That The Way ... Tin Tin ('71)
12. Missing You ... Popcorn Blizzard ('68) ※Produced by Pete Anders
13. Lonely River ... Popcorn Blizzard('68) ※Produced by Pete Anders
14. Love Is The People's Choice ... Smokey Roberds ('69) Produced by David Gates
15. Parking In The Kokomo ... Rondells ('65) ※Cyrkle
の前身。作曲はDanneman=DawesProduced by Jerry Ross
16.Foolin' Around ... Twinn Connexion ('68)

 

2002年12月18日水曜日

☆Mark Eric:『A Midsummer's Day Dream』(Rev-Ola/18)

 2002年の CD リイシュー大賞が決まった。そう、このアルバムなのである。
(アソシエイションの US 仕様『Just The Right Sound』も同時受賞。勝手に選びました)
マーク・エリックという無名のミュージシャンのこのアルバムを見つけたのが1995年頃。
『ソフト・ロックA to Z』などでプッシュし、中古盤店で値段がついてきて認知されてきたなとは思っていたが、こうして海外でリイシューされるとはファンとして嬉しい限りである。
聴いたことがない人はさっそく購入して聴いて欲しい。
1曲目の "California Dream" を聴けば、それだけでこのアルバムの価値が分かる。
流麗なメロディとサウンド、心地よいファルセットのハーモニー、サーフ・ロックの色を僅かに残しながら、見事なソフトロックに仕上がっている。
哀愁漂うアップの "Move With The Dawn" をはさみ、愛らしいワルツの "Laura's Changing" 、美しいバラード "Where Do The Girls Of The Summer Go" へつながるこの4曲のクオリティはどうだ。
そして6曲目の "Take Me With You" の巧みな転調、メロディ展開はマーク・エリックがいかに実力派のミュージシャンであったかを雄弁に物語る。
ライナーではリリース年が69年8月、時代はこういう音楽を求めていなかった上に、ノン・プロモーションだったこともあり、まったく売れずに終わったが、今その価値は増すばかりだ。
そして何よりも嬉しいのが、ボーナス・トラックである。未発表だった "Place For The Summer" はキャッチーなメロディ、サウンドとハーモニーが見事に一体化した傑作だったし、同じく未発表の "Build Your Own Dreams" は、転調が素晴らしい。
未発表曲が4曲、シングル・ミックスが4曲入ったボーナス・トラックは、高ポイントだった。
このアルバムを作った時、マーク・エリックはまだ19歳、順調に評価されていればと考えてしまったのは私だけではあるまい。(佐野)


2002年12月11日水曜日

キップソーン:『Montuno No.5』(HRCD-016)

  

 筆者が最近手に入れたお気に入りの一つに、ハリウッドのSF映画黎明期に活躍したレイ・ハリーハウゼンの DVD ボックスを挙げておきたい。 ハリーハウゼンはその機知に富んだアイデイアと途方もない時間を費やしてストップモーション・アニメ(コマ撮り)をクリエイトし多くの名作を後世に残した特撮の魔術師である。正にかのアルフレッド・ヒッチコックと並び称されてもおかしくない映画職人なのだ。 断っておくが、金満な産業主義に転じてしまった昨今のハリウッドとは一線を画し、本来人間に宿っている創造性を極限まで駆使してエンターティメントとして結晶させていた時代の話である。

 さて今回、同水準のレベルで紹介したいのがキップソーン(QYPTHONE)の『Montuno No.5』なのである。彼らは98年のデビュー以来ポストPizzicato Fiveのトップ・ランナーとして注目されているユニットで、これまでに3枚のアルバムを発表している。
 現在のメンバーは、CM音楽クリエイターとしても活躍するリーダーでコンセプトを握る中塚武 (彼は「SOFT ROCK ULTIMATE」の取材企画においてもレアで良質な非英語圏ソフトロックを多く紹介した事で記憶に新しいと思う。)、個性的なヴォーカリストとして又作詞面でも一流のストリーテラー振りを発揮する大河原泉と、曲のイメージを決定付けさせるサウンド・コーディネイト担当の石垣健太郎によって構成されている。

 彼らのサウンドを筆者流に端的に説明すると”ビザール(bizarre)にしてスイート(sweet)”なのだが、本作でも展開されている超up to dateなサウンド・プロダクションは、単に緻密な最新編集感覚だけを頼りにしたものではなく、コンセプチュアルでエキゾティズム豊かなサウンド・スケープ(音像風景)を重厚且つ必然的に構築した上でポップ・ミュージックとして完成させているところに志の高さと懐の深さを感じさせられるのだ。無論それは曲作りにおけるベーシックな部分でも同様であり、曲のフックに至るまでの見事なコード転回が聴く者の高揚感を増長させるのは言うまでもない。 これは極めてクリエイティヴでありながら決してエンターティメント性を失わないポップ・ミュージックの理想的な到達点といえよう。 

 とにかく一曲一曲の完成度が高く、アルバムの隅々までエヴァー・グリーンな風が流れているのである。全曲解説したいのを堪えながら重要曲を紹介していこう。 瑞々しいヴォーカルとコーラスが見事なミックスの定位により、詩情豊かな歌詞を引き立て独特のサウダージ感を生むボッサ・チューンの「On The Palette」。 クラブでもヘヴィー・プレイされるフランス・ギャルの「Le Coeur Qui Jazze」の大胆なカバーでその名も「ジャズる心」。これは原曲のフェイク・ジャズを THE DOUBLE SIX OF PARIS から三保敬太郎feat. 伊集加世子をも黙らせる、圧巻ともいえるソフィスケィテッドなスキャットで見事に解釈している。 
 『Montuno No.5』屈指の曲で、アフロ・キューバンとポリネシアン・リズムを有機的に複合させた独特のポリ・リズム・トラックのヴァースから、DR.BUZZARD'S ORIGINAL SAVANNAH BANDを彷彿させるエキゾティズム漂うジャイヴ感と甘美な旋律を持つフックが感動を呼ぶ必殺のダンス・チューンの「Melody」。
 ここではゲスト・パーカッショニストであるロクタンセイゴの超人的な Djembe(ジャンベ)プレイも聴きものだ。 キップソーンとしては新展開ともいえるムーディーなスカ・バンド・フォーマットをバッキングに、中塚によるリリシズム溢れる歌詞が淡い恋模様を綴った「愛がひとつ(One Love)」。 
 アルバムを強く印象付けているジャケット・デザインにも少し触れておこう。このノスタルジーを誘うブラック・カートゥーン的タッチのイラストレーションはアモーレ★ヒロスケによるものだ。 

 最後にこの素晴らしい傑作を作り上げたキップソーンのメンバー全員から特別にコメントをもらっているので掲載させて頂く。

 長引くデフレ不況、失業者の増加、北朝鮮の脅威、テロの頻発、アメリカの軍事支配など、世の中の動きなんて 全然考慮に入れずに作った11曲のラブソング集です。「音楽にメッセージを込めて」なんて言わずに、「最近の流行の音楽は」なんて言わずに、「音楽や芸術ってものは」なんて言わずに、ただひたすら、聴いた人達の気持ちが幸せになるように願って、丁寧に音を紡いでいきました。昔ながらの職人さんのような手作り感を感じてもらえたら最高ッス。
中塚 武

 ひたすら音楽を奏でる楽しさを味わいながら作りました。2年間、僕も待ち遠しかったQYPの新作です。ひたすら音楽を聴く楽しさを味わって下さい。
石垣 健太郎

 私は、何年か前から、なにか特別な感動を得たときに、下腹(丹田)で感じるようになった。いつもってわけではないのである。感動しても、反応しない時は全く反応しないのである。自分の体なのに理由づけができないのである。だからこそ私は、その私の丹田の反応をとても信じている。今回のキップソーンのアルバムの曲は素直に感動して歌ったのだが、それだけではないのです。歌ったときもそうだし、聴いてみても(時に体調のいい時に聴くと)丹田に響くのです。それって私にとってはかな~り特別なことなのです。類まれなことなのです。そんなことをちょっとでも気に留めて聴いてもらえたらうれしいです。
大河原 泉

(ウチタカヒデ)



☆Jools Holland & His Rhythm & Blues Orchestra:『Small World Big Band Volume Two More Friends』(Warner Music/0927494192)

 スクイーズのピアノ奏者だったジュールス・ホランドが率いるビッグ・バンドがバッキングを担当した豪華キャストによるこのシリーズの第2弾が登場した。
第1集にはジョージ・ハリスンの遺作を始め、エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、スティング、スティーヴィー・ウィンウッド、デイヴ・ギルモア、ポール・ウェラー、ドクター・ジョン、ビリー・プレストンなどがヴォーカル、ギターを担当したが、第2集の面子も凄く、レイ・デーヴィス、ロバート・プラント、ジェフ・ベック、ディオンヌ・ワーウィック、ボノ、トム・ジョーンズ、エドウィン・スター、ブライアン・フェリー、クリッシー・ハインド、マリアンヌ・フェイスフルなど大物が目白押しで、一歩も引けをとらない顔触れとなった。
その中で最も注目されるのが久々のレイ・デーヴィス先生の登場だ。
キンクスで使ったリフを使ってブラスの効いたラテン・ビートで登場するこの曲は、歌が始まるともう世界はお馴染みのキンキー・ワールド。
アリスタ以降のメリハリの効いたソリッドなロックンロールには、いつ聴いても引き込まれてしまう。
レイ先生、キンクスでもソロでもいいから早くアルバム出して!。(佐野)

ジュールズと素晴らしき仲間たち2

☆Various:『The Complete Monterey Pop Festival』(Criterion/167) DVD


19676月に行われたモンタレー・ポップ・フェスティヴァル。20万人を集めたこのイヴェントは翌年に映画になり、かつてはLDでも発売されていたロック・フェスティヴァルの草分け的存在である。
この3枚組のDVDボックスの内2枚は、当時上映された映画『Monterey Pop(フーの "My Generation" で、ピートがギターをネックだけ残して木っ端みじんにしてしまうもの凄いライブが見られる。私は大学の時、学祭でこのフィルムを見て興奮したもの) と、ジミ・ヘンドリックスとオーティス・レディングの出演シーンだけ集めた『Jimi Plays Monterey/Shake Otis At Monterey』で、これは既にリリースされていたもの。
残る1枚が目玉で『Monterey Pop The Outtake Performances』には初めて見る貴重なライブがギッシリと123分も収められていた。
まずはアソシエイションが登場。メンバーがロボットのような動きをするメンバー紹介ナンバー "The Machine" からメドレーで "Along Comes Mary" へ移る。エド・サリヴァンのスタジオ・ライブとは一味違う、迫力満点のスリリングなライブが堪能できる。まさにロック・バンドだ。日本調のメロディが出て "Made In Japan" のナレーションには苦笑い。
続いて『Bookend』のジャケットのように若々しいサイモン&ガーファンクルが登場する。ポールのギターのみで "Homeward Bound" "Sound Of Silence" を歌うが、二人の美しいハーモニーにただただうっとり。20万人の観客を、エレクトリックの楽器を頼らずに引き付けてしまう彼らの力は素晴らしい。ライトで真っ赤だった "The 59th Street Bridge Song" と違って普通のライトなのも
その後、アル・クーパーなどを挟んでバーズが登場、 "Chimes Of Freedom" , "He Was Friend Of Mine" , "HeyJoe" 3曲を披露する。デビッド・クロスビーがMCをやり、グループの中心という存在感を見せていた。ライブの実力もさすが。
ローラ・ニーロが "Wedding Bell Blues" "Poverty Train" を歌い、いくつか挟んで本盤のハイライトのひとつ、バッファロー・スプリングフィールドが登場する。この貴重なリアル・ライブ、 "For What It's Worth" を見ると、おやニール・ヤングがいない。そしてこの姿はデビッド・クロスビー?そう、この時はヤングはグループから離れてしまっていて、代わりにクロスビーが代役を努めていたのだ。
そしてフーだ。フーは "Substitute" , "Summertime Blues" , "A Quick One" 3曲をプレイ、圧倒的なライブを見せてくれる。なんといってもキース・ムーンのドラミングが凄い。目にも見えないほどのスティックさばき、何度もスティックが折れて宙を飛ぶシーンは圧巻だ。この頃のフーのエネルギーは他の全てを圧倒してしまう。
そしてママス&パパスがスコット・マッケンジーとの共演を含んで "Straight Shooter" , "Somebody Groovy" ,"San Francisco" , "I Call Your Name" , "Monday Monday" , "Dancing In The Street" の6曲を披露、このフェスティヴァルの顔だったことを示していた。
amazon.com
で送料を含めて$60、これは是非入手して欲しいボックスだ。(佐野)

The Criterion Collection: Complete Monterey Pop Festival [DVD] [Import]




2002年12月5日木曜日

☆Moon:『Without Earth & The Moon』(Rev-Ola/9)

ポップ・サイケの傑作、マシュウ・ムーア率いるムーンのアルバムが 2イン1でリリースされた。
このバンドは曲のほとんどを書いたキーボードのマシュウ・ムーアのカラーで染め上げられていたとみて間違いないだろう。
メロトロン、テープ操作というサイケ系の必須アイテムは使っているものの、明快なメロディとハーモニーを効かせたポップ度が高い曲も多く、特に68年のファーストはポップ・サイケの名盤のひとつになった。
ランニングするベースとハーモニーが絶妙にからみ、転調、リズム・チェンジとポップ・サイケの理想の1曲 "Mothers And Fathers" 、ハープシコードとストリングスのバッキングが美しい "Give Me More" 、ペダルのキーボードがポイントの哀調を帯びた "She's On My Mind" 、ドライヴするベースとドラムが魅力の "Walking Around" とクオリティが高い。
69年のセカンドの方はポップ度が下がりR&B度が増した分、華やかさが乏しくなった。
最後のキング・クリムゾン風の "Mr.Duffy" が力作(チープだけど)。ボーナス・トラックにはシングル・ミックスと、66-67年にリリースされたマシュウ・ムーアのソロ名義のシングルまで入り、コレクター仕様だ。
なお、グループのギタリストはビーチボーイズのメンバーだったあのデビッド・マークス。
彼の弁によるとレコーディングはスタジオに缶詰で非常につらかったそう。(佐野)

Without Earth & The Moon

2002年11月26日火曜日

☆Various:『Ed Sullivan's Rock'n'Roll Classics』(Rhino/R2 976082) DVD



99年に日本で LD ボックス( LD のみクリスマス・スペシャル番組のボーナス・ディスクあり) がリリースされ、その後昨年には DVD ボックス(5枚組)もリリースされたエド・サリヴァン・ショーだが、アメリカでリリースされたこの DVD ボックス(9枚組)は、なんと日本でリリースされたものとは選曲が違っていた。よってその違いのみ紹介しておきたい。
日本のものは99年に日本で LD ボックス( LD のみクリスマス・スペシャル番組のボーナス・ディスクあり) がリリースされ、その後昨年には DVD ボックス(5枚組)もリリースされたエド・サリヴァン・ショーだが、アメリカでリリースされたこの DVD ボックス(9枚組)は、なんと日本でリリースされたものとは選曲が違っていた。よってその違いのみ紹介しておきたい。
日本のものは99年12月29日のレビューを参照していただきたい。
さて、個人的な趣味で語らせてもらうが、アメリカ盤のみに入った主要なものを紹介すると、ビートルズの "All My Loving" 、ビーチ・ボーイズの "Wendy" (イントロのギターをカールが間違える)、ローリング・ストーンズの "Time Is On My Side" 、CCR "Fortunate Son" 、フィフス・ディメンション "Wedding Bell Blues" (寸劇調になっていて面白い)など。
逆に日本盤にしかないのがビートルズ "Help" (ジョンが歌詞を間違える)、ビーチ・ボーイズ "Good Vibrations" (よく見るカラーの映像)、ローリング・ストーンズ "Satisfaction" 、ヤング・ラスカルズ "Good Lovin'" 、 "Groovin'" (このボックスのハイライト。見事な演奏)、ラヴィン・スプーンフル "Daydream" 、スパンキー&アワ・ギャング "Sunday Will Never Be The Same" 、フィフス・ディメンション "Stoned Soul Picnic" があり、さらにバーズ、タートルズ、バンドは日本盤にしか入っていない。
トータルで見てどうみても日本盤の方が内容がいい。アメリカ盤はビートルズ、エルヴィス・プレスリーなど同じフィルムを2回使っているものが幾つもあり、Rhinoにしては首を傾げたくなるセレクトだ。
値段は日本盤ボックスが19,000円、アメリカ盤ボックスが20,608円 (どちらもamazon.co.jpの通販価格)とアメリカ盤の方が4枚も多くてほぼ値段が変わらないのは、高すぎる日本盤の価格を浮き彫りにする。
箱のレイアウトは文句なしアメリカ盤の勝ち。(佐野)


2002年11月25日月曜日

Radio VANDA 第 32 回選曲リスト(2002/12/05)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA
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日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

特集Christmas

1. The Now Sound Of Christmas ... Free Design('68)15US Air ForceChristmas Special
 
The Proper Ornaments(Alternate Version) ... Free Design('68)
2.Let All Mortal Flesh Keep Silence ... Free Desin('68)
3.Close Your Mouth(Alternate Version) ... Free Design('68)
4.Christmas Is The Day(Alternate Version) ... Free Design('68)
5.Shepherds And Wisemen ... Free Design('68)
 
Reprise:The Now Sound Of Christmas ... Free Design('68)
6.Little Saint Nick(Single Version) ... Beach Boys('63)
7.Frosty The Snowman ... Ronettes('63)
8.Christmas(Baby Please Come Home) ... Darlene Love('63)
9.Excelsis Deo
O Come All Ye Faithful ... Four Seasons('62)
10.Have Yourself A Merry Little Christmas ... Happenings('66)
11.Rudolph The Red-Nosed Reindeer ... Ventures('65)
12.Happy Xmas ... John Lennon & Yoko Ono('71)
13.Wonderful Christmastime ... Paul McCartney('79)
14.Father Christmas ... Kinks('77)
15.On Christmas Day ... Brian Wilson('00)



2002年11月22日金曜日

オオタユキ: 『第七話』(HRCD-015)

 

世の中にはまだまだ若い才能が隠れているものだ。 今回紹介する『第七話』は、若干23歳の新鋭女性シンガー・ソングライター、オオタユキのファースト・ミニ・アルバムである。 

彼女の紡ぎ出す作品は一人の女性の極めて等身大の姿を綴った歌詞と、オールド・タイミーなテイストが漂う、独特の気怠さを持つ曲とが毛糸で編み上げられた様な優しさと温かさに溢れている。その透明感溢れる歌声も相まって、マリア・マルダーからリッキー・リー・ジョーンズらをこよなく愛する往年のファンにも好意的に受け入れられるかも知れない。各曲、生のピアノとギターを軸に最小限の打ち込みを足した演奏なのだが、彼女の世界を誇大演出する事無く効果的に構成されている。

冒頭の「メロディー」の歌詞には一瞬ドキリとさせられるが、幼気さが残るプリミティヴな言葉使いには魅力を感じてしまう。 ヴォーカルに呼応する右チャンネルのレイジーなギターのフレーズも心に浸み入る素晴らしさである。アレンジ的にも最も完成されているのは「36°C」だろう。ピアノを基調にハモンド・オルガンのアクセントがドラマティックに曲を展開させる。 70年代初期の典型的SSWサウンドがソウル・フィーリングで彩られた様に幸福な融合性が瑞々しいのだ。 これは古くならないアレンジの典型であり、有能なシンガー・ソングライターを陰で演出するプロフェッショナルなスタッフの存在をひしひしと感じさせる。
(ウチタカヒデ)

2002年11月21日木曜日

☆GARO:『アンソロジー1971-1977』(ソニー/MHCL183-4)



ガロの素晴らしい作品集がリリースされた。
このアルバムはガロの全シングルAB面をシングル・ヴァージョンで順に収め、未発表曲、解散後のソロ作品まで追加した究極のベストである。
まず6曲に及ぶアルバムとは異なるシングル・ヴァージョン/ミックスだが、例えば "一人でいくさ" が3分3秒と少し長いなど、こういう細かい所まできちんと配慮されていた。コレクターにはたまらない。
注目の未発表曲は "姫鏡台" と同時期に録音されたというすぎやまこういち作の "春のボート" 。全編スリーパートのハーモニーで歌われるガロらしい爽やかな佳曲である。
ガロ作品ではソロはマーク、トミー、ヴォーカルが各3曲づつ収められた。すべて初 CD 化のレア音源ばかり。
どれも個性が出ていて楽しめるが、個人的ベストはマーク(堀内)のソロ。キャッチーなフックで冒頭から引きこまれる "風の館" 、スリーフィンガーのギターとファルセットのハーモニーが実に美しい "眠い夜明け" 、そして解放感のあるポップなメロディ、サウンドが見事な "銀河旅行" は、トーネイドーズの "テルスター" のフレーズが織り込まれて最高の出来。トミー(日高)は徐々に盛り上がる構成のポップチューン "時の流れに" 、ブラスをフィーチャーしたステファン・スティルス調の "My City Girl" 、初期のガロを思わせるメロウなバラードの "夏の終わりに" で、ガロ初期のトミーの圧倒的なポップセンスまでは発揮されていないが、どれもトミーらしい十分な出来だ。
ボーカル(大野)は彼らしい日本的な香りを色濃く漂わせた3曲。選曲はVANDAでもお馴染みの高木龍太さんで、ソロも含めた完全なディスコグラフィー、詳細な解説もさすがだ。(佐野)

GOLDEN☆BEST/GARO アンソロジー 1971~1977

2002年10月25日金曜日

Radio VANDA 第 31 回選曲リスト (2002/11/07)


Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 
特集:Rick Henn

1. Girl On The Beach ... Rick Henn ('73)
2. I Live For The Sun ... Sunrays ('65)
3. Andrea ... Sunrays ('65)
4. When You're Not Here ... Sunrays ('66)
5. Goodnitht Debbie,Goodnight ... Sunrays ('66)
6. Our Leader ... Sunrays ('66)
7. So Lovely ... Joy ('68)
8. (Let's Take A) Holiday ... Honeys ('68)
9. Soulful Old Man Sunshine ... Beach Boys ('70)
10. The Happy Girls ... Helen Reddy ('77) [from"Ear Candy"]
11. Midnight Skies ... Helen Reddy ('77) [from"Ear Candy"]
12. Thank You ... Helen Reddy ('77) [from"Ear Candy"]
13. Cholo ... Richard Henn & Company [from OST"A Sea For Yourself"('7?)]

 



2002年10月19日土曜日

☆Beach Boys:『Live At Knebworth 1980』(Eagle 155)

以前、 CD とビデオが日本で出ると予告されていながらビーチ・ボーイズ側からクレームで発売中止となり、ずっとおクラ入りだったビーチ・ボーイズの1980年、ネブワースでのライブ CD が突如、イギリスでリリースされた。
ということは権利関係がクリアーになったということ、DVD とビデオの番号も載っており、 "also available" と書いてあったが、検索してもまだ何も出て来ない。しかしこれも近日中のはず、楽しみに待とう。
さて、この1980年のネブワースのライブがファンの間で人気が高いのは、なんといってもブライアン、デニス、カール、マイク、アルにブルースと、メンバー6人が全て顔を揃えた貴重なライブだからだ。おそらく2回くらいしかライブでフル・メンバーは実現していないはず。
このライブ映像、プロモで見たことがあるのだが、映像で6人が揃った姿を見るとファンなら誰でも感動するはず。
収録されたのは "California Girl" から "Fun Fun Fun" まで全21曲。
デニスの歌う感動的な "You Are So Beautiful" やアルの美しい "Lady Lynda" 、そして充実した "Cottonfirlds" から "Heroes And Villains" のメドレーと、他ではなかなか聴けない貴重なレイブが嬉しい。
そしてその当時の最新盤『Keepin' The Summer Alive』からの2曲も見事な出来だ。
ブライアンの誕生日を祝って観客と一緒に歌う "Happy Birthday Brian" もあった。
音と映像が同時に撮られていることを意識してか、歌、ハーモニー、演奏ともに文句なし。
前年のジャパン・ジャムのライブとは段違いだなあ…。ライブ盤として一級品のこのアルバム、是非購入しよう。
ただひとつ残念なのは、 "Surfer Girl" の後のブルースの弾き語りの "I Write The Songs" がカットされていたこと。ブルースのソロがないと、全員参加という感じが乏しくなってしまう。
(佐野)

Live at Knebworth 1980

2002年10月8日火曜日

山本のりこ: 『CALOR』 (CLCD-6001)



果たして日本にはどれだけのボサノヴァ・シンガーが存在するのだろうか。 小野リサらを代表とするこのシーンの奥深さは、例えば街にひっそりと佇むカフェやレストランで、その歌声を聴く機会に恵まれない限り知り得ない世界なのかも知れない。 本稿で紹介する山本のりこもそんなシンガーの一人である。

彼女は90年に関西でヴォーカリストとしてその活動を開始する。その後東京に移住し、98年より現在の弾き語りのスタイルでマイペースにその活動を続けてきた。昨年は某アイスクリーム企業のCMBGMで、ヴォーカルとギターを披露していたので、知らず知らずの内に彼女のサウンドを聴いていた方もいるかも知れない。
今回の『CALOR』は山本にとって初のソロ・アルバムで、7曲のカバー曲と5曲のオリジナル曲から構成される。 先ずカバーではA・C・ジョビンの3曲に興味を惹かれるのだが、中でも一曲目を飾る「Dindi」から彼女の表現者としての真骨頂を感じさせられる。歌詞の深みが崇高に自然の優美さを讃えている。 一方モラエス・モレイラのカバー曲「PRETA, PRETINHA」の解釈も非常にユニークで、シンコペーションを強調し縦横無尽なフルートを配した独特なグルーヴを繰り広げている。 ここでは一流のセッション・ドラマーである石川 智のハイハット・ワークと吉田一夫のフルートが活躍する。 オリジナルでは「PASSARINHO」から「FIM DE VERAO」の流れが良く、変わりゆく季節を淡いタッチでスケッチし効果的なコントラストを見せている。後者のコーダ部では幽玄なトランペット・ソロとそれに絡む山本のスキャットが喩えがたい空間を創造している。

全体的なサウンドの特色は歌とギターの即ち、弾き語りのスタイルを重要視し、必要最低限の音をダビングしていくというシンプルなプロダクションである。これは音数を少なくする事によって生まれる"間"が聴く者にとって大きな影響を与えている事を如実に物語っているのだ。
(ウチタカヒデ)

saigenji :『SAIGENJI』 (HRCD-014)

 

 ブラジリアン・ミュージックをベースにした、全く新しいタイプの天才アーティストの登場である。 サイゲンジ(アーティスト表記:saigenji)はここ2年の活動において、その極めて個性的なステージで多くの観客を虜にしてきた唯一無二のパフォーマーだ。 そんな彼がライブの集大成として発表したのが今回の作品『SAIGENJI』である。 

 文頭でブラジリアン云々と書いたが、実はそれが彼のサウンドのファクターの一つに過ぎず、多用なスタイルで繰り広げられる曲の完成度には新人離れしたスケールを感じさせられるのだ。 原曲を超越してしまった感のあるキャロル・キングのカバー曲「It's too late」の他は全てオリジナル曲で構成されているのだが、それもアーティストとしての彼の強みであろう。
 その巧みなソング・ライティングには、一過性のシーンとの決別宣言ともとれる練熟さにより、一切の排他性を感じさせる事無く、ごく自然に聴く者の心を揺さぶるのである。 そしてこの "ごく自然に" という事の重要性が聴く毎に深く浸透していく。正にそんな作品なのだ。 
 あえてここでは曲毎の解説はしない方がいいだろう。聴いた者一人一人がそれがどんなに無意味な事か気付くからだ。

 最後にブラジル音楽界の至宝とも称された最高のベーシストで筆者とも親交がある、ルイザォン・マイア氏から本作へのコメントをもらっているので掲載させて頂く。

 Me lembra muito do Joao Bosco. Esta muito bom! Tem swing!
  (ジョアン・ボスコを思い出すよ。とても良い!スイングがある!)
  Luiza o maia (bassist,composer,exELIS REGINA BAND)


 (テキスト:ウチタカヒデ)


2002年9月29日日曜日

☆Lee Mallory:『That's The Way It's Gonna Be』(Rev-Ola CRREV6)

ミレニウムのメンバー、リー・マロリーの66年のソロ・シングル+66-68年に録音した未発表のアルバム用の音源集が、日本に遅れること2年で、イギリスからもリリースされた。
先のサンディ・サルスベリーと違って一部選曲が変えられているので、結局買うはめになってしまった。このCDの場合6曲が増えた20曲入り。
15曲から以降がそれだが、どれもちょっと乾いたロック系のナンバーで、カートと組んでいた時のアヴァンギャルドさや、華麗なハーモニーの魅力はそこにはない。最後の "I'm With You" には期待したのだが、ミレニウムと同じテイク(と私には聴こえる)だったのでガッカリ。コンプリートを目指す人以外には不要だろう。(佐野)

That's the Way It's Gonna Be

2002年9月25日水曜日

Radio VANDA 第 30 回選曲リスト (2002/10/03)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 

第一特集:Hollies

1. Bus Stop ('66)...未発表ライブ
2. I Can't Let Go ('66)...
未発表ライブ
3. Look Through Any Window ('65)
4. Carrie Anne ('67)
5. Have You Ever Loved Somebody ('67)
6. When Your Light Turned On ('67)
7. King Mindas In Reverse ('67)
8. Jennifer Eccles ('68)
9. Sorry Suzanne ('69)


第二特集:Terry Sylvester

10. End Of The Line ('74)
11. It's Better Off This Way ('74)
12. Travellin' Boy ('76)
13. Pick Up The Pieces Again ('74)
14. Silver And Gold ('78)

 

2002年9月11日水曜日

「SOFT ROCK The Ultimate!」(VANDA編/音楽之友社刊)

96年の刊行以来、6 刷を重ねたベストセラー「SOFT ROCK A to Z」を発展させ、タイトルのとおり「究極」の1冊に仕上げたソフトロック研究の決定版!
旧版と決定的に違うのは、すべてのアーティストのディスコグラフィーにアルバム収録曲まできちんと表記、そして全曲に作曲者名を入れるという、永久保存に相応しい資料集になった点です。
その膨大な資料を収めるため、総ページ数は 392P と、230P だった旧版の1.7倍にアップしています。
世界的にも何の研究もされてこなかった優れたアーティストの資料が一気に手に入れられるのは本書だけです。
アメリカ・イギリスのチャートももれなく入れているため、ポップ・ミュージックの字引としても使えます。また未 CD 化のアルバムのマークと CD 化の場合はレーベル名、そしてシングルでしか聴く事の出来ない曲にもマークを付けるなど、コレクティング・ガイドとしても完璧です。
掲載したアーティストは249、ワークスとしてまとめたコンポーザー/プロデューサーものは15と、セレクトも大幅増。
これ1冊で、メロディとハーモニーを主体にしたポップ・ミュージックは、「完成」です。(
佐野)




※最重要のSalt WaterTaffyのページが抜けて製本されてしまったので、この完成されたページを挟んでください。

2002年9月10日火曜日

☆Who:『My Generation:Deluxe Edition』(ユニヴァーサル 7120/1)

長く長くずっと待たされていた『My Generation』だが、やっと当時のプロデューサー、シェル・タルミーとの条件が折り合って、マスターからのリマスター盤がリリースされた。
まずはディスク1の『My Generation』本体から。このステレオのリマスターは、従来のものと別ヴァージョンとさえ言いたくなるほど驚異的に音質がアップし、全ての音がクリアーに聴こえるになった。
例えば "The Kids Are Alright" の長い間奏のギターソロは、ただ同じコードを鳴らしているだけのような従来版に比べ、ルート音を効果的に響かせたストロークになっていて感動的ですらあった。
"My Generation" と "A Legal Matter" はギターをオーバーダブする前のヴァージョン(初登場)で収録、ディスク2で聴きなれた従来のモノ・オーバーダブ・ミックスを収録していた。
ディスク2はシェル・タルミー・プロデュース・コレクションといった内容で、こちらもそれまでの『Who's Missing』,『Two's Missing』収録のものも音質向上が素晴らしい。
この中で最も注目は、4枚目のシングルの B 面用に用意されていて結局、未発表だった "Instant Party Mixture" だ。ただし "Instant Party(Circles)" とはまったく別の、フーとはとても思えないホワイト・ドゥ・ワップのおふざけナンバー。
"Anyway Anyhow Anywhere" はフランス盤の当時の EP のみに収録されていた別ヴァージョンが収められた。特に間奏以降のロジャーの歌い方がまったく違うので、これは誰でも別ヴァージョンと分かるはず。
"I Don't Mind" と "The Good's Gone" は最後まで収録されたフル・レングス・ヴァージョンが収録された。前者は1分以上、後者は30秒ほど長く、ロジャーの熱唱が楽しめる。
他には "My Generation" のカラオケがあるが、ロジャーのように歌うのはいかに難しいか痛感するはず。
そして "Anytime You Want Me" のアカペラ。B 面曲ながら、ヴォーカルは実に充実していた事が分かる。(佐野)

My Generation

2002年9月4日水曜日

☆Bards:『The Moses Lake Recordings』(Gear Fab 183)

サイケ系のレア盤のリイシューで知られるギアー・ファブは、アストラル・プロジェクション、オックスフォーズに続いて、今度はカート・ベッチャーとキース・オルセンがプロデュースをし、1969年にトゥゲザー・レコードからモゼス・レイクのクレジットでシングル「Ooubleck/Moses」(Together )1枚のみ残したモゼス・レイクの幻のアルバムをリリースした。
私が持っているトゥゲザーのレコーディング曲管理リストにモゼス・レイクの曲はアルバム1枚分クレジットがあったので、これでようやく陽の目を見た訳だ。
しかし今までトゥゲザー音源は幾つかのレーベルから集中的にリリースされてきたが、ギアー・ファブとは意表を突かれた。日本ではあまり店頭に並ばない可能性が高いので要注意。
 さてモゼス・レイクとはワシントン出身のバーズ (Bards) というグループの変名でのレコーディングだった。そしてプロデュースは先に書いたとおりカート・ベッチャーとキース・オルセン。
私はカートを「ソフト・ロックというよりポップ・サイケ系のプロデューサー」と書いていたが、その言葉を実証したのがこのアルバムだろう。
ポップであるがビートは十分、ファズ・ギターがガンガン入ってくるので、サイケ・ファンも満足。
カート仕込みのクールなハーモニーはこういうポップ・サイケにピタリとはまる。ファズ・ギターと縦横無尽のドラム、不安な雰囲気を醸し出す鋭いハーモニーが織り成す "Hollow Man" なんてまさにその代表格。
14分を超えるロック・オペラ "The Creation" はナレーションが入ったムーディー・ブルースのような導入部から R&B パート、ポップ・パート、そしてファズ・ギターとループするリフ、ナレーションが錯綜する主題部へ移行していく力作だった。
メロトロンが一瞬出てくるところも嬉しい。
しかしこのアルバムでベストの作品は、シングルになった "Oobleck" (かつてVANDAで "Dobleck" と書いた事があったが、これはトゥゲザー独特の装飾字体が読み取れなかったため) だ。つぶやきのような不気味なナレーションから、その不安をかきたてるようなリフが現れ、そしてポップでタイトなハーモニーとサイケなリフが絡み合う、充実したポップ・サイケ・ナンバーで、カートの本領発揮の1曲だった。(佐野)

The Moses Lake Recordings

Melting Holidays : 『Cherry Wine』 (Sucre SCPN2)


 メルティング・ホリデイズは作詞とヴォーカル、コーラスを担当するタケモトケイと、作、編曲とヴォーカル、コーラス、全てのサウンドの演奏、プログラミングを担当するササキアツシの男女二人からなる、60sテイストを21世紀のツールでクリエイトするポップス・ユニットだ。 結成は2001年で、同年7月に自主制作のミニアルバム『BRASS!!』を発表、その後インディーのsucreレーベルに所属することとなり、今回の1stフルアルバム『Cherry Wine』のリリースへと至った。

 因みに二人はこのユニットの結成以前に開催していた60sイベントでDJをするなど当時のサウンドへの拘りは只ならぬものだった様だ。実際ササキは以前からVANDAの熱心な読者らしい。つまりその世界に迷い込ませた弊誌の責任は計り知れないのだ(笑)。

 さて、筆者が彼らのサウンドと出会ったのは非常に偶然的で、本アルバムのタイトル曲" Cherry Wine" をネットの試聴サイトで聴いた事に始まる。
 先入観無しにハートを鷲掴みにされるメロディー、それを包み込むコード進行とアレンジの巧みさは正にソフトロックそのもので、打ち込みとはいえオーケストレーションの構成力は熟練の域に達する。この音は80年代にトット・テイラーが主宰していたコンパクト・オーガニゼイションにも通じる。ムーディーなオルガンと何とも喩えがたいストリングスの副メロの美しさや艶やかなピチカートのオブリガート、淡いヴァイブの刻み、ブラスとティンパニー、クラップの躍動感はあの時代に誘ってくれるサウンドなのだ。
 主役であるタケモトのヴォーカルもアンニュイの一言では済ませられないウイスパー・ヴォイスで、まろやかなサウンドのワイン・グラスに漂うチェリーをイメージさせ、さながら" 溶け出していく休日" を気取る佇まいなのである。 実は筆者はウイスパー・ヴォイスを安易に使う輩には目もくれずにいた節がある。何故なら、声帯域ばかりかヴォーカリストとしての表現力をも狭めかねない危険性に陥るからだ。 アンニュイなテイストばかりに気を配っては仏作って何とやらだ。しかしそんな心配も彼女の表現力の前には無用の様である。
 タイトル曲がアルバムのトップを飾り、続く" Snippy Girl" はモータウン的センスのリズム・トラックに今度はササキのいわゆるハーフ・ボイス・タイプのヴォーカルが乗る。時折フックで見せるファルセットも嫌みが無く爽やかな風の様だ。 他に気になるのは5曲目の" Umbrella" で、2台のギターによる16ビートのカッテングにドライヴするベース、マージー・ビート系のドラミングと、まるで80年代初期のスミスを初めとするネオ60sのサウンドを打ち込みで解釈したトラックに、タケモトの一人多重録音の美しいヴォーカルが漂うといった秀作だ。 この様にアルバム全体に聴き所は多く、彼らが影響されたサウンドを一つ一つ分析してみるのも面白い。 最後にこのアルバムを聴き終えて思ったのは、昨今忘れがちだった、伝統的なポップスの方程式を大事にしながら、独自のセンスをちりばめられる若く有望な才能に出会ったという事だ。

(テキスト:ウチタカヒデ)


2002年8月26日月曜日

☆コレクターズ:『More Complete Set The BAIDIS Yeasr』(テイチク 35829-30)

コレクターズがテイチクの BAIDIS で残した全音源は、この続編のディスク1で全て収録された。
ただこれだけなら、もともと1stから4thまで持っている我々にはどうでもいいものなのだが、本作のディスク2の内容を見ればビックリ、これはファンならマスト・バイのアイテムである。
まずは『Dance!』というインディ時代のコンピからスタート、ただしこの 2 曲は既に他で CD 化済み。
続いてはこれもインディ時代のオムニバスライブ盤『IKASU!!』から "僕はコレクター" "僕のタイムマシーン" の2曲。スリリングなライブだ。
さらにソンシートのみのリリースだったBike時代の "Too Much Romantic" 。ギターがペダルで鳴り続けるアレンジが新鮮で、コレクターズの実力を感じさせる1曲だった。
後は全て未発表音源ばかり。 "太陽が昇るまえに" の別ヴァージョン、87年から89年のライブが5曲、デモが6曲がそのラインナップ。
それぞれ素晴らしい出来なのだが、その中でも特筆すべきは我々にとって感涙のカバー2曲。
まずはフーの "Substitute" の完コピで、タイトな演奏と歌はカッコいいのなんの。
さらにスモール・フェイセスの "Itchycoo Park" のカバーが登場する。こちらも完コピながら、歌詞は日本語でどうかと思いきや出来は最高で文句なし。曲のポイントを全て押さえているね。さすがだ。
なお、タワーレコードで買うと非売品のビデオが限定で付いており、内容は "太陽はひとりぼっち" のプロモフィルムと、 "僕のタイムマシーン" のライブハウスでのライブの2曲。
後者は物凄いハイテンションの演奏で、最後はコータローがギターを床に叩きつける。デビュー前のコレクターズと思われ、これは必見だ。(佐野)

the collectors more complete set the BAIDIS years

☆Blue Mink:『Good Morning Freedom Anthology』(Sanctuary 530)



ロジャー・クックとマデリン・ベルのデュオ・ヴォーカルを基本としたグループ、ブルー・ミンクは、1969年の "Melting Pot" が全英3位に輝いて以来、1973年の "Randy" まで数多くの全英ヒットを生み出した人気グループだった。
そのヒットを書いたのは当然、ロジャー・クック=ロジャー・グリーナウェイの黄金コンビ。
本 CD は36曲と、今までで最も多く CD 化されたコンピであり、内 15 曲がクック=グリーナウェイ、それぞれが単独で作曲に入っているものを含むと18曲がこの 2 人の作品で、ファンとしてはこたえられない内容だった。ヒットしたクック色が強い "Melting Pot" や "Good Morning Freedom" は、ポップ色を帯びたソウルといった感じで、そういったグループなのかと思っていたら、こうやってまとめて聞くと R & B 色の強いファンキーなナンバーも多く、クック=グリーナウェイの作品でも "Get Up" のようなビート・ナンバーがよりいい出来だった。
クックのグループなのでグリーナウェイ色は薄いが、その中でキャッチーなフックが飛び出す "Randy" はグリーナウェイのセンス全開の快作だった。
またグリーナウェイがクックとではなくDundasなる人物と組んで作った "Where Were You Today" はポール・マッカートニー作といいたくなるような洒落た傑作で必聴。
2曲の未発表曲も含めれているがその内の1曲はなんとジョン・レノンの "Instant Karma" 。ほぼ完コピで、出来が特別いい訳でもないが、何度も聴いてしまった。何て言ったって "Instant Karma" だ、完コピなんて泣けてしまうよね。
(佐野)

Good Morning Freedom: The Anthology

☆Sandy Salisbury:『Falling To Pieces』(Rev-Ola/CRREV5)

 かつて TYO からリリースされていた CD とタイトルからジャケットまでまったく同じだが、このRev-Ola (Cherry Red) 盤は選曲が異なっている。
この英盤の目玉は初 CD 化の "The Best Thing" だろう。サンディ初のシングルで、明るくポップ、途中にアカペラパートもある快作でこの1曲のために買う価値がある。
他ではRev-Ola盤のボールルームの CD に入っていたそのB面の "All I Really Have Is A Memory" と、日本盤の『Sandy』に入っていたがかつてのPoptones盤には入っていなかった "Sweet Sweet Cinnamon" , "Every Minute Of My Life" , "Spell On Me" が収録されたが、なぜか "Married To The Wind "が削られてしまった。そのため、TYO盤も持っていなくてはならないので要注意。(佐野)

フォーリング・トゥ・ピーシズ

☆Turtles:『Happy Together』(Rhino R2 976000) DVD

何年か前にビデオ化されていたタートルズの決定的ヒストリー・ビデオがようやく DVD 化された。
スマサース・ブラザース・ショウでのカラーの "Happy Together" からスタート、前身のクロスファイヤーズの貴重な映像 (マーク・ヴォルマンが細い!) などライブの貴重な映像が満載。
その間にはフロ&エディ(=カイラン&ヴォルマン)のコミカルな掛け合いや他のメンバー、そしてP.F.スローン、スパンキー・マクファーレン、アラン・ゴードン=ゲイリー・ボナー、グラハム・ナッシュ、スティーヴ・スティルス、レイ・マンザレクなど豪華メンバーが次々インタビューで登場し、飽きさせることがない。さすがライノだ。
ライブではフロ&エディのコミカルなやり取りが面白い "You Baby" や "She'd Rather Be With Me" が楽しいが、歌としてはクラフト・ミュージック・ホールでの "Elenore" が、歌とハーモニー、演奏の全てが完璧で最高の出来。タートルズが実力派のグループであることを十分感じさせてくれた。
他では "Somewhere Friday Night" でヴォルマンがギターを弾いていたのもビックリ。
ヒストリー、音楽とも、最高の内容の DVD だ。(佐野)


2002年8月25日日曜日

Radio VANDA 第 29 回選曲リスト (2002/09/05)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 
特集:Sandy Salisbury

1. Lonely Girl ... Sagittarius ('68)
2. Magic Time ... Ballroom ('67-'68)
3. A Time For Everything ... Ballroom ('68)
4. The Best Thing ... Sandy ('67)
5. These Are The Children ... Tommy Roe ('68)
6. 5 A.M. ... Millennium ('68)
7. Do Unto Others ... Sandy Salisbury ('69)
8. Come Softly ... Sandy Salisbury ('69)
9. Goody Goodbye ... Sandy Salisbury ('69)
10. Baby Listen ... Sandy Salisbury ('69)
11. Measure Of A Man ... Sagittarius ('68-'69)
12. Falling To Pieces ... Sandy Salisbury ('67-'69)
13. A Little Bit Of Love ... Sandy Salisbury ('67-'69)
14. Bring Me On Back Home Again ... Sandy Salisbury ('67-'69)
15. Navajo Girl(Demo) ... Sagittarius ('68-'69)
16. Rag Doll Boy ... Naked Truth ('70) ※Vocal
Tony Burrows

 

 


2002年8月13日火曜日

☆Various:『Call Me-The Songs Of Tony Hatch』(Sanctuary/536)

イギリスを代表する、いやイギリスの最高峰の作曲家の一人であるトニー・ハッチの待望の作品集がリリースされた。
トニー・ハッチに関しては濱田高志さんが専門だったので、私はおまかせ状態だったのだが、パイの音源が60曲も入って2000円もしないこのコンピをさすがに見逃す訳にはいかない。
 ハッチはパイ・レコードの作曲家だったのでパイの権利を持っているサンクチュアリーだけがベストのものが作れるのだ。
モンタナスやサンズ・オブ・タイム、トゥ・オブ・イーチなど本当にいいものばかりだが、やはり最高のものはジャッキー・トレントとペトラ・クラークの2人に集中する。
一気に心をつかまれる高揚感に満ちたフックをいとも簡単に生み出せるのはトニー・ハッチとトニー・マコウレイだけだろう。
サウンドのヴォリュームもあるし、そのセンスの良さでトニー・ハッチはバカラックを超えている。とにかく絶対買うべきコンピである。(佐野)

Call Me: Songs of Tony Hatch