サイケ系のレア盤のリイシューで知られるギアー・ファブは、アストラル・プロジェクション、オックスフォーズに続いて、今度はカート・ベッチャーとキース・オルセンがプロデュースをし、1969年にトゥゲザー・レコードからモゼス・レイクのクレジットでシングル「Ooubleck/Moses」(Together )1枚のみ残したモゼス・レイクの幻のアルバムをリリースした。私が持っているトゥゲザーのレコーディング曲管理リストにモゼス・レイクの曲はアルバム1枚分クレジットがあったので、これでようやく陽の目を見た訳だ。しかし今までトゥゲザー音源は幾つかのレーベルから集中的にリリースされてきたが、ギアー・ファブとは意表を突かれた。日本ではあまり店頭に並ばない可能性が高いので要注意。
さてモゼス・レイクとはワシントン出身のバーズ(Bards)というグループの変名でのレコーディングだった。そしてプロデュースは先に書いたとおりカート・ベッチャーとキース・オルセン。私はカートを「ソフト・ロックというよりポップ・サイケ系のプロデューサー」と書いていたが、その言葉を実証したのがこのアルバムだろう。ポップであるがビートは十分、ファズ・ギターがガンガン入ってくるので、サイケ・ファンも満足。カート仕込みのクールなハーモニーはこういうポップ・サイケにピタリとはまる。ファズ・ギターと縦横無尽のドラム、不安な雰囲気を醸し出す鋭いハーモニーが織り成す"Hollow Man"なんてまさにその代表格。14分を超えるロック・オペラ"The Creation"はナレーションが入ったムーディー・ブルースのような導入部からR&Bパート、ポップ・パート、そしてファズ・ギターとループするリフ、ナレーションが錯綜する主題部へ移行していく力作だった。メロトロンが一瞬出てくるところも嬉しい。しかしこのアルバムでベストの作品は、シングルになった"Oobleck"(かつてVANDAで"Dobleck"と書いた事があったが、これはトゥゲザー独特の装飾字体が読み取れなかったため)だ。つぶやきのような不気味なナレーションから、その不安をかきたてるようなリフが現れ、そしてポップでタイトなハーモニーとサイケなリフが絡み合う、充実したポップ・サイケ・ナンバーで、カートの本領発揮の1曲だった。
(佐野)

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