2000年2月28日月曜日

☆Brian Wilson:『More Andy Paley Sessions』

 アンディ・パレイ・セッションの続編ということだが、ここでは冒頭の7曲が初登場の音源。まずその名も「Frankie Avalon」が素晴らしい。さりげない転調にブライアンのセンスの良さが発揮されている。続く「What Rock'n'Roll Can Do」はスウィング感が心地良い。そして「Dancing The Night Away」は演奏がずっと続きここままかと思うと後半にカールのリード・ヴォーカルによるビーチ・ボーイズのコーラスのサビが出て、心を奪われる。その他はシンプルなロックナンバー「Goin' Home」「God Did It」「Elbow 63」とブライアンお得意のB級曲「Some Sweet Day」がそのラインナップ。これ以外の曲は『Ladylocked』からの曲とCDRだった『Andy Paley Sessions 1996』のみ入っていた「Everything I Need」のデモなどが入っていた。今度はプレスCDなので、その分でもいいかも。(佐野)

☆Barry Mann:『Survivor』(BMG/BVCM37105)

ついにバリー・マンの最高傑作がCD化された。それも嬉しいことにアメリカ盤のセカンド・プレスや日本盤LPではカットされてしまった「Nothing Good Comes Easy」が入り、さらにアルバム未収録だった「Woman Woman Woman」も入ったRCA-Equinoxのコンプリート作品集だ。バリー・マン・ファンはもちろん、このプロデュースをしたブルース・ジョンストンのファン、そして全てのポップ・ミュージックを愛する人はこのアルバムを必ず聴くべきである。冒頭のC&Wタッチのロック・ナンバー「Survivor」、ピアノの弾き語りによる美しく、艶やかな表情のある名バラード「Don't Seem Right」、バリー・マンの力強い歌声に胸が熱くなるゴスペルタッチの「I Wanna Do It All」、一転伸びやかで雄大な「Taking The Long Way Home」、スピリチュアルな「I'll Alawys Love You」へと続く、LPではA面だったこの5曲の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。メロディの良さ、サウンドの良さだけはもちろん、バリー・マンのヴォーカリストとしての表現力に聴く我々は感動で息が詰まってしまうほど。名盤とはこういうアルバムを言う。ライナーや、他誌のレビューではこの前作の『Lay It All Out』がベストと評されているが、いかにもSSW風の枯れた雰囲気がある前作より、ウェスト・コーストの爽やかさ、そして華やかさが感じられる本作の方が私にとってはずっと好き。東の才能と西の才能が見事に溶け合っている。(佐野)
サヴァイヴァー

2000年2月27日日曜日

☆Symbols:『The Best Part Of The Symbols』(EM/EM1005CD)




 お待ちかね、待望のエム・レコードの第5弾は60年代のイギリスのハーモニー・ミュージック・シーンをハーモニー・グラスと共に飾るシンボルズの登場だ。ハーモニー・グラスと同じエセックス出身の彼らはミッキー・モストに見いだされ、コロンビアから65年にデビュー、2枚のシングルを出した後、設立されたばかりのプレジデント・レーベルに移る。そして66年にハプニングスのカバー「See You In September」のカバーをリリースするのだが、これ以降72年までの8枚のシングルとアルバム1枚の全音源(シングルと全て重なっているが)に未発表8曲をプラスした全24曲がこのCDに一挙収録された。内容は素晴らしいのひとこと。『Rag Doll』の頃の華麗なフォー・シーズンズのハーモニー。そこにブリティッシュ・ビート・グループの力強いビートが加わった。ビーチ・ボーイズやアソシエイションのような精緻なハーモニーではないが、ハーモニーの解放感が抜群で、シンボルスにはフォー・シーズンズやハプニングスと同様のハーモニーのセンスがある。このセンスは非常に大切で、例えばムーディー・ブルースはここが欠けているのでいくら重ねてもハーモニーに解放感がない。A面になったロネッツ・ナンバーの「The Best Part Of Braeking Up」、「Do I Love You」やフォー・ーシーズンズのカバー「Bye Bye Baby」などの有名曲のカバーもいいが、個人的にはオリジナルのシングルB面曲「To Make You Smile Again」、「The Gentle Art Of Loving」や、オリジナルのA面の「A Lovely Way To Say Goodnight」の方が全盛期のハプニングスに通じるポップ・センスが溢れていて個人的に好み。(佐野)

2000年2月26日土曜日

☆スパイダース:『ザ・スパイダース・ストーリー』(テイチク/25605)

67年にリリースされたスパイダース全盛期の公式ベスト・アルバムが、こうしてそのままの形でリイシューされた。曲目としては12曲のオリジナル・ヒットと12曲のカバーものも組み合わせですべて今までのCDに収録された曲ばかり。ただ曲間にメンバーの雑談がふんだんに入り、これはファンにはたまらない。オリジナル・ヒットの選曲にも「恋のドクター」が入るなどベスト・チョイスで、じっくり聴くとかなり楽しめるアルバムと言えよう。スパイダースに関しては、未発表曲や他社の音源など、『ウルトラ・レア・トラックス』が計画されているので、これはまだまだ目が離せないぞ。(佐野)

2000年2月21日月曜日

☆Free Design:『The Best Of Free Design』(テイチク/TECW20898)




テイチク6枚、徳間ジャパン1枚の計7枚で全音源のCD化が完成したフリー・デザインなので、このベスト盤に新規の音源は入っていない。それどころか全17曲のうち15曲がオリジナルではないカバー曲という、オリジナル中心のこのグループからすればまったく不思議な選曲なのである。ところがこのベスト盤は、VareseやSiestaと違って誰か他の選者がいるのではなく、フリー・デザインの楽曲管理をしているS.Zynczakが選んだものなのだ。この人は当時からフリー・デザインに曲を提供するなど謎の人物なのだが、最も深く関わってきたのは事実。となると、クリス・デドリックの類い希なるアレンジのセンスを伝えるためにあえて比較ができるカバー・ナンバーを選んだのかもしれない。ジャケットはとてもかわいい。(佐野)

2000年2月18日金曜日

「HARMONY POP 」(VANDA編/音楽之友社刊)


ビーチ・ボーイズ、フォー・シーズンズ、テンプテーションズ、PPM、フォー・フレッシュメン、フィフス・ディメンション...。ロック/ポップス、ソウル、フォーク、ジャズ、そして日本のハーモニー・ミュージックの主役218アーティストを一挙紹介。さらに優れたハーモニーの傑作9曲のコーラスを採譜し、そのコーラス・ワークを解析しています。カラーページはハーモニー・ミュージックの傑作アルバムを当時の帯付き日本盤で紹介。(カラー96枚、うちビーチ・ボーイズ41)(佐野)










2000年2月14日月曜日

☆Bobby Hebb:『Sunny』(Vivid Sound/VSCD736)

 CD時代になってリイシューが進むジェリー・ロスのワークスだが、残された数少ない未CD化のアルバムの中でも待望の傑作がリリースされた。この黒人歌手ボビー・ヘブは、自ら書いた「Sunny」が66年に全米2位の大ヒット、一躍知られるようになったものの続くヒットがなく、ボビー・ヘブではなく、「Sunny」だけが残った。そしてジェリー・ロスにとっては「Sunny」はプロデューサーとして始めてのメガ・ヒットであり、彼をステップ・アップさせるきっかけになった記念すべき曲となる。この「Sunny」は、哀愁を帯びたマイナー調の心引かれるメロディを持ち、いかにも日本人好みの名作。ただジェリー・ロス作品の中では異色の曲だろう。そしてこのヒットを受けて作られたのが本作なのだが、この中にはジェリー・ロスらしさが出た傑作が多く含まれていた。黒人シンガーだけあってR&Bタッチの曲が多くそれはそれで魅力的なのだが、やはりこちらが望むのは華麗なジェリー・ロス・サウンドだ。そういう観点ではスウィング感のあるジャズ・タッチの洒落たナンバー「Where Are You」がいい。ミディアム・テンポのバリー・マン作の「Good Good Lovin'」のカバーも、ゆったりとしていて心地よい。なんといってもハイライトはロスとアレンジャーのジョー・レンゼッティとの共作「Love Love Love」。力強いビートと美しいピアノの響きが見事にマッチし、高揚感のある傑作中の傑作だ。またボビー・ヘブの声は、ジェイ&ザ・テクニクスのジェイ・プロクターよりもくせがなく、様々なタイプの曲によく溶けこんでいた。(佐野/Special  Thanks 宮木)
Sunny

2000年2月5日土曜日

☆Beach Boys:Greatest Hits Vol.3:Best Of The Brother Years 1970-1986(Capitol/72435-24511-2-8)

 いよいよ70年代以降のReprise,Caribouから出ていた音源がBrotherとして一本となって、Capitol/EMIからリリースされることになった。オリジナル・アルバムのリイシューが待ち望まれているが、その前にこのベストがリリースされた。全20曲、「ベスト」という名の通り、ヒット曲は大方収められ、無難な選曲だ。ただこれはアメリカ仕様であって、日本などの他の国はワールド・ワイド仕様の別選曲になる模様。2月2日現在、まだこちらの選曲が決定していないので、日本などのリリースは4月以降になりそうだ。この手のベストはチャート・インした曲を全部入れるなど明確なコンセプトがないと結局は趣味の問題になるので、みんなが納得するものなどできるはずがない。よって選曲についてはウダウダ言う気はないが、デニスの曲が名曲「Forever」も含め1曲も入っていないのはいただけない。音質は良く、以前のソニーのCD(ドイツ盤『Ten Years Of Harmony』を除く)化では、アルバム・ヴァージョンや別テイク、イントロが欠けたテイクに差し替えられた「Rock And Roll Music」や「Come Go With Me」「Peggy Sue」「Honkin' Down The Highway」は本来のシングル・ヴァージョンやオリジナル・テイクに戻り、「Susie Cincinnati」は『15 Big Ones』以前のシングル・ヴァージョン、「California」もシングル・ヴァージョンが収められた。ちなみに「It's OK」のシングル・ヴァージョンとは2%スピード・アップしたヴァージョンのこと。続くオリジナル・アルバムもすべて本来のテイクに戻るのは間違いなさそうで、それは朗報になるだろうが、逆にテイク違いの入っているソニーのCDはコレクターズ・アイテムになるんだろうなあ。以降のリイシュー5タイトルは5月と言われていたが、7月が有力のようだ。気長に待とう。(佐野)
The Greatest Hits Vol. 3: Best of the Brother Years

2000年2月3日木曜日

☆Barry Mann:『Soul And Inspiration』(Atlantic/83239)

 日本盤が出るまで待とうとは思っていたものの、「いいぞ、これ」という廻りの合唱に耐え切れず輸入盤を買ってきたが、早く手に入れて正解だった。前のアルバムから20年、ずっとバリー・マンの声を聴いていなかったので、大好きなだけに不安だった。あの味わいのある彼の声がブライアン・ウィルソンのように変わってしまっていたらどうしよう、ポール・マッカートニーだって昔のような声はずっと出ていないしと、聴くのが怖かったのだ。ところが嬉しいことに変わっていなかった。本当に驚いた。バリー・マンの聴かせどころとも言うべきあのめったに聴けないファルセットも変わっていない。やはり私にとってバリー・マンは最高の作曲家であるとともに最高のシンガーだった。確かにデビュー時を除いて、ソロでヒットはない。歌手を失格した男じゃないか、そんなことをいう奴は音楽を聴く耳を持っていない奴だ。このアルバムは全11曲、みな馴染みの、バリー・マンの代表曲が並ぶ。それを歌う彼の声には、人生の機微を知りつくした男の、年輪のひとつひとつが刻みこまれ、私達の心をゆさぶってくる。テイストでいえば、『Survivor』より『Lay It All Out』に近いいぶし銀の輝きだ。個人的に気に入ったのは、浮き浮きしてしまうほど軽やかなドリー・パートンの78年の大ヒット「Here You Come Again」、エモーショナルなリンダ・ロンシュタット&ジェームス・イングラムの87年の大ヒット「Somewhere Out There」、華麗な転調が心地よいクインシー・ジョーンズの81年の大ヒット「Just Once」。メロディがみな最高のクオリティだけに、ピアノの弾き語りをベースにしたシ ンプルなサウンドが見事に映える。その他の曲ももちろん素晴らしいので、みな紹介しておこう。ご存じライチャス・ブラザースの「You've Lost That Lovin' Feelin'」(65年)「Soul And Inspiration」(66年)、ドリフターズの「On Broadway」(63年)、リンダ・ロンシュタットの「Don't Know Much」(89年)、B.J.トーマスの「Rock And Roll Lullaby」(72年)、「I Just Can't Help Believing」(70年)、アニマルズの「We Gotta Get Out Of This Place」(65年)、ダン・ヒルの「Sometimes When We Touch」(78年)。これらの曲に、バリー・マンへの深い敬愛を示すキャロル・キングなどの豪華なメンバーがデュオで加わっている。私はメロディを軽視したような自己満足型のSSWは好きではないし、甘いだけのAORも好きではない。バリー・マンこそ、理想のポップ・ミュージックだ。なお、バリー・マンの1Pの序文以外、あとはすべて歌詞カードなので、輸入盤で十分。(佐野)
Soul & Inspiration

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