1999年8月27日金曜日

☆Eternity's Children: Eternity's Children (Rev-Ola/062)




 遂に待望のエタニティーズ・チルドレンのファーストとセカンドを2イン1にした全曲集(A&Mを除く)がCD化された。このCDを買わない人は、ソフト・ロック・ファンのみならずポップ・ファンではないと断言してしまいたいほど、それほど価値ある、素晴らしいアルバムなのだ。今年のベスト・リイシューはこのアルバムで決まりだろう。特にセカンドの『Timeless』の復刻は快挙。このアルバムは『Soft Rock A to Z』で最高点を付け、VANDA本誌でも特集を組み何度もプッシュしたことによって、多くのリスナーの探求盤になった。そして日本のリスナーからの熱い要望でアメリカではディーラーをあげてこのアルバムを探していた。しかしカナダでしか発売されなかったウルトラ・レア盤なので、入荷したのはほんの僅か。この凄さをなんとか伝えたいと切歯扼腕していたがこれでやっと解消だ。さて前置きが長くなったので内容に移ろう。まず1~10曲目はカート・ベッチャーとキース・オルセンがプロデュースを担当した68年のファースト『Eternity's Children』から。カート自身がコーラス・アレンジをして、彼らの唯一のヒット(69位)になった「Mrs.Bluebird」は、サイケとソフト・ロックの折衷とも言える仕上がりで、その重なり合うコーラス・ワークと唸るギターのからみはさすがカート、このアルバムのハイライトになった。ただこのファーストは全体的にサイケデリック・フレイバーを帯び、白昼夢を見ているような作品が多い。その中で美しいボサノヴァ「My Happiness Day」と軽快なポップ・ナンバー「Lifetime Day」が光っていた。そして11~20曲目がゲーリー・パクストンがプロデュースをしたセカンド『Timeless』。冒頭の「I Wanna Be With You」から「Nature's Child」、「The Other Side Of Me」、「Look Away」、「Christina In My Dreams」へと続くアルバムA面の5曲のクオリティはため息がでるほど素晴らしい。美しく洒落たメロディライン、それを引き立てるハイトーンのリードヴォーカルと軽快なコーラスワーク、爽快なビートの心地よいバッキング、この3つが一体となり、数あるソフト・ロックのアルバムでも断トツの仕上がりとなった。アルバムB面でも続く「Sunshine And Flowers」と「Till I Hear It From You」は同様の作品で、内容的には文句なしの出来だったが、この68~9年ではこういったポップ・ミュージックがヒットするにはまだ早すぎた。21~25曲の5曲はTowerとLibertyからのアルバム未収録曲(Charles Ross3名義を含む)。カートの曲もあるが、朗々としたタイプの曲が多くなり期待したほどのの出来ではない。詳細な解説も読みごたえがある。こうしてこのCDで残ったのはA&Mからリリースされたデビュー・シングル「Wait And See/Rumors」のみ。このうち「Rumors」は『Timeless』タイプの曲なので是非これも機会があれば聴いてもらいたい。(佐野/Special thanks to Joe Foster & Creation Records)
Eternities Children

☆Sunshine Company: The Sunshine Company (Rev-Ola/061)

 同時に発売されたのが、このサンシャイン・カンパニー。カリフォルニア出身の女1人、男4人のフォーク系のグループで、67~68年の間に『Happy Is』、『The Sunshine Company』、『Sunshine And Shadows』の3枚のアルバムと「Happy」(50位)、「Back On The Street Again」(36位)、「Look Here Comes The Sun」(56位)と3曲のスマッシュ・ヒットがあり、本来ならソフト・ロックの代表的なグループになっても不思議はなかったが、いかんせんプロデューサーのジョー・サラセーノのセンスがあか抜けなかったので、爽やかではあるが「抜けた」雰囲気がなく、洗練されていなかった。それまでの古いフォークのスタイルから脱却できなかったのだ。この中に収録されたカート・ベッチャー作の「If You Only Knew」、「I Just Want To Be Your Friend」やロジャー・ニコルスの「Just Beyond Your Smile」といった比較しやすい曲は他に比べ出来はよくない。ただヒット曲や、レス・バクスターの「It's Sunday」と美しいボサ・ノヴァ・スタイルの「Way &Means」は十分に聴く価値がある。CDは23曲入りで、ファーストから8曲、セカンドから7曲、サードから8曲選曲されている。ロジャー・ニコルスの「To Put Up With You」が入らないなど残念なところもあるが、サンシャシン・カンパニーはこのCD1枚だけあれば十分だ。(佐野/Special thanks to Joe Foster & Creation Records)
The Sunshine Company

1999年8月19日木曜日

☆Little Anthony & The Imperials: I'm On The Outside/Reflections (BGO/447)

VANDAは長くテディ・ランダッツォを一押しでやってきたが、最近、山下達郎氏がFMで特集したこともあってその人気は急上昇しているらしい。嬉しいの一言だが、その波に合わせたかのように、テディ・ランダッツォのベスト・ワーク、リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズの待望の未CD化のアルバムがCD化された。、タイトルは『Reflections』、彼らの5枚目のアルバムで、最高傑作といってもいいだろう。2イン1のカップリングは既にCollectableからCD化された『I'm On The Outside』、こちらは3/19のこのコーナーのレビューをお読みいただくとしてここではパス。さて、『Reflections』のトップを飾る「Don't Tie Me Down」だが、クリアな音質で聴くと、それまで聴こえなかったバックコーラスが聴こえてきて、テディの綿密なプロダクションにまず驚かされてしまう。次の雨垂れのような幻想的なバックコーラスに乗った「My Love Is A Rainbow」は本当に美しく、アルバムのベスト・ナンバーの1曲。彼らのアイデンティティと言えるドゥ・ワップ調のバラード「If I Remember To Forget」「I LoveYou」にも酔わされてしまう。そしてアップテンポの「Trick OrTreat」は、止まることをしらないような魅惑のメロディ・ライン、コードと溶け合っていく引き伸ばされたコーラスと、文句なしのベスト・ソングになった。続く「Lost InLove」も洒落たメロディとコーラス・ワークでこれも傑作である。他ではラテンの「KeepIt Up」、トニー・マコウレイ調の「Yesterday Has Gone」、ドラマティックなバラード「Hold On To Someone」とバラエティに富んでいて、そのほとんどすべてを作曲し、プロデュースしたテディ・ランダッツォの才能に改めて驚かされた。(佐野)

1999年8月18日水曜日

☆Chris White: Mouth Music (EM/1006)




待望のエム・レコードの新作はクリス・ホワイト。60年代から目立たない音楽活動を続け、76年の「Spanish Wine」が全英28位とようやくヒットしたものの、どんなに素晴らしいハーモニー・ミュージックを生み出していてもその後のパンク・ロックの嵐の中ではヒットを生み出すことは出来ず、70年代の終わりには自信をなくして音楽業界から引退してしまった幻のミュージシャンなのだ。しかしこのCDを聴いて欲しい。すべてのビーチ・ボーイズ・ファンならこの歌声、ハーモニー、メロディに一瞬で虜になってしまうだろう。こんな素晴らしい音楽がまだ知られずにあったなんて本当に信じられない。クリス・ホワイトには作曲からプロデュースをこなせる実力があった。まず基本となるメロディだが、これが美しい。軽快で洒落たメロディも書けるし、巧みな転調によって解放感に満ちている。そしてクリス・ホワイト自身の声が、ハイトーンでかつ細すぎず、太すぎずハーモニー・ミュージックには最高の声質を持っていた。肝心なハーモニーは文句のつけようがない。クリス・ホワイトはブライアンのファルセット・パートからマイクのバス・パートまで出せる広い音域を持っていて、コーラスの中に強力なバス・ヴォイスを入れるので、ビーチ・ボーイズと同じく広がりと暖かさ、ふくよかさがある。この点はトニー・リヴァースやクリス・レインボウをも上回る。このCDは76年のアルバム『Mouth Music』にアルバム未収録曲、ラジオ・ジングル、そして未発表曲を入れた28曲の仕様で、クリス・ホワイトのすべてをこの1枚で知ることが出来る。曲はみな素晴らしい。ヒットした「Spanish Wine」もいいが、ブライアンの繊細さが感じられるような「Driftin'」、軽快で洒落た傑作「She's Only Dreaming」,爽やかな「Child Of The Sun」、未発表の美しいミディアム・バラード「Repscallion」など今のビーチ・ボーイズでは作り出せないであろう、我々の理想が結実したような曲だ。とにかくこのCDは買わないと絶対後悔する。自信を持ってお薦めしたい。(佐野)

1999年8月17日火曜日

☆Nino & April: All Strung Out (Varese Sarabande/6036)

 ニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンスの兄妹デュオ、ニノ&エイプリルの4枚目のアルバムで、最高傑作の『All Strung Out』がCD化された。このデュオは、ニノの洒落たアレンジとその軽妙なハーモニーが売り物だったが、このアルバムでは、ニノと同じフィル・スペクターの下で働いていたジェリー・リオペルと組んだことで、その幅がさらに広がっている。その成果が共同プロデュースの2曲、「All Strung Out」「The Habit Of Lovin' You Baby」で、まさに蘇ったウォール・オブ・サウンドだ。そしてベスト・トラックは、デビッド・ゲイツ作の見事な転調が冴える「You'll Be Needing Me Baby」。注目はホワイト・ホエールでのアルバム未収録のシングル曲で、「My Old Flame」「Let It Be Me」「Ooh Poo Pa Doo」「Please Help Me,I'm Falling」の4曲は軽いタッチのコーラスものから、R&B、カントリーと様々なタッチでアレンジされており、これもニノとジェリー・リオペルとの共同プロデュースだった。(佐野)
All Strung Out