1999年12月29日水曜日

☆Various:『The Ed Sullivan Show』(パイオニアLDC/PILF2809) 6LD-BOX


今まで『Beat Club』『Ready Steady Go』『Shindig』などの60年代の優れたテレビ音楽ショーのLDが発売されてきたが、この『The Ed Sullivan Show』は質的にも最高の内容と言えよう。本編はLD5枚に62アーティストにより117のパフォーマンス、計440分を楽しむことができる。音楽とは関係ないパフォーマンスは一切省き、ジャズや古いポピュラーものを入れずに60年代のロック、ポップス、ソウルにほぼ絞ったチョイスも素晴らしい。ビデオではアミューズソフト販売より全10巻で発売されていたが、LDにはおまけに95年に放映された82分のクリスマス特別番組のLDがプラスされている。過去の重複した映像や、95年の生ライブもあるが、エルヴィスやシュープリームスなど本編に収録されていない映像もある。またクリスマス・ソングを歌っているものは当然、未収録。このLDボックスは初回限定生産なので、必ず買っておくべきLDだ。DVDでないのがちょっと残念だが、贅沢は言えない。ボックス内のLDジャケットはカラーコピーのようなシンプルなもので、さらにビデオ・セットにあるブックレットは付かないが、このボックスを買う人にはそんな初心者向けのブックレットは不要だろうからこれで十分。価格は税抜き38000円、仕方がないね。
 それでは本編の内容だが、11曲紹介していてはスペースが足らないので、VANDAの読者向けのものをチョイスして紹介しようと思う。(ママス&パパスはたくさん入っていたので割愛)
DISC 1
『ザ・ロック・ジャイアンツ』
 なんといってもリアル・ライブのビートルズの4回目出演時の「Help」、ローリング・ストーンズの「Satisfaction」が見もの。“let's spend sometime together"と歌わされたエド・サリヴァン・ショーのこと、この初登場の時からミックは“girl's reaction"ではなく“goin' action"とはっきり発音して歌っているところが、いかにもビジネスだと割り切るミックらしい。テンプテーションズは「My Girl」、彼らの抜群のプロポーションとステップの見事さに見とれてしまうだろう。他では口パクだが初期のビージーズの「Words」、バーズの「Mr.Tambourine Man」もいい。
『ザ・グレイト・ポップ・ミュージック1
ビーチ・ボーイズの「I Get Around」にまず注目。リアル・ライブで、若々しいブライアンの溌剌とした表情には、彼の繊細なもろい内面をうかがい知ることはできない。テディ・ランダッツォの傑作「Hurt So Bad」を歌うのはリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ。この為の別録音である。ビートルズは初回と2回目の出演時の「I Want To Hold Your Hand」と「From Me To You」。とにかくビートルズはカッコ良く、惚れ惚れしてしまう。ビートルズのエド・サリヴァン・ショーのフィルムはすべてまとめて発売して欲しいものだ。フォー・シーズンズの「Big Girl Don't Cry」は『Classic Hits From The 50's&60's Vol.2』と同じフィルムながら画質は段違いにいい。
DISC 2
『ザ・グレイト・ポップ・ミュージック2
 素晴らしい画質でのラヴィン・スプーンフルの「Daydream」が嬉しい。演奏も別ヴァージョン、ジョー・バトラーのハイハットに付けられた花が時代を物語る。CCRの「Down On The Corner」、ストーンズの「Have You Seen Your Mother Baby,Standing In The Shadow」はいい映像だが、口パク。後者でのキースのドイツ兵まがいのミリタリー・ルックが注目だ。ビートルズは初回時の「She Loves You」で、もちろんリアル・ライブ。バーズの「Turn Turn Turn」はVol.1と同じ時のフィルムながらこちらはちゃんと演奏している。スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「Abraham,Martin&John」ではコーラス・グループとしての実力を堪能できるだろう。
『ザ・グレイト・ポップ・ミュージック3
 珍しい映像としてジェイ&ザ・テクニクスの「Keep The Ball Rollin'」。黒人2人のヴォーカルで曲はソフト・ロック、曲はいいが、映像的には奇妙。ビートルズは3回目の出演時の「Twist And Shout」で、ジョンのヴォーカルが迫力満点、バック・コーラスでポールとジョージが首を振るしぐさなど、女の子がキャーキャー言うのがよく分かる。モータウンの歌姫シュープリームスは珍しいふだん着姿での「Love Child」と、ラメのドレスでの「You Can't Hurry Love」とそれぞれ違った姿を見せてくれる。
DISC 3R&B天国1
R&B天国2
 この1枚はモータウン中心にソウルの大物ばかりを集めたベスト・セレクションになっている。テンプテーションズの「I Can't Get Next To You」ではメンバーが交互にリード・ヴォーカルを取り合うがみな実に歌が上手く驚かされるし、「For Once In My Life」でのスティーヴィー・ワンダーの歌とハーモニカの素晴らしさにもただ拍手。ファルセットのリードとハーモニーが見事に溶け合ったスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、マイケル・ジャクソンが12歳とは思えない歌と見事なステップを魅了するジャクソン・ファイヴ、重量感のあるフォー・トップス、気合満点のジェームス・ブラウンと、ダイナマイトとしかいいようがないアイク&ティナ・ターナー、そしてグラディス・ナイト&ザ・ビップス、サム&デイブとソウル・シンガーはともかく歌が上手く圧倒されてしまう。その中で唯一の白人、ライチャス・ブラザースも負けないソウルフルなヴォーカルを聴かせてくれた。エド・サリヴァン・ショーの常連、シュープリームスももちろん2曲収録。その中で心地良い転調を聴かせる「In And Out Of Love」はソフト・ロック的にも傑作だ。

DISC 4
60's サイケデリック&グルーヴ』
 ここでの最注目はなんといってもヤング・ラスカルズ。「Groovin'」でのオルガン、コンガ、ハーモニカだけのシンプルな演奏でのリアル・ライブは、見るだけで感動もの。もう1曲「Good Lovin'」はいつものギター、オルガン、ドラムで実にスピーディーな演奏を聴かせてくれ、これも素晴らしい。もうひとつの注目はスパンキー&アワ・ギャングの「Sunday Will Be Never Same」だ。彼らの演奏が、それもリアル・ライブで見られるなんて夢にも思わなかった貴重な映像だ。古風な髭をたくわえたギターの3人、ロボットのような無表情のドラマー、そしてたくましいスパンキーの組み合わせはビジュアル的に実に面白い。フィフス・ディメンションは「Stoned Soul Picnic」を歌う。ミニスカートのマリリンとフローレンスが可愛い。タートルズの「Happy Together」は『The Best Of West Coast Rock Vol.4』と同じもの、ビーチボーイズの「Good Vibrations」もよく見る白装束姿のものだ。ドアーズは「Light My Fire」を熱唱するが、ジム・モリソンはエド・サリヴァンからの注文を無視してドラッグ用語を使ったため、その場で出入り禁止になった。
『ベスト・ヒッツ・オブ65&66
 お待ち兼ね、アソシエイションは「Along Comes Mary」を歌う。多くのメンバーは髭を蓄えているが、名盤『Birthday』発表直後の演奏で、発表時から2年経っているので余裕のパフォーマンスだ。別ヴァージョンなのも嬉しい。そしてフォー・シーズンズ。モータウンの影響を受けて、新たな地平に足を踏み出した第1弾の「Let's Hang On」という選曲がいいし、何よりもこの時代の映像は極めて貴重。若干ショウビジネスっぽい服装ではなくなったが、スポーティーでもあか抜けないのがなんともフォー・シーズンズらしい。歌は完全な別録音で、必聴だ。他ではラヴィン・スプーンフルの「Do You Believe In Magic」が、口パクながら、メンバーが現れたり消えたりとの編集の「マジック」を見せるが、いかにも時代を感じる。ストーンズは「Paint It Black」で、口パクながらブライアン・ジョーンズがシタールを弾くのが面白い。珍品では「I'm A Fool」を歌うディノ・デシ&ビリー。これはほとんどの人が初めて見る映像ではないか。3人は12歳から14歳とメチャクチャ若い。余談だが、トム・ジョーンズの「It's Not Unusual」を見ていると、『マーズ・アタック』が浮かんでしまうのは私だけではあるまい。
DISC 5
『ベスト・ヒッツ・オブ67&68
 口パクながら、タキシード姿のメンバーをオーバーラップしたスパンキー&アワ・ギャングの「Like To Get To Know You」が見もの。この複雑な構成の曲は、彼らのセンスの良さを十分に感じさせてくれるだろう。ストーンズは口パクの「Ruby Tuesday」。ミックの“Knight"の挨拶がこの曲にピッタリ。アソシエイションは「Never My Love」、口パクだがフェイド・アウトしないできちんと終わり、別に録音したものだということがよく分かる。ビーチ・ボーイズの「Do It Again」は白装束姿のもの。
『ベスト・ヒッツ・オブ69&70
 この面は名曲中の名曲が並ぶ充実した出来栄えだ。2曲を披露しているのがフィフス・ディメンション、まず「Aquerius - Let's The Suns¨hine In」が素晴らしい。バックをクロマキーで宇宙に仕立て、さすが名曲中の名曲だ。もう1曲はマリリンのリードの「One Less Bell To Answer」。CCRの「Proud Mary」も負けず劣らず心を引かれる。シンプルながらこの力強さ、ロックの魅力がここに復活している。トム・フォガティに髭がないのにも注目。B.J.トーマスはバカラックの「Raindrops Keep Fallin' On My Head」を実際にずぶ濡れになりながら歌う。フィルムで見るとアクが感じられず、実に爽やかな好青年に見えるから不思議だ。カーペンターズはロジャー・ニコルスの「We've Only Just Begun」、いつ聴いても美しい曲だ。ブルックリン・ブリッジが歌うジム・ウェッブの傑作「Worst That Could Happen」も見もの。(佐野)

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1999年12月20日月曜日

☆Free Design:『There Is A Song』(徳間ジャパン/TKCB71827)




 待望久しいフリー・デザインのラスト・アルバム『There Is A Song』がCD化された。このアルバムは、昨年テイチクよりリイシューが完成したプロジェクト3レ-ベルの6枚のアルバムの後の1973年、クリス・デドリック他サンディ、エレン、ステファニーの3姉妹が一緒にカナダのオンタリオの移住して制作したもの。レーベルがニューヨークのアンブロタイプというマイナー・レーベルだったので、ほとんど知られることもなく、長くファンにとってコレクターズ・アイテムになっていた。ショップでは数万はするというウルトラ・レア盤だったので、多くのフリー・デザインのファンにとって待望のリイシューと言えるだろう。内容はよりアコースティック、よりシンプルなバッキングと、ナチュラルなハーモニーにより、非常に聴きやすいメロディアスな好盤に仕上がっている。ノン・エコーのアカペラが3曲入っているのが特徴で、それはクリスらフリー・デザインのメンバーがこの後に、ノン・マイクのアカペラ・グループ、スター・スケイプ・シンガーズに参加していったことへとつながってくる。もちろんアルバムには管楽器をフィーチャーし、コーラスがからみあうクールな従来のフリー・デザインらしいメンバーもあるのだが、アコースティック・ギターとピアノの比率がかなり大きくなっているのに気づくだろう。ベスト・ナンバーは新天地カナダでの生活に大きな希望を抱いている姿が目に浮かぶ、弾むような「Canada In Spingtime」。そして「There Is A Song」は、数あるフリー・デザインのナンバーの中でクリス自身が最も好きなナンバーとして揚げた自信作で、スピリチュアルな歌詞が感動的だ。ピアノに美しいメロディが生える「Kum Ba Yah」もいい。このアルバムは早いうちに買くべき、価値ある1枚だ。歌詞だけではなく、対訳まで付いているのも嬉しい。(佐野)
ゼア・イズ・ア・ソング

1999年12月14日火曜日

☆Billy Nicholls:『Snapshot』(South West/SWLP003) *LP

 ビリー・ニコルスの眠れる音源がまた大量に登場した。このアルバムはなんとLPだけのリリースで、レーベルは以前Web VANDAでも紹介した『Would You Believe』と『Love Song』のCDを限定500枚、本人のサイン入りで販売したSouth Westである。さて肝心な内容は彼が67年から68年の間、イミディエイト時代に録音していたデモ集である。当然『Would You Believe』の直前なので、アルバムに入った曲の大半のデモを聴くことができる。ないのは「Daytime Girl」「Question Mark」だけ。12弦を弾きながらハーモニーを加えていて、曲によってはキーボードやドラム、ベースを入れてかなりの仕上がりを見せている。そして「Happiness Song」「Casey Jones」「Alaways On My Mind」「I'm Top Blame」「Umblrella Song」「Good Day Goodnight」「Now She's Mine」「Walking Through The Park」は初登場。憂いを帯びたメロディと陰りのあるヴォーカルはいかにもイギリス的だ。注目は「Would You Believe」で、デモの段階でスティーヴ・マリオットとロニー・レーンがコーラスで、演奏ではケニー・ジョーンズ、イアン・マクレガンも加わり、スモール・フェイセスがフル・メンバーで参加していた。コーラスのキーが一部違い、マリオットのシャウトがないなど、明らかに違うテイクだが、その完成度は高い。この曲はSouth Westでの『Would You Believe』のCDのみ、アンドリュー・オールダムの手が入る前のスモール・フェイセス・ヴァージョンが収録されていたが、それよりも前のテイクである。あと「It Brings Me Down」にもマリオットがコーラスで参加とクレジットされているが、2テイク入っているどちらのヴァージョンでもどちらに入っているか確認できなかった。(佐野/Special thanks to 山下)

1999年12月9日木曜日

☆Spanky & Our Gang:『Spanky & Our Gang』(Vivid Sound/VSCD737)☆Spanky & Our Gang:『Like To Get To Know You』(Vivid Sound/VSCD738)☆Spanky & Our Gang:『Without Rhyme Or Reason』(Vivid Sound/VSCD739)

 ついにスパンキー&アワ・ギャングのオリジナル・アルバムが3枚共CD化された。日本のみの発売で、もちろん世界初の快挙である。スパンキー独特の太く声量のあるヴォーカルにどこか郷愁をさそうメロディ・ライン、からみあうぶ厚いコーラス・ワーク、ジャズのフィーリングを帯びたサウンドは、ハーパース・ビザールよりも魅力的だ。このサウンドを作り出した中心は、ファースト・アルバム『Spanky & Our Gang』を担当したプロデューサーのジェリー・ロス。そしてアレンジャーはロスの両腕のジミー・ウィズナーとジョー・レンゼッティー、そしてボブ・ドロウの3人だった。ここからの3曲のヒット「Sunday Will Never Be The Same」、「Makin' Every Minute Count」、「Lazy Day」を聴くと、メリハリのついたバッキングにストリングスをからめた華麗なサウンド・プロダクションで彩られ、ジェリー・ロスの中でも最高のサウンド・プロダクションを楽しめる。スパンキーのリードと厚いコーラスを生かしたポップな。しかし彼らはヒットを生み出したジェリー・ロス組とこのアルバムだけで別れ、プロデュースとアレンジをボブ・ドロウとスチュワート・シャーフにまかせる。そして作られたセカンド『Like To Get To Know You』は、ファーストよりさらに統一感のとれた素晴らしい出来を示した。「Sunday Morning」のスパンキーのリードとそのコーラス、低い男性コーラス・パートが巧みに入れ替わるなどメンバー全員のそれぞれのパートがからみあう精緻な作りで、まさに驚異のひとこと。サビまでスパンキーがバック・コーラスに回り、サビからリードに入れ替わるジャジーな「Like To Get Know You」もまた洒落た曲だ。得意のバロック風コーラスが飛び出す「There Ways From Tomorrow」など、サウンドか確実に進化した。そしてサード『Without Rhyme Or Reason』は彼らの頂点の作品となる。「Give A Damn」、「Yesterday's Rain」、「Hong Kong Blues」、「Without Rhyme Or Reason」、「Jane」、「Since You've Gone」など、リードはもはやスパンキー一人ではなく、曲の展開で自在に入れ替わる。男性メンバーのヴォーカリストとしての力量が飛躍的に上がっていた。コーラスのパターン、リズム、リードメロディまでが目まぐるしく変わっていく。音のモザイク。この複雑で、それでいてポップな曲の数々はヴォーカル・グループとして頂点の1枚だろう。(佐野)
Spanky & Our GangLike to Get to Know YouWithout Rhyme Or Reason

1999年11月20日土曜日

☆Small Faces:『Small Faces The BBC Sessions』(A BBC Music/SFRSCD087)




今年のポップ・ベスト・リイシューがEternity's Childenの『Eternity's Children』とFour Seasonsの『The Night-Inside You』とすれば、ロックのベスト・リイシューはこのスモール・フェイセスのBBCセッションだ。全15曲中、嬉しいことに12曲までがデッカ時代の曲で65~66年に放送されたもの。音楽評論家などの玄人風の人達はよくイミディエイト時代を評価しているが、いいのはその前のデッカ時代。これは声を大にして言いたい。不世出のヴォーカリスト、スティーブ・マリオットの迫力満点のヴォーカルが炸裂するのはデッカで時代あり、オ-バーダビングなしのようなストレートなバッキングに文句なしに映える。サイケが入ってくるイミディエイト時代ではその分、すべてに勢いがそがれている。そう、ジョン・レノンのヴォーカルがいいのはビートルズの初期というのと同じだ。ロック・ヴォーカリストはシンプルでストレートなバッキングがベストなのだ。まず冒頭の「Watcha Gonna Do About It」でノックアウトされてしまった。レコードよりギターがでかく、粗削りで迫力があり、ロックの暴力的なパワーがみなぎっている。そしてマリオットのヴォーカルもライブではさらに力が増しているのだからたまらない。続く「Jump Back」はマリオットの書いた未発表ナンバーで、「Sha-La-La-La-Lee」のギター・フレーズを使った重量感のあるR&Bナンバー。ロニー・レーンが歌う「Shake」はドラム・パターンが違うのでどこかバタバタした感じがあり、これはレコードの勝ち。しかしロニー・レーンのシャウト・ヴォーカルは実に若々しく躍動感があり、後の枯れた雰囲気が嘘のよう。「Sha-La-La-La-Lee」「Hey Girl」のポップ・ヒット2曲は、相対的にギター・サウンドになった重量感のあるこのライブの方がカッコいい。ジミー・ペイジが「Whole Lotta Love」として後に盗作した「You Need Loving」と、ガリガリとした強烈なリフに乗せた「E Too D」というスモール・フェイセスの隠れ名作は、狂おしいまでのマリオットのシャウト・ヴォーカルが必要とされるので、ライブではどうかと思いきやまったくレコードと遜色ないパワーを見せてくれた。演奏もソリッドで文句なし。そして私が大好きな「Understanding」までも登場する。歌も演奏もいいし、ケニー・ジョーンズのドラムが聴きものだ。名曲「All Or Nothing」はプレイし慣れた余裕の仕上がりでこれも素晴らしい。さらに「One Night Stand」「You Better Believe It」「Baby Don't You Do It」という渋いナンバーもプレイされていた。最後は68年の録音で、SEやカズー、鐘も入った「Lazy Sunday」は空いた2年の歳月を感じさせた。しかし疑似ライブで録音されていた「If I Were A Carpenter」「Every Little Bit Hurts」はこれが初めてのクリアな演奏で、ここではこのヘヴィなR&Bナンバーに再びマリオットの真っ黒なヴォーカルが全開となり、我々を酔わせてくれた。このBBCライブはフーが予定されたまま延期になっているが、この迫力にはさしものフーもかなわない。史上最強のロック・ヴォーカリストは、やはりスモール・フェイセス時代のスティーブ・マリオットだ(佐野)
The BBC Sessions

1999年11月15日月曜日

☆Who:『Who's Next』(日本コロムビア/COBY90093)DVD

フーの最高傑作アルバム『Who's Next』の製作過程を、ピート・タウンゼンド、ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスルのメンバーと、グリン・ジョーンズ、クリス・スタンプら当時の関係者が語るファンにはたまらないドキュメンタリー映画だ。ご存じのとおり『Tommy』に続くコンセプト・アルバムとしてピートは『Lifehouse』を準備するが、その難解なテーマをピート以外は誰も理解できず計画は頓挫、用意された曲の中から幾つかと新しい曲を組み合わせてこの『Who's Next』が制作された。そういった現象面での証言も興味深いが、それよりも心引かれるのはサウンド作りの解説だ。例えば「Baba O'Reiley」のシンセサイザーをピートが実際に弾いてその作り方を解説、ジョンも曲に合わせて実際にベースを弾き、グリン・ジョーンズはミキサーを操作して各パートを解説していくといった具合。「Behind Blue Eyes」では、ロジャーがミキサーをいじり時には一緒に歌いながらキースのドラムの素晴らしさを力説、ピートはアコースティック・ギターの弾き語りを披露する。ピートがブライアン・ウィルソンの『Pet Sounds』でのベースの素晴らしさを語るなど、コメントもとても興味深い。最後にピートが「Won't Get Fooled Again」を弾き語りするが、アコースティック・ギター1本で迫力満点のロックにしてしまうその見事なギターの腕前には惚れ惚れしてしまった。ピートはストロークの天才で、切れ味鋭いフレーズを次々送りこむ。私はギターの早弾きなど何の興味もないが、ピートのようなソリッドなビートを供給できるプレイヤーこそ本物のギタリストだと確信している。時々織り込まれるフーの当時の映像には目新しいものはないが、こういった再現だけで買う価値は十分だ。最後にフィルムで見られるメンバーの「近況」だが、ピートは若干柔和になり笑顔も交えながらコメントをし、髪は後退したものの知的な印象は変わらず。ジョンはまったく昔と容貌も雰囲気も変わらない謎の人。そしてロジャーだが、彼はともかく老けた。スタジオで眼鏡を下げて喋る時など、昔の精悍なロジャーはとても想像できない。やはり刺もとれてコメントが柔和、優しそうなおじさんになってしまった。誰かに似ていると思っていたら...そう欽ちゃんそっくりだ(佐野)

1999年11月9日火曜日

「ポップ・ヒットメイカー・データ・ブック」ソングライター/プロデューサー/ポップ・グループ (VANDA編・:シンコー・ミュージック刊)

長くお待たせしましたが、ようやくVANDAとしての4冊目の単行本が完成しました。「ソフト・ロックA to Z」以来、年1冊のペースで単行本を出してきましたが、この本こそ今まで我々がVANDAでやってきたことの集大成の1冊と言えるでしょう。60年代から70年代にかけてアメリカ・イギリス・フランスのポップ・ミュージック・シーンを作り出した68組のソングライター、51組のプロデーュサー、35組のポップ・グループ/セッション・ヴォーカリストを一挙紹介、そのすべてにチャート入りのソングリスト/ディスコグラフィーを付けた、全ポップ・ファンの永久保存版です。リストは18000曲に及び、このリストだけでも買う価値は十分でしょう。今まで日本では、ジャケットを並べたり、ヒット曲の解説の本はありましたが、多くのヒットを生み出してきたポップ・ミュージシャンをまとめて紹介したものはありませんでした。そして一番手間がかかって大変な、ソングリストを付けた本は世界的にもありません。リストがあればそのアーティストを追うことが容易になり、またリストはアーティストの人間関係の変遷やどんな影響を受けてきたのかという事まで語ってくれる場合もあります。リストを付けることが最大の負荷価値、音楽評論家のゴタクよりはるかに役に立ちます。さらに写真も充実し、各アーティストごとに本人の写真や主要作品が入り、ポップ・グループを中心に、384枚当時の日本盤シングル/EPのジャケットをカラーで掲載しました。そして「ビーチ・ボーイズ・コンプリート」以来にご登場いただいたとり・みきさんのマンガ「アルドン荘物語」はコアな音楽ファン、コミック・ファンのどちらも唸らせる傑作。全336頁、こんな充実したラインナップで価格は税抜き2800円とリーズナブル、自信を持って購入をおすすめします。(佐野)



CONTENTS 目次


PREFACE まえがき 002



●SONGWRITER / PRODUCER ソングライター(兼プロデューサー) 007/Barry Mann 008/Burt Bacharach 010/Carole King 012/Jeff Barry & Ellie Greenwich 013/Neil Sedaka 015/Del Shannon 016/Peter Anders & Vini Poncia 017/Michael Nesmith 018/Tommy Boyce & Bobby Hart 019/Tony Macaulay 020/Roger Cook & Roger Greenaway 022/Geoff Stephens 023/John Carter 024/Tom Springfield 025/Chris Arnold, David Martin & Geoff Morrow 026/Graham Gouldman 027/Tony Hatch 028/Peter Shelley 030/John Barry 031/Les Reed 031/Roger Nichols 032/Jimmy Webb 034/Randy Newman 035/David Gates 036/James Griffin & Rob Royer 037/P. F. Sloan & Steve Barri 038/Rod McKuen 039/Bruce Johnston & Terry Melcher 040/Charles Fox 041/Paul Anka 042/Laura Nyro 043/Jackie DeShannon 043/Nilsson 044/Neil Diamond 044/Paul Vance & Lee Pockriss 045/Rupert Holmes 045/Mac Davis 046/Guy Fletcher & Doug Flett 046/Shadows Family 047/Chris Andrews 048/Bill Martin & Phil Coulter 048/Peter Callender 049/Mitch Murray 049/Mike Leander 050/Albert Hammond 050/Bobby Russell 051/Bobby Scott 051/Bob Dorough 052/Terry Cashman & Tommy West 052/Bob Lind 053/Flo & Eddie 054/Garry Bonner & Alan Gordon 054/Kenny Rankin 055/Mort Garson 055/Jerry Fuller 056/Sandy Linzer 056/Tim Hardin 057/Danny Janssen 057/Dennis Lambert & Brian Potter 058/Paul Leka 059/Gary Zekley 059/Joe South 060/Chip Taylor 060/Artie Kornfeld 061/Tony Romeo 061/Michel Legrand 062/Francis Lai 064/Serge Gainsbourg 065
●PRODUCER プロデューサー 067/Phil Spector 068/Snuff Garrett 070/Lenny Waronker 071/Al De Lory 071/Teddy Randazzo 072/Bob Crewe 073/Sonny Bono 074/Jack Nitzsche 075/Andy Kim 076/Joe Meek 076/George Martin 079/Norrie Paramor 081/Norman Newell 082/John Burges 082/Andrew Loog Oldham 083/Dick Glasser 084/Gary Usher 086/Curt Boettcher 087/Bones Howe 089/Lou Adler 090/Herb Alpert 090/Tommy Lipuma 091/Nick DeCaro 091/Shel Talmy 092/Larry Page 093/Mickie Most 094/Nicky Chin & Mike Chapman 095/Mark Wirtz 096/Glyn Jones 097/Ron Richards 099/Peter Sullivan 099/Michael Lloyd 100/Mike Curb 101/Wes Farrell 101/Jerry Ross 102/Roy Hallee 103/Peter Asher 104/Jimmy Bowen 105/Chips Moman 105/Richard Perry 106/Jimmy Ienner 107/Jerry Kasenetz & Jeff Katz 107/Harry Vanda & George Young 108/Paul Samwell-Smith 109/Johnny Franz 109/Tony Visconti 110/Mike Hurst 111/Wilson Malone, Monty Babson & Geoff Jill 112/Eddie Tre-vett 113/David Mackay 113/Mike Smith 114/Robert Stigwood 114
●VOCALIST ヴォーカリスト 115/Ron Dante 116/Tommy Roe 117/Lou Christie 118/Bobby Goldsboro 118/Tony Burrows 119/Tony Rivers 120
●ARRANGER アレンジャー 121Perry Botkin Jr., Bob Thompson, Bob Alcivor, Artie Butler, Leon Russell etc.
●POP GROUP ポップ・グループ 124/The Four Seasons 125/The Tokens 127/The Association 128/The Critters 129/The Classics IV 130/The Turtles 131/The Rascals 132/Gary Lewis & The Playboys 134/The Lovin' Spoonful 135/Simon & Garfunkel 136/The Cowsills 138/The Cyrkle 138/The Byrds 139/The Mamas & The Papas 141/The Parade 142/The Hollies 143/The Dave Clark Five 144/The Zombies 145/The Happenings 146/The Buckinghams 147/Buffalo Springfield 148/The 5th Dimension 149/The Moody Blues 150/Badfinger 152/Grapefruit 153/Roy Wood (The MoveIdle RaceElectric Light OrchestraWizzard) 154/Chicago 156/Three Dog Night 157/Blood, Sweat & Tears 158
●SPECIAL CONTRIBUTION 特別寄稿 とり・みき『アルドン荘物語』 159
●JAPANESE SINGLE/EP COLLECTION 日本盤シングル/EP コレクション 161
●DISCOGRAPHY ディスコグラフィ 177/SONGWRITERS / PRODUCERS: SONG LIST ソングライター(兼プロデューサー):ソング・リスト 178/PRODUCERS: PRODUCE LIST プロデューサー:プロデュース・リスト 240/VOCALISTS: DISCOGRAPHY ヴォーカリスト:ディスコグラフィ 297/POP GROUPS: DISCOGRAPHY ポップ・グループ:ディスコグラフィ 302
●OUR FAVORITE HIT-MAKERS 執筆者アンケート 322
●INFORMATION FROM VANDA VANDAからのお知らせ 324
●INDEX 索引 325