1998年8月31日月曜日

☆Beach Boys:Unsurpassed Masters Vol.9-12リリース

全ビーチ・ボーイズ・フリークを狂喜させたブートレグ・シリーズの第3弾。まずVol.9は「Summer Days」アウトテイクの CD 4枚組。この中ではブライアンの先のソロで取り上げられた "She Says That She Needs Me" の原曲 "Sandy" のセッション集の中で、エンディングの付近に歌とコーラスが入ったテイクがあったのにはビックリ。それぞれの曲のリハーサルや最初にヴォーカルを入れたテイクがその原型がかいま見られて面白い。歌の入ったテイクでは "Girl Don't Tell Me" がラフで最も生々しく、バックトラックでは "Then I Kissed Her" の淡々としたバッキングがエコーをかけ始めたと同時にスペクター・サウンドになったのが最も興味深かった。Vol.10は「Beach Boys' Party」の4枚組。一発録りのように思えたこのアルバムもこれだけのテイクを録音していたことにまず驚かされる。なにしろあんな簡単そうにハモる "Devoted To You" ですら5テイクある。実際に使わなかった曲も多くストーンズの "Satisfaction" や、ビートルズの "Ticket To Ride" 、ディランの "Blowin' The Wind" 、ニール・セダカの "The Diary" 、レイバー=ストーラーの "Smokey Joe's Cafe"  "Riot In Cell Block #9" 、そして "California Girls" などを聴けるが、 "Satisfaction" や "California Girls" はかなりしっかりした仕上がりで楽しめるだろう。Vol.11は "The Little Girl I Once Knew" のセッションを中心に、どういう係わりあい方か不明だがブライアンがスタジオでプロデュースしたという、ディック・レイノルズ(「The Beach Boys' Christamas Album」のストリングス・アレンジャー)自身が歌う2曲のスタンダード・ナンバーと、「Smile」時代の録音かと思われたブライアンの斬新なインスト・ナンバー "Three Blind Mice" (65年10月の録音だった)、さらに作曲者が不明とされているがブライアンらしいコード進行を見せるバッキングのみの "Let's Live Before We Die" が収められた2枚組。Vol.12は "Sloop John B." のセッションで1枚、もう1枚はメンバーによる大量のラジオ・スポット集だが、歌もない68分はあまりにきつかった。(佐野

☆Symphonic Sounds : Music Of The Beach Boys (Platinum Entertainment/9343)

ブルース・ジョンストンがアルバム・プロデューサーになったロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラによるビーチ・ボーイズのソング・ブックだが、オーケストラだけのものは初めの "Overture" とラストの23分以上の大作 "The Water Planet Suite" だけで、他はそれぞれリード・ヴォーカルかギター・ソロ、もしくはコーラスが入っていた。
まずマイク・ラブが "Kokomo" 、ブルースが "Disney Girls" を歌い、そしてマット・ジャーディンが "Darlin'" 、アドリアン・ベイカーが "The Warmth Of The Sun" のリード・ヴォーカルを取り、このメンツはまさしくライブでのビーチ・ボーイズとなった。マイクとブルースの2曲はもう何度もレコーディングし直しているおハコなのでコメントは差し控えるとして、マットの "Darlin'" はやや線が細いものカールの代役は彼と思わせる堂々とした歌いっぷりで楽しめた。またアドリアンの "The Warmth Of The Sun" の出だしのフォー・フレッシュメン・スタイルのアカペラなどからは、彼の優れたコーラスのセンスを感じることが出来るだろう。そしてオーケストレーションもいい。そしてこのアルバムの本当のハイライトは先に書いたオーケストラのみの2曲だった。ビーチ・ボーイズのナンバーを巧みに23曲も織り込みながら、ある時はドラマティックに、ある時はロマンティックに紡ぎあげる。このセンス、オーケストラのアレンジと指揮はあのボブ・アルシヴァーであり、納得させられた。(佐野)
Symphonic Sounds: Music of Beach Boys



1998年8月28日金曜日

☆Curt Boettcher : There's An Innocent Face (ワーナー/2830)

1973年リリースのカート・ベッチャー唯一のソロ・アルバム。
その前のボールルーム、サジタリアス、ミレニウムなどのカートの素晴らしいワークスに期待していると、このアルバムはガッカリさせられる。我々はカートの美しいエンジェリック・ヴォイス、そして高度なコーラス・ワークを聴きたいのだが、このアルバムはアコースティック・ギター中心のSSW風の作りで、凝ったコーラス・ワークもハイ・クオリティなサウンド・プロダクションもなく、ミディアム・テンポのC&W調の曲が多い。自作が2曲だけというのもなんとも寂しい。ファルセットが聴ける "Malachi Star" がベストだが、カート・ベッチャーのコンプリートを目指す人だけしかお薦めできない。(佐野)
ゼアズ・アン・イノセント・フェイス

1998年8月26日水曜日

☆Bruce & Terry : The Best Of Bruce & Terry (Sundazed/11052)

待望のブルース・ジョンストンとテリー・メルチャーのデュオ、ブルース&テリーの作品集がリリースされた。ブルース&テリーの "Mahaka At Midnight" は入っていないが、これはブルースの「Surfin' 'Round The World」収録のものを流用しただけだけなので完璧な作品集といっていいだろう。
メロディ・メーカー、ブルースの本領を発揮した名曲 "Don't Run Away" や "Thank You Baby" 、コーラスのからみが実にドラマティックな "Come Love" 、スピード感とサウンドのヴォリュームでオリジナルを凌いだ "Summer Means Fun" や "Custom Machine" と聴きどころは十分と言えよう。このアルバムは1963年から66年までの間にリリースされたブルース&テリーの6枚のシングルにプラスしてロッグス名義でリリースされたバディ・ホリーとリッチー・バレンスのカバーシングル2枚を集めたもので、かつて同じくこの2人の作品をまとめたM&Mの「Bruce & Terry Rare Masters」のようにその他の覆面ワークスは収められていないものの、なんと5曲もの未発表曲が収録されていた。この内 "Hawaii"  "Help Me Rhonda" はコーラスがオリジナルのビーチ・ボーイズを下回りたいした出来ではなかったが、最も初期の録音でもある "Halfway" は魅力的なポップ・ナンバーだったし、64年の "Look Who's Laughing Now" はファルセットが映えるキャッチーな出来であり、 "Here Comes Summer" は "Surf City" 風と、素晴らしい出来だった。最後にはシークレット・トラックでラジオ・ジングルとレコーディング風景の一部が入っていた。(佐野)
The Best Of Bruce & Terry

1998年8月22日土曜日

☆Various: MOM 3 (Surfdog/62233)

海の環境問題の基金集めを目的ととしたこのシリーズ、前作より2年ぶりに3作目が登場した。もちろんお目当てはBrian Setzer with Brian Wilsonの「Little Deuce Coupe」。Brian Setzerとはストレイ・キャッツのメンバーで、彼が中心となってこの往年の名曲を、痛快なロック・ナンバーに蘇らせた。エキゾースト・ノートから、Led Zeppelinの曲のようなリフが始まるが、歌はかなり爽やか。ファルセットもきちんとあるし、ブライアン・ウィルソンのヴォーカルも前面に出ている訳ではないが、聴こえる。歯切れのいいロック・ナンバーへアレンジしながら、間奏のギターはオールディース風の弾き方をして、曲の最後のコードはビートルズ風と、新しくて懐かしいアレンジがなかなかいい。このCDにはウィングスの「Wild Life」も入っているがこれはレコードと同じ。シリーズのPart.2にはビーチ・ボーイズのここでしか聴けない「Summer In Paradise」のライブが入っているので、持っていないファンは要チェック。(佐野)
Mom 3

1998年8月21日金曜日

☆Gary Lewis & The Playboys : Everybody Loves A Clown/She's Just My Style (Collectable/2734)

かつてEMIからリリースされていた CD がようやくCollectableから再版さまず「Everybody Loves A Clown」だが、ハープシコードの印象的なフレーズに導かれるハッピーな雰囲気のタイトル曲は全米4位の大ヒットになった彼らの代表曲。そしてこのメロディ、そう、大滝詠一の "君は天然色" の一部分。作曲はレズリー(ギャレット)=ラッセル=ルイスのオリジナル。そして "Chip Chip"  "Let Me Tell Your Fortune" も明るく軽快で聴きものだ。アルバムのハイライトがアデル=ゲルドの書いた "We'll Work It Out" 。イントロのゴージャスなピアノのフレーズ、そう山下達郎の "土曜日の恋人" のイントロそのものなのだ。この曲は弾むようなリズムと流麗なメロディ、素晴らしいピアノのバッキングが一体となった彼らの頂点の1曲だろう。アルバムもプロデューサーのスナッフ・ギャレットとアレンジャーのレオン・ラッセルの力が見事に結集し、彼らのアルバムの中でもベスト3に入る傑作になった。次に「She's Just My Style」だが、このタイトル曲は強いビートに乗った主旋律からアル・キャップスのバス・ヴォイスをさんで眼前が開けるようなきらびやかな高音のギターフレーズが登場する名曲中の名曲。3人のオリジナルで全米3位を獲得している。アルバムはアレンジャーがリー・ベッツに変わり、プロデュースもゲイリー自身が2/3を担当したためか、ギター・バンド的な曲が多くなり、カバーも成功しているとは言い難く、前作に比べて期待外れの内容になった。その中で聴きものはオリジナルの "I Won't Make That Mistakes Again" で、これはギャレットのプロデュース、彼らの力がいかに大きいかよく分かるだろう。(佐野)
Everybody Loves a Clown

フィリップス音源のGSの王者、スパイダースなど待望のコンプリート・リイシュー。

テイチクにいた中村俊夫さんの努力で日本フィリップスの権利をテイチクが獲得、今までGSの宝庫と言われていながら権利を持っていたポリグラム系で死蔵されていたGSのカタログを一気にリイシューしてくれた。
まずはGSの王者、スパイダース。「ザ・スパイダース・アルバムNO1/NO2(TECN20387)、「スパイダース67~アルバムNO36(6とは「ゴー!スパイダース・フライ!サベージの6曲)(20388)、「風が泣いている~アルバムNO4+ザ・スパイダースの大進撃」(20389)、「明治百年、すぱいだーす7年+アルバムNO5(20390)、「スパイダース'695(20391)、「ロックンロール・ルネッサンス+6(20392)の6枚の CD 10枚のアルバムとシングル曲のすべてが収められた。やはりスパイダースは他のGSと比べて曲作り、サウンド、センスのすべてでず抜けている。まずこの6枚だけは是非買うべき。1枚だけなら「明治百年?」だ。続いてタイガースと女性の人気を二分したテンプターズは「ザ・テンプターズ・ファースト・アルバム」(20441)、「5-1=0/ザ・テンプターズの世界」(20442)、「〃オン・ステージ」(20443)、「〃イン・メンフィス」(20444)、「〃アンコール」(20445)の5枚のオリジナル・アルバムとシングル曲。ライブのショーケンの日本語英語が笑える。ジャガーズは「〃ファースト・アルバム」(20477)、「〃セカンド・アルバム」(20478)の2枚で、オムニバス盤参加の曲まで収められた。シングルは素晴らしいが、自分達で演奏したカバーはヘタで、特にビートルズの "Hello Goodbye" は中学校の学園祭レベルで情けない。逆にカーナビーツの「〃ファースト・アルバム&モア」(20476)では、ビートルズのカバーも "Get Back" は堂々としているし、レベル上ということが分かる。それよりもさらにレベルが上なのが寺尾聡がいたことで知られるサベージの「〃コンプリート・コレクション」(20488)。インストの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」などシャドウズのメンバーが舌を巻いたというくらい見事な演奏で、その確かなテクニックは他のGSとは比較にならず驚きだった。もうひとつがパープル・シャドウズの「パープル・シャドウズ・アルバム&モア」(20489)。あの「別れても好きな人」が元は彼らのナンバーとは知らなかった。テイチクがカタログ管理会社になってしまったため、これらのアルバムが廃盤になるのは時間の問題だ。(フリー・デザイン、ビリー・ニコルス、ジグソーも同じ)ディスコグラフィーや写真も豊富で、計16枚のほとんどが初めてのオリジナル・アルバムの復刻、これはもう今、買うしかない。
なお、今年一杯の間にこれらの CD の帯を10枚集めて応募すると「The Spiders Meets The Tempters On Karaoke」という非売品の CD がもらえる。内容はスパイダース10曲、テンプターズ6曲の都合16曲のバッキング・トラック、つまりカラオケが収められている。(佐野)
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1998年8月5日水曜日

☆Kinks : Muswell Hillbillies(ビクター/60444)☆Kinks : Everybody's In Showbiz(ビクター/60445)☆Kinks : Preservation Act 1(ビクター/60446)☆Kinks : Preservation Act 2(ビクター/60447)

キンクスのリマスター・シリーズの第3弾。どれも名盤揃いだが、この中ではやはり「Muswell Hillbillies」がベスト。音楽的にも、人間的にもどんどん深みを増していくレイ・デービスの才能にただただ圧倒されるばかり。さてアルバムの内容などは「All That Mods」にも詳しく書いたので省略するとして、肝心なボーナス・トラックを紹介しよう。まず「Muswell Hillbillies」は71年9月16日録音の未発表曲 "Mountain Woman"  "Kentucky Moon" で、泥臭いこの頃のレイ節が堪能できる。「Everybody's In Showbiz」はライブ・サイドと同じ時に録音された "Till The End Of The Day"  "She Bought A Hat Like Princess Marina" のライブが入り、リラックスしたキンクスの演奏が聴ける。「Preservation Act 1」はまずシングルのみだった "Preservation" 。これはRhino盤の CD でも同じだがさらに "One Of The Survivors" のシングル・エディットが入った。アルバムのものとは違いヴォーカルがダブル・トラックでいい。「Preservation Act 2」は "Mirror Of Love" の2回目のシングル・ヴァージョン。ホーンを効かせたサウンドになっていて、キラキラ輝くようなアルバム・ヴァージョンの方が出来が上だ。そして未発表のままだった "Slum Kids" は "Bring It On Home To Me" そっくりのブルース・ナンバーで、ブートにはよく入っていたがこれが初のオフィシャル化となった。ただどういう訳か、女性でなくてレイ本人が歌った "Scrapheap City" のシングル・ヴァージョンが、この中には収められなかった。(佐野)
マスウェル・ヒルビリーズ+2Everybody's in Show BusinessPreservation Act 1Preservation Act 2

1998年8月2日日曜日

☆Clique : The Clique (Varese Sarabande/5953)

 以前からゲイリー・ゼクリーの後期のワークスとして紹介していたクリークの初 CD 化だ。唯一のアルバム「The Clique」にシングル・オンリー3曲、さらにシングル・ヴァージョン2曲と、その気合の入った制作姿勢は評価したい。
ただ、このクリークはビブラートを効かせたリード・ヴォーカルなど、全体的にソフト・ロックとは言い難く、ソフル風味のバブルガム・グループと考えればいいだろう。気に入ったのは "Superman" のシングル・ヴァージョンで、リズム隊を強調したミックスは快調で、シングルはこうでなくてはいけない。アルバムには6曲の書き下ろしのゼクリー・ナンバーが収められているので、マニアは見逃さないように。(佐野)
Clique